会長挨拶

 このたび、第43回生物学的精神医学会(BP)、第51回日本神経精神薬理学会(NP)の合同年会を京都国際会館にて開催させていたくことになりました。
 2021年7月14日(水)〜16日(金)という日程での京都での開催は、祇園祭山鉾巡行の直前3日間の宵山の期間に当たります。魅力的な開催地/時期により内外からの参加者を引きつけたい、というアイデアでありました。残念ながらこの文章を書いております2020年8月現在、わが国は新型コロナの第二波に襲われており、諸外国におきましてもその脅威に晒された状態が続いています。8世紀半ばに創始された祇園祭も、まさに疫病が流行し社会不安が増大した時期に、疫病がおさまるようにと願う平安時代の人々によって始められました。2021年の夏にこの大会が現地で開催できるのか否かの見通しが立ちにくい状況となっておりますが、コロナ禍が終息し、参加者が現地に集うことが叶うようになることを切に希望しております。参加者の皆様には内容の濃い学会とともに京都の夏の風物詩もたっぷり体感していただきたく、それを通じて研究者間の交流やdiscussionが促進されることを願っております。
 本大会のテーマは祇園祭山鉾巡行の先頭を務める長刀鉾にちなみ、「脳と心の病に斬りこむ最前線」としました。疫病が収まるように祈る強い気持ち、脳と心の病という難敵に研究者コミュニティ一体となって立ち向かう私達の強い気持ちはかわることはありません。精神・神経疾患の解明と新たな診断・治療法の開発をめざして、トップランナーの先生がたの先端的研究や次代を背負う若手研究者の成果をご発表いただき、真摯で建設的な議論を通じて、実りの多い年会にしていただければと思います。
 新型コロナが猛威をふるう中で、社会活動の電子化が加速されています。研究者コミュニティの活動も例外ではなく、NPBPPP2020では、研究発表のウェブ開催のみならず、情報交換や懇親を深める場もインターネットで提供されるなど、新しい電子化の試みがなされました。この困難の下で、研究者の情報交換・交流の新しい形態が生まれ、いわば急速に進化を遂げつつあります。本大会では現地開催が可能になるようできる限りの工夫をすると同時に、ウェブも使用したハイブリッド開催とする方向で、この進化のメリットを最大限、享受できるような年会を目指したいと考えております。
 日本神経精神薬理学会の学会誌でありますNeuropsychopharmacology Reports (NPPR) が、「サウンドネス基準」を採用したオープンアクセスの国際電子ジャーナルとして再出発してから2年が経過しました。ウェブ懇親会にてNPPRに掲載された(あるいは掲載予定の)論文の紹介の機会を設けるなど、学会誌だからこそ可能であるジャーナルと年会の密接な連携も行いたいと思っております。
 この困難に負けず、むしろそれを逆手に取って、研究者の情報交換・交流の場のあり方としての最前線も開拓し、研究者コミュニティ一体となって脳と心の病に斬りこむ、そのような年会にすることができれば、と考えております。
 多くの皆様方のご参加をお待ちしております。

 

第43回生物学的精神医学会年会長
帝京大学医学部精神神経科学講座 功刀 浩

第51回日本神経精神薬理学会年会長
藤田医科大学総合医科学研究所システム医科学研究部門 宮川剛