ご挨拶

 日本免疫学会は1971年に設立されました。それから半世紀を経た2021年12月、第50回日本免疫学会学術集会を開催する運びとなりました。世界は今、SARS-CoV-2 によるパンデミックにより、未曾有の危機を迎えています。本学術集会は、いにしえに疫病退散を祈願するために建立された仏閣がある古都、奈良で行います。「祈りと科学」をサブテーマにしました。自然に対する畏敬と、その仕組みを解き明かす人の営みである科学への希望を共有したいと思います。日本免疫学会は、人類がこのパンデミックに打ち克つために中心的な役割を果たす所存です。
 本学術集会は、講演者、参加者の安全、安心に最大限に配慮し、現地開催とオンライン開催を合わせたハイブリッド型で行う予定です。より多くの方が気軽に参加し、かつ双方向性の議論が闊達にできるようなオンラインシステムを構築するとともに、一方で従来の対面式での人との出会いの機会も確保いたします。新しい知見の交換と、それによる新たなアイデアを生み出す研究者同士の交流の機会を、多様な形でより多く提供できるようにしたいと考えています。進化した新しい様式の学術集会のプロトタイプとなるように鋭意、準備を進めているところです。
 日本免疫学会学術集会は、毎年国内のみならず世界中から2,000名以上の免疫研究者が一堂に会し、最新の研究成果を発表し議論する本学会の最も重要な集会です。今回は、50周年記念特別事業の一つとして、この50年の免疫学の歴史に残る顕著な業績を残された学会員による特別記念シンポジウムを開催いたします。また、例年通り、会員によるテーマごとのワークショップ、国内外の第一線の研究者による最先端の国際シンポジウム、各種の教育・技術セミナーなどを企画しています。中でも、昨年に引き続き国内外からのSARS-CoV-2 に関するカッティング・エッジな国際シンポジウムを行い、現在人類がどこまでこのウイルスを理解し制御できたかを確認し、また今後の取り組むべき課題を明確にします。また、新しい試みとして4つの若手研究者企画国際シンポジウムを企画しました。これは、若手研究者の自発的かつ意欲的な取り組みを応援し、その活性化を通して本学会に新しい風を吹き込み、次の50年を睨んだ免疫学研究者の育成と本学会の持続的な発展を目指したもので、公募した中から選考されました。また、免疫学研究に対する社会的要請を踏まえ、日本アレルギー学会に加え日本リウマチ学会との共催国際シンポジウムも企画しているところです。
 これまで人類が経験したことのない超高齢社会を迎え、疾病構造も複雑で多様になっている中で、今回のパンデミックにより、免疫学研究に対する期待と社会的要請はますます大きくなっています。生命原理の理解を基礎に、ヒトの多くの難病の克服と健康維持に資する学術集会とすべく、鋭意準備を進めております。多くの皆様のご参加を衷心よりお願い申し上げます。

日本免疫学会
第50回学術集会会長
渋谷 彰