日程表
大会スケジュール
大会スケジュール
特別講演
本大会の特別講演はZoomでの講演となります。
Michael N. Hall(バーゼル大学)
2017年ラスカー賞受賞
日時:9月14日(月)13:50-14:40
本庶 佑(京都大学)
2018年ノーベル賞受賞
日時:9月15日(火)13:50-14:40
シンポジウム
本大会のシンポジウムは、Zoom講演またはストリーミング配信で行います。
Zoom講演のセッションは、発表スライドをPDFで閲覧も可能です。
シンポジウム一覧
ZOOM講演
ストリーミング配信
<セッションNo.について>
開催日+シンポジウム(S)+会場+時間帯*
(例)1S02m:第1日目・シンポジウム・第2会場・9:00-11:00
*時間帯表示の凡例
シンポジウムが行われる時間枠によって表示が区別されます
m: 9:00-11:00
a: 14:50-16:50 3日目のみ14:00-16:00
e: 17:00-19:00
ZOOM講演
1S01m
時間入り:9月14日(月)9:00-11:00
エピゲノム制御の破綻とがん
オーガナイザー:牛島 俊和 (国立がん研究センター研究所)、近藤 豊 (名古屋大学)
共催:日本癌学会
講演者・概要▼
講演者:竹島 秀幸 (国立がん研究センター研究所)、古川 雄祐 (自治医科大学)、荻原 秀明 (国立がん研究センター研究所)、近藤 豊 (名古屋大学)、石井 秀始 (大阪大学)
概 要:エピゲノムの破綻は「万病のもと」とまではいかないが、今や「万病に随伴する」または「千病のもと」と言える状況である。なぜなら、エピゲノムは細胞の記憶装置としての精緻な制御機構をもち、その異常や慢性炎症等によるエピゲノム自体の異常は細胞記憶を破壊してしまうからである。最近は、ゲノム情報を有効に活用するための新たな装置としてlincRNA, circRNA, RNA修飾の重要性も明らかになり、これらの異常と疾患の関連も見えて来た。本シンポジウムでは、古くから知られるDNAメチル化とヒストン修飾の異常を如何にしてがんの予防や治療につなげるのかという新しい話題、多くのがんで異常が認められるクロマチン変換因子の変異を如何にして治療に活かすのかという重要な話題、lncRNAやRNA修飾がどのように疾患に関係するのかという先端の話題を集めた。会場の方々と大いなる議論を行うことで、次のcutting-edgeな研究が生まれるきっかけとなることを目指したい。
1S03m
時間入り:9月14日(月)9:00-11:00
腎疾患を生化学的に解明する
オーガナイザー:淺沼 克彦 (千葉大学)、稲城 玲子 (東京大学)
共催:日本腎臓学会
講演者・概要▼
講演者:福住 好恭 (新潟大学)、長谷川 一宏 (慶應義塾大学)、木村 友則 (医薬基盤・健康・栄養研究所)、鈴木 教郎 (東北大学)
概 要:腎臓は尿を作り、体内で産生された尿毒症物質を体外に捨てる臓器であるが、他にも電解質の調節、造血ホルモン(エリスロポエチン)の産生、血圧の調節など、その機能は多岐にわたっている。どの機能においてもその分子メカニズムについてまだまだ解明されていないところが多い。腎臓の機能が低下している病態を慢性腎臓病というが、その原因は多岐に渡っている。慢性腎臓病の創薬のためには、腎臓の機能と、それぞれの腎疾患の進展メカニズムを生化学的手法を駆使して分子レベルで詳細に解明する必要がある。日本腎臓学会では、腎臓研究の裾野を広げるために、日本生化学会・会員の腎疾患への興味と研究参加を呼びかける目的で本シンポジウムを企画した。
1S04m
時間入り:9月14日(月)9:00-11:00
翻訳の新常識:非典型的な翻訳から合成生物学まで
オーガナイザー:田口 英樹 (東京工業大学)、上田 卓也 (早稲田大学)
講演者・概要▼
講演者:松本 有樹修 (九州大学)、岩崎 信太郎 (理化学研究所)、永井 義隆 (大阪大学)、清水 義宏 (理化学研究所)、茶谷 悠平 (東京工業大学)、木賀 大介 (早稲田大学)
概 要:細胞内のあらゆるタンパク質は、DNAの遺伝情報にもとづいてmRNA上に転写された読み枠(ORF)がリボソームで翻訳されてできてくる。生命のセントラルドグマの最終段階である翻訳の研究は長い歴史を持つが、未開のバイオロジーが潜んでいることがわかってきた。例えば、翻訳は既知のORFの開始コドンから始まって、終止コドンで終わるだけではない。翻訳伸長は合成されてきた新生ポリペプチド鎖に依存して頻繁に一時停止したり、終止コドンがなくても途中終了したりする場合がある。ノンコーディングと思われていたRNAから機能をもったペプチド/タンパク質が(場合によってはATGコドンがなくても)翻訳され、深刻な病気につながる場合がある。本シンポジウムではこれまでの翻訳の常識を覆す最近のトピックス、翻訳研究の新展開について開拓を続ける演者に講演いただき、今後の展望に思いを巡らせたい。
1S06m
時間入り:9月14日(月)9:00-11:00
細胞外マトリックスの情報とその読取りメカニズムによる細胞機能の制御と破綻
オーガナイザー:吉川 大和 (東京薬科大学)、米田 敦子 (東京薬科大学)
講演者・概要▼
講演者:関口 清俊 (大阪大学)、平澤 恵理 (順天堂大学)、金川 基 (愛媛大学)、吉川 大和 (東京薬科大学)、米田 敦子 (東京薬科大学)
概 要:長い間、細胞外マトリックスは組織および臓器を形作るための構造的因子、細胞の生存分化増殖に必要な生理活性物質の貯蔵庫、あるいは細胞を守る物理的バリアーとして考えられてきた。しかし最近、細胞外マトリックスの構成因子が時空間的に変化し、その質および量の多様性が明らかにされてきている。さらに、細胞外マトリックスの情報を読み取る細胞側のメカニズムも解明されつつあり、細胞外マトリックスと細胞の間の相互作用の破綻が多くの疾病と関連すること、また治療の重要なターゲットであることが明らかとなってきている。本シンポジウムでは、細胞外マトリックスと細胞の間の相互作用が細胞機能に与える影響にフォーカスし、その破綻によって生じる疾患(筋ジストロフィー、腎疾患、癌の浸潤転移など)への治療に向けた展望を討論する場にしたいと考えている。
1S08m
時間入り:9月14日(月)9:00-11:00
テイラーメードタンパク質・ペプチドで生化学を攻める:生体分子応答の理解と展開
オーガナイザー:二木 史朗 (京都大学)、坂口 和靖 (北海道大学)
講演者・概要▼
講演者:松島 綾美 (九州大学)、鎌田 瑠泉 (北海道大学)、野村 渉 (広島大学)、薬師寺 文華 (北海道大学)、谷口 敦彦 (東京薬科大学)、林 剛介 (名古屋大学)、今西 未来 (京都大学)
概 要:生化学を軸とした構造生物学、細胞生物学、分子生物学を含む近年の生命科学関連領域の急速な発展に伴い、生体内で働くタンパク質間あるいは他の生体分子との間の相互作用の理解を通した生命現象の分子メカニズムが次々に明らかにされつつある。また、これらを基盤としたタンパク質やペプチドの機能設計も急速に発展している。タンパク質の構造モチーフを再構築・模倣できるだけでなく、非天然のアミノ酸や種々の化学修飾の導入も可能であるペプチドの特長を活かすことにより、分子生物学的手法によるものとは異なる切り口による生体分子相互作用の制御・調節が可能である。本シンポジウムでは、日本のこの分野の将来の中枢を担うと期待される研究者による、タンパク質・ペプチドの機能設計による生体内分子相互作用や生体応答の解析制御に関する話題提供と、聴衆とのディスカッションを通して、関連分野の研究の深化と生化学における新たな研究の方向性の誘発を狙う。
1S09m
時間入り:9月14日(月)9:00-11:00
ステロイド代謝の基本概念からの深化と再構成
オーガナイザー:向井 邦晃 (慶應義塾大学)、荻島 正 (九州大学)
講演者・概要▼
講演者:向井 邦晃 (慶應義塾大学)、荻島 正 (九州大学)、藤木 純平 (酪農学園大学)、林 孝典 (藤田医科大学)、西川 美宇(富山県立大学)、西本 紘嗣郎 (埼玉医科大学)、吉田 学 (東京大学)
概 要:ステロイドホルモンは中枢系などの支配を受けて特定の臓器で合成され、全身的(システミック)な輸送を経て標的細胞で作用するというのが内分泌学の定説である。しかし、この定説から逸脱する事実が近年の研究により発見されている。ニューロステロイドに代表される非全身的(ノンシステミック)ステロイドは、脳、骨格筋、唾液腺さらには膵β細胞で局所的に産生され、パラクライン・オートクライン的に働き、記憶や行動、さらに細胞ストレス対応など全身型とは異なる機能も示している。合成酵素の触媒能においても位置選択的な反応制御について構造生物学的な解析が行われ、臨床領域では質量分析装置や次世代シーケンサーなどによる詳細な解析によりステロイド産生異常症における機構解明が進んでいる。さらに下位脊索動物を用いた分子進化的研究により、脊椎動物固有のステロイドホルモン発生の謎の解明も行われようとしている。本シンポジウムでは、最新の研究をもとに従来の概念にとらわれない新たなステロイド研究の議論を深め、さらなる発展を目指す。
1S10m
時間入り:9月14日(月)9:00-11:00
植物の小胞体の多彩な能力
オーガナイザー:西村 いくこ (甲南大学)、高木 純平 (甲南大学)
講演者・概要▼
講演者:上田 晴子 (甲南大学)、山田 健志 (ヤギェウォ大学)、島田 貴士 (千葉大学)、高木 純平 (甲南大学)、田村 謙太郎 (静岡県立大学)
概 要:小胞体は,真核細胞内で最大の膜面積をもつオルガネラで,多彩な機能をもつ。本シンポジウムでは,オルガネラとしての植物の小胞体の機能に焦点を当て,最新の小胞体の研究成果を中心に講演・討論する。具体的に取り上げる話題は次の通りである.第一は,小胞体のネットワーク形成と小胞体流動モデル(Dynamic three-way interaction model)の分子基盤.アクチンーミオシン細胞骨格系依存的な小胞体流動は,18世紀に見出された植物細胞の原形質流動の原動力と考えられている。また,植物は,置かれた環境に応じて,特殊な役割を担うオルガネラを小胞体から派生させる.第二の話題として,2つの小胞体由来のオルガネラ(ERボディとSEボディ)を取り上げる。ERボディは,害虫などから身を守るための新しい化学防御システム(mustard oil bomb)を構築している。一方,SEボディは,大量集積すると毒性を示すステロールのホメオスタシスを担うオルガネラとして最近見出された。第三の話題は,高時間分解能をもつvariable-angle epifluorescence microscopy (VAEM)が捉えた小胞体サブドメインER exit sites(ERES)とゴルジ体の関係を紹介する。最後に,小胞体とつながる外膜をもつ細胞核に注目して,その構築とダイナミクスについて講演する。細胞内に張り巡らされた小胞体の多様な能力について考察したい。
1S02a
時間入り:9月14日(月)14:50-16:50
細胞外小胞の医化学
オーガナイザー:華山 力成 (金沢大学)
共催:JST CREST/さきがけ「細胞外微粒子」
講演者・概要▼
講演者:池上 浩司 (広島大学)、諸石 寿朗 (熊本大学)、星野 歩子 (東京工業大学)、吉田 孟史 (金沢大学)
概 要:エクソソームやマイクロベジクルなどの細胞外小胞は、細胞間情報伝達を担うメッセンジャーとして機能することが知られており、分泌細胞とその標的細胞との間で蛋白質や脂質などを受け渡すことで、様々な細胞応答を制御します。更に、細胞外小胞の内側には分泌細胞由来のmRNAやmicroRNAが存在しており、細胞間の遺伝子発現情報の交換に関与する可能性が示されています。しかし、細胞外小胞の生理的・病態生理学的な役割は未だに多くが不明のままです。そこで本シンポジウムでは、細胞外小胞の新たな役割に関して最新の研究成果を紹介します。
1S03a
時間入り:9月14日(月)14:50-16:50
体内時計と睡眠の分子生物学
オーガナイザー:石田 直理雄 (国際科学振興財団 時間生物学研究所)、上田 泰己 (東京大学)
講演者・概要▼
講演者:吉種 光(東京大学)、岡村 均 (京都大学)、吉村 崇 (名古屋大学)、富岡 憲治 (岡山大学 理学部)、坂井 貴臣 (首都大学東京)、上田 泰己 (東京大学)、石田 直理雄 (国際科学振興財団 時間生物学研究所)
概 要:体内時計の分子機構は2017年のノーベル医学生理学賞となった。その後この研究分野は終わってしまったのだろうか?そんなはずはない。実は日本人研究者は今もこの分野をリードしている。最近の話題を提供して大いにこの分野の面白さを語っていただく。
1S06a
時間入り:9月14日(月)14:50-16:50
生体膜の変形が制御するバイオロジー
オーガナイザー:末次 志郎 (奈良先端科学技術大学院大学)、田口 友彦 (東北大学)
講演者・概要▼
講演者:田口 友彦 (東北大学)、梶保 博昭 (神戸大学)、岸本 拓磨 (北海道大学)、辻田 和也 (神戸大学)、小根山 千歳 (愛知県がんセンター研究所)、末次 志郎 (奈良先端科学技術大学院大学)
概 要:生体膜は生命系を構成する基本となる構造単位の1つである。細胞膜や細胞内オルガネラを区切る生体膜はさまざまな形状をとっているが、その固有の形状がそれぞれの機能を発揮するために重要であると考えられている。多様な形状変化は生体膜の柔軟な性質に支えられており、生体膜の形を形成・維持するためには多くのタンパク質が働いていると考えられているが、その全貌が今まさに解明されようとしている。本シンポジウムでは、この生体膜の形状に着目して、細胞膜・細胞内オルガネラの機能解明に迫っている研究者に講演をお願いした。今回取りあげるテーマ以外にも、生体膜の形状・変形を解析することによって初めて実態が明らかになる生命現象は数多く存在するに違いない。細胞膜・細胞内オルガネラ膜の形状を制御する多彩な分子装置を俯瞰することにより、生命現象を新たな切り口から捉えるきっかけを提供するセッションにしたい。
1S08a
時間入り:9月14日(月)14:50-16:50
タンパク質の高速分子動画撮影の汎用化に向けて
オーガナイザー:永野 真吾 (鳥取大学)、溝端 栄一 (大阪大学)
共催:新学術領域「高速分子動画法によるタンパク質非平衡状態構造解析と分子制御への応用」
講演者・概要▼
講演者:溝端 栄一 (大阪大学)、木村 哲就 (神戸大学)、古田 寿昭 (東邦大学)、庄司 光男 (筑波大学)、五十嵐 圭日子 (東京大学)、永野 真吾 (鳥取大学)
概 要:X線自由電子レーザー施設が建設され約10年が経過した。この間、X線結晶学の分野では、微小結晶を用いて反応中の酵素やタンパク質の立体構造を決定する時分割シリアルフェムト秒結晶構造解析法(TR-SFX)が誕生した。バクテリオロドプシンのTR-SFX解析では、反応開始後フェムト秒からミリ秒後までのタンパク質の動きを原子分解能に近い精度で映像化することに成功している。本シンポジウムでは、TR-SFXと従来のX線結晶構造解析の相違を解説するとともに、TR-SFXと相補的な情報をもたらす中性子回折・時分割分光解析・理論計算・ケージドリガンドによる反応制御について紹介する。これらの講演と議論から、TR-SFX技術の改良のロードマップを描きつつ、時々刻々と機能するタンパク質や酵素を撮影する「高速分子動画」の時代を展望する。
1S10a
時間入り:9月14日(月)14:50-16:50
酸応答・適応機構の先駆的研究
オーガナイザー:船戸 洋佑 (大阪大学)、高橋 重成 (京都大学)
講演者・概要▼
講演者:船戸 洋佑 (大阪大学)、松井 広 (東北大学)、河合 喬文 (大阪大学)、廣岡 俊亮 (国立遺伝学研究所)、荻沼 政之 (群馬大学)
概 要:細胞は環境変化により生じる様々なストレスにさらされており、これらを敏感に感知し適応するシステム無くして生存することはできない。これまで酸化ストレスや低酸素などに対する適応機構の研究は盛んに行われており、酸化ストレス誘導型転写因子NRF2や低酸素誘導型転写因子HIF-1の同定を皮切りに、ストレス感知・適応機構の解明のみならず、酸化ストレスや低酸素が司る新たな生命現象および病態生理現象の解明など、生命科学研究のフィールド全体に大いなるインパクトをもたらしてきた。しかし、生物化学反応における基盤パラメータであり、定常状態からの逸脱が細胞にとって甚大なダメージを与える「プロトン(低pH)」については、応答・適応機構に対する理解がほとんど進んでいない。本シンポジウムではこのような未解決課題に取り組む、がん、発生、神経科学領域のトップランナーを集結し、最新の研究成果を紹介する。
1S01e
時間入り:9月14日(月)17:00-19:00
マクロを超えて 〜攻めるオートファジー〜
オーガナイザー:中戸川 仁 (東京工業大学)、神吉 智丈 (新潟大学)
共催:新学術領域「マルチモードオートファジー:多彩な経路と選択性が織り成す自己分解系の理解」
講演者・概要▼
講演者:佐藤 健 (群馬大学)、株田 智弘 (国立精神・神経医療研究センター)、小笠原 裕太 (順天堂大学)、森下 英晃 (東京大学)、吉本 光希 (明治大学)、藤田 尚信 (東京工業大学)
概 要:オートファジーは、「細胞の自己成分のリソソーム/液胞での分解」と定義される。オートファジーの研究は、オートファゴソーム形成を伴う“マクロオートファジー”研究を中心に大きく発展してきた。しかし、リソソーム/液胞膜が陥入して細胞質成分を取り込む“ミクロオートファジー”やリソソーム膜上のトランスポーターを介して分解基質を取り込む“膜透過型オートファジー”など、オートファジーには複数の経路が存在する。また、エンドサイトーシスを介した細胞膜成分の分解も上記定義に当てはまり、オートファジーの一形態として捉えるべきである。今やオートファジーは、リソソーム/液胞を“hub”とする細胞内分解システムとして統合的に理解すべき段階に至っている。それ故、複数のオートファジー経路の研究を平行して推進する必要があり、経路間の連携やそのメカニズムの解明も重要な課題である。本シンポジウムでは、6名の研究者に様々な経路のオートファジーやオートファジー機能の新たな一面に関する最新の成果を紹介してただき、オートファジー研究の将来像を参加者と共有したい。
1S02e
時間入り:9月14日(月)17:00-19:00
新時代の「生命金属科学」
オーガナイザー:神戸 大朋 (京都大学)、古川 良明 (慶應義塾大学)
共催:新学術領域「「生命金属科学」分野の創成による生体内金属動態の統合的研究」
講演者・概要▼
講演者:田村 朋則 (京都大学)、古川 良明 (慶應義塾大学)、藤代 瞳 (徳島文理大学)、鈴木 道生 (東京大学)、明石 知子 (横浜市立大学)、武田 志乃 (放射線医学総合研究所)
概 要:鉄、亜鉛、銅をはじめとするいくつかの金属元素は、生体内に微量しか存在しないものの、エネルギー変換、物質変換、情報変換など重要な生命現象に関わっている。あらゆる生物の生命を維持する上で必須の金属や半金属元素を「生命金属」と定義すると、生命金属の吸収、輸送、運搬、感知、活用といった生体内動態は厳密に制御され、その破綻は疾病の原因となる。一方で、生命にとって有害な金属元素も多数存在し、それらは生命金属の生体内動態を撹乱することで毒性を発現する。本シンポジウムでは、生命金属による細胞機能の制御メカニズムを、化学・構造生物学・細胞生物学・毒性学・分析化学を含む幅広い視点からの最新知見を交えて紹介し、「生体金属科学」研究が迎えた新たな展開と将来展望について議論したい。
1S05e
時間入り:9月14日(月)17:00-19:00
代謝物再興:生命機能におけるエピゲノムとダイナミズムの制御因子
オーガナイザー:井倉 毅 (京都大学)、五十嵐 和彦 (東北大学)
講演者・概要▼
講演者:西澤 弘成 (東北大学)、井倉 毅 (京都大学)、西村 慎一 (東京大学)、白木 琢磨 (近畿大学生物理工学部)、Galipon Josephine (慶應義塾大学)
概 要:栄養源に由来する代謝物は、最近の知見により、素材・エネルギー源としての役割に加え、シグナル因子としての機能が再認識され、DNA、RNA、ヒストンなどの化学修飾を調節することが明らかにされつつある。本シンポジウムでは、ゲノムストレスや細胞の分化・がん化過程の中で変動する代謝物に着目し、その変動に支配されるエピゲノムの変化、そして遺伝子発現や修復反応におけるダイナミックな分子ネットワークとの関係を、生化学的解析に加え、システム生物学やケミカルバイオロジーなどの多面的なアプローチによって紐解く。代謝物が複数の生化学的素反応を統合して分子ネットワークを構築する様々な例を取り上げ、連携機構の理解に基づいて生命機能のダイナミズムについて議論し、研究手法も含めた今後の課題を討論したい。
1S09e
時間入り:9月14日(月)17:00-19:00
生体内計測技術が拓くタンパク質構造・機能相関と創薬展開
オーガナイザー:齋尾 智英 (北海道大学)、竹内 恒 (産業技術総合研究所)
講演者・概要▼
講演者:奥村 正樹 (東北大, 学際研)、松永 康佑 (埼玉大学)、渡邉 力也 (理化学研究所)、鳥澤 拓也 (中外製薬㈱)、竹内 恒 (産業技術総合研究所)、齋尾 智英 (北海道大学)
概 要:構造生物学の発展により,多くの生化学者にとってタンパク質の美しい立体構造モデルは身近に活用できる有効な研究ツールとなった.しかし,タンパク質は,生体内において柔軟かつ動的な分子機械として,そのカタチを常に変えながら機能している.そのような"生きた"タンパク質の姿を観測し,その機能メカニズムを本質的に理解することは,依然として容易ではない.本シンポジウムでは,NMRや高速AFM,マイクロチップ開発,分子動力学シミュレーション,構造創薬など,様々な分野で活躍する国内の気鋭研究者を集め,生体内や溶液中での本来のタンパク質を観測する計測技術の開発や応用について議論する.本シンポジウムでの議論は,構造生物学を専門とする研究者だけではなく,生体分子,特にタンパク質の機能やメカニズム解明を目指す多くの生化学者,またその成果を社会実装につなげる産官学の幅広い研究者にとって,有益なものになると期待される.
1S10e
時間入り:9月14日(月)17:00-19:00
デスシステムが紡ぎ出す命の物語
オーガナイザー:森脇 健太 (大阪大学)、岡本 徹 (大阪大学)
講演者・概要▼
講演者:森脇 健太 (大阪大学)、岡本 徹 (大阪大学)、浅野 謙一 (東京薬科大学)、鳥居 暁 (東京医科歯科大学)、田中 幹子 (東京工業大学)、篠田 夏樹 (東京大学)
概 要:命あるもの必ず終わりが来る。細胞はなぜ・どのように死に、死に際に何を伝え・遺すのか、そして周囲の細胞は何を感じ、どう振る舞うのか?アポトーシスという言葉が生み出されてから50年近くの月日が経とうとしているが、我々はこの問いにどれだけ答えられるだろうか。近年の細胞死研究は新たな展開を見せており、我々の体にはアポトーシスだけでなく多様な非アポトーシス型細胞死を引き起こすシステムが存在し、様々な局面で特定のデスシステムを作動させるプログラムがゲノムDNAに書き込まれていることが分かってきている。また、このデスシステムが細胞死以外の様々な生命現象にも関わっていることが分かってきており、細胞死を超えた新たな潮流も生まれてきている。本シンポジウムでは、このデスシステムに纏わる最新の研究を紹介し、広がりゆく細胞死の世界を実感していただくとともに、今後期待される更なる細胞死研究の展開について議論したい。
2S01m
時間入り:9月15日(火)9:00-11:00
代謝と炎症・免疫の接点:イムノメタボリズム
オーガナイザー:有田 誠 (慶應義塾大学/理化学研究所)、菅波 孝祥 (名古屋大学)
共催:新学術領域「予防を科学する炎症細胞社会学」
講演者・概要▼
講演者:有田 誠 (慶應義塾大学/理化学研究所)、菅波 孝祥 (名古屋大学)、熊ノ郷 淳 (大阪大学)、茶本 健司 (京都大学)、七野 成之 (東京理科大学)
概 要:近年、細胞内代謝の変化による炎症・免疫細胞の分化および機能制御メカニズムが注目されている。細胞が分化、増殖、活性化する際には細胞内のエネルギー代謝系が大きく変化するのみならず、脂質やアミノ酸など複雑かつ巧妙な代謝調節の仕組みが存在することが、代謝動態の高感度かつ包括的な解析手法(メタボロミクス)の進展とともに次第に明らかになってきた。このように、代謝と炎症・免疫系は表裏一体であり、新しい学問領域「イムノメタボリズム」が世界的な潮流となっている。本シンポジウムでは、細胞レベルと個体レベルの両面からイムノメタボリズム研究を俯瞰し、代謝制御を軸とした生体制御システムの統合的理解につながる議論を展開したい。
2S02m
時間入り:9月15日(火)9:00-11:00
オルガネロスタシス-オルガネラの恒常性とその破綻
オーガナイザー:藤木 幸夫 (九州大学)、藤本 豊士 (順天堂大学)
講演者・概要▼
講演者:柳 茂 (学習院大学)、土田 邦博 (藤田保健衛生大学)、藤本 豊士 (順天堂大学)、衞藤 義勝 (東京慈恵会医科大学)、藤木 幸夫 (九州大学)
概 要:真核細胞は非常に緻密に分化した膜構造で仕切られたオルガネラで構成され、そこに特定のタンパク質が局在化することにより高度な空間的秩序に基づく生命活動が実現されている。オルガネラの構成成分、構造、数量の恒常性維持とその機能適応メカニズムの統括である「オルガネロスタシス」の解明は、オルガネラの形成、動的制御、品質管理という一連のネットワークシステムで達成される細胞の機能発現に基づく生命活動を理解するうえで極めて重要な研究課題である。本シンポジウムでは、オルガネラの恒常性維持とその障害を起因する病態との関連から最新の知見をもって議論する。
2S04m
時間入り:9月15日(火)9:00-11:00
モノ/ポリADP-リボシル化経路による多様な生体制御
オーガナイザー:益谷 美都子 (長崎大学)、パルミロ ポルトロニエリ (イタリア学術会議-食品科学研究所 (長浜バイオ大学))
講演者・概要▼
講演者:田中 正和 (鹿児島大学)、八尋 錦之助 (千葉大学)、ポルトロニエリ パルミロ (イタリア学術会議-食品科学研究所)、吉田 徹 (日本女子大学)、内海 文彰(東京理科大学)、益谷 美都子(長崎大学)
概 要:ADP-リボシル化酵素 (ARTs)は、NAD+を基質として、モノADP-リボース (MAR)あるいはポリADP-リボース(PAR)残基を標的タンパク質に付加する。これらの"writer"活性によるタンパク質のMARylation及びPARylationは、様々な生物応答過程に重要な役割を果たす。MAR/PARylationによるタンパク質への共有結合に加え、最近PARが非共有結合的にタンパク質と相互作用することが相互作用複合体であるinteractomesの形成を誘導し、PAR、MAR、iso-ADP-riboseを認識するタンパク質による"Reader"活性が、多彩な生物応答を担うことが示されてきた。このシンポジウムでは、MARylationやPARylationのpathwayの素過程を理解し、生物における様々な共通及び異なる機能を論じたい。
2S05m
時間入り:9月15日(火)9:00-11:00
Calcineurin/NFATシグナルのダイバーシティ
オーガナイザー:神沼 修 (広島大学)、水口 博之 (大阪大谷大学)
講演者・概要▼
講演者:島田 緑 (山口大学)、岡田 寛之 (東京大学)、伊川 正人 (大阪大学)、中川原 章 (佐賀国際重粒子線がん治療財団)、金子 雅幸 (広島大学)、水口 博之 (大阪大谷大学)、神沼 修 (広島大学)
概 要:当初免疫抑制剤の標的分子として注目されたCalcineurin/NFATを介するシグナル機構は、その報告から四半世紀を経た今、免疫系だけでなく心血管系、神経系、骨、泌尿器、生殖器をはじめ、多くの臓器の発生、分化、機能および癌化を含めたそれら臓器に起こる種々疾患に深く関わることが明らかにされつつある。本シンポジウムでは、各領域でCalcineurin/NFATシグナルの関連研究を進める気鋭の研究者が一同に介し、その機能と疾病への関与、並びにそれらのダイバーシティを生む分子機構に関する最新知見をご報告いただく。各領域を横断的に俯瞰する横軸と、表現型から分子機構を網羅する縦軸の座標に配される各プロットを結ぶことにより、Calcineurin/NFATを介するシグナル機構の全貌を詳らかにし、それが関わるさまざまな疾患に対する、現行療法を薬効・副作用両面で凌駕する新規治療法開発の端緒を得たい。
2S06m
時間入り:9月15日(火)9:00-11:00
膜輸送体による物質不均衡の新機軸 -脂質の非対称分布とその制御を担う脂質輸送体-
オーガナイザー:阿部 一啓 (名古屋大学)、申 惠媛 (京都大学)
講演者・概要▼
講演者:阿部 一啓 (名古屋大学)、申 惠媛 (京都大学)、平泉 将浩 (田辺三菱製薬/東京大学)、辻 琢磨 (順天堂大学)、塩見 晃史 (京都大学)、木村 泰久 (京都大学)
概 要:生命の根幹ともいうべき、細胞膜を隔てたイオンや低分子化合物等を含む物質の非対称分布は、様々な膜輸送体によって形成・維持されている。近年、これらに加え、膜タンパク質が存在する足場である脂質そのものの非対称分布の調節が、多くの生命現象と密接に関わるという知見が蓄積してきた。Fluid mosaic modelで単に膜タンパク質の間を埋めているように描かれていた脂質たちは、いまや膜輸送体研究において新しいフロンティアとなった。本シンポジウムでは、脂質の非対称分布に関与する膜タンパク質に注目した研究者をお招きし、脂質を『輸送』する膜タンパク質、それらが提供する様々な生命現象との関わりを議論したい。
2S09m
時間入り:9月15日(火)9:00-11:00
学際研究で切り拓く脂質とアミノ酸のメタボダイナミズム
オーガナイザー:島野 仁 (筑波大学)、高橋 伸一郎 (東京大学)
講演者・概要▼
講演者:宮本 崇史 (筑波大学)、重田 育照 (筑波大学)、若本 祐一 (東京大学)、林 昭夫 (小野薬品工業(株))、高橋 伸一郎 (東京大学)、島野 仁 (筑波大学)
概 要:生命科学におけるバイオインフォマティクスの活用により、セントラルドグマを分子レベルで包括的に捉える術が得られつつあると同時に、生命がもつ複雑さの深淵さを改めて認識させられる。特に主要栄養素である脂質やアミノ酸の多様性は、従来の単なる量的な理解に加え、質的/構成比的理解を時空間的に行うことが重要である。本シンポジウムでは、生命現象の複雑さの理解に挑む農学、医学、計算科学の研究者を招聘し、栄養素子が紡ぎ出す生命の作動原理を理解するために必要な次世代の研究戦略や新技術を、脂質とアミノ酸のメタボダイナミズムの視点からご紹介いただく。複雑の極みには隠れたネットワークがあり、新しいモダリティや切り口で攻め込む事で、生命を守る秘密のコードやかたち、はたらきが浮かび上がるであろう。異分野の研究者が奏でる多彩な研究の音色が、聴衆とのアンサンブルを通して新しい楽曲(研究領域)の創出につながることを期待したい。
2S01a
時間入り:9月15日(火)14:50-16:50
疾患治療に向けた多機能バイオロジクスの展開
オーガナイザー:伊東 祐二 (鹿児島大学)、石井 明子 (国立医薬品食品衛生研究所)
共催:AMED先端的バイオ創薬等基盤技術開発事業
講演者・概要▼
講演者:瀬尾 秀宗 (東京大学)、伊東 祐二 (鹿児島大学)、辰巳 加奈子 (中外製薬(株))、山田 武直 (協和キリン(株))、石井 明子 (国立医薬品食品衛生研究所)
概 要:近年の抗体医薬品の隆盛とともに、最近では核酸医薬品、ペプチド医薬品の開発も急速に進められている。このようなバイオロジクス単体の開発トレンドは、しばらくは続くと考えられるものの、次に来るものは、これら単体の機能を組み合わせた多機能型のバイオロジクス開発である。これらはすでに、2重特異性抗体や融合タンパク質によって一部は実現されているものの、種々の疾患に対する治療薬開発の可能性は広く残されている。本シンポジウムでは、多機能バイオロジクス開発の現状と、新たな多機能性バイオロジクス開発に向けた取り組みを共有し、課題を見出すことで、この分野の発展を促したい。具体的には、疾患部位だけで標的抗原に結合するスイッチ抗体、脳移行性を持つ脳疾患抗体治療薬、ヒト抗体・2重特異性抗体の新たな開発手法、並びに高機能性抗体を生み出すための抗体連結法とともに、それらの治療薬への適用に向けた規制科学における課題について、焦点を当てる。
2S02a
時間入り:9月15日(火)14:50-16:50
タンパク質架橋化反応から展開する医療と創薬へ向けた基礎研究
オーガナイザー:人見 清隆 (名古屋大学)、川畑 俊一郎 (九州大学)
講演者・概要▼
講演者:辰川 英樹 (名古屋大学)、柴田 俊生 (九州大学)、西浦 弘志 (兵庫医科大学)、惣宇利 正善 (山形大学)、Kim Soo-Youl (国立がん研究センター)
概 要:我々の体にはタンパク質どうしを架橋して接着させる酵素反応が存在する。これは血液凝固や皮膚形成など「タンパク質の不溶化や硬化」に必要な反応で、トランスグルタミナーゼという8つのアイソザイムからなる酵素ファミリーの作用による。これらは通常レベルでは活性の無い「眠った状態」にある酵素であり、カルシウム刺激など特定の要因で活性化がもたらされる。様々なヒトの疾患の原因には、この酵素の異常な働きが起因しており、アイソザイム特異的な阻害剤開発など正常化のためのコントロールを試みることは、関連疾患の解決につながる。酵素により架橋される基質(タンパク質)やその産物が原因となって疾患をもたらす例として、血液凝固異常、線維症、がん、などがあげられる。これらの疾患を解決するための基礎研究と創薬開発について、多岐にわたる分子病態と本酵素の関わりをそれぞれの分野で先端的な研究をしている若い研究者に講演頂く。
2S05a
時間入り:9月15日(火)14:50-16:50
ホスファターゼで解き明かす生理と病態のメカニズム
オーガナイザー:大西 浩史 (群馬大学)、武田 弘資 (長崎大学)
講演者・概要▼
講演者:片桐 豊雅 (徳島大学)、中馬 吉郎 (新潟大学)、岡村 康司 (大阪大学)、門松 健治 (名古屋大学)、松坂 賢 (筑波大学)、大西 浩史 (群馬大学)
概 要:生体分子のリン酸化と脱リン酸化は可逆的分子スイッチとして、発生から死まで一生にわたって多様な生命現象を制御する。それゆえに生活習慣病や発がん等、多様な疾患の病因や病態にも深く関わり、これらを標的とする応用分野も研究技術の進化とともにますます膨らんでいる。動的でダイナミックなリン酸化の理解には、リン酸化酵素であるキナーゼと脱リン酸化酵素であるホスファターゼの両方の解析が重要であるが、キナーゼに比べてホスファターゼは構造的に高い多様性を示すことや、基質特異性の制御が複雑であることなどの特徴が解析を困難としてきた。しかし、それはすなわちホスファターゼ研究が課題と期待に富んだ魅力的な研究領域であることを意味している。本シンポジウムでは、ホスファターゼに関連する新たな生体制御システムや応用研究を取り上げ、最新の知見をもとに将来への展望を含めて議論したい。
2S06a
時間入り:9月15日(火)14:50-16:50
ますます広がるNGLY1の世界 - 細胞質の脱糖鎖酵素の多機能性 -
オーガナイザー:鈴木 匡 (理化学研究所)、吉田 雪子 (東京都医学総合研究所)
講演者・概要▼
講演者:Nic Lehrbach (Massachusetts General Hospital, Harvard University)、Hamed Jafar-Nejad (Balyor Collage of Medicine)、吉田 雪子 (東京都医学総合研究所)、藤平 陽彦 (順天堂大学)、平山 弘人 (理化学研究所)
概 要:細胞質ペプチド:N-グリカナーゼ(NGLY1)はアスパラギン結合型(N型)糖鎖の脱離酵素で、真核生物で進化的に保存された酵素である。2012年に米国で遺伝子疾患(NGLY1欠損症)が見つかって以来、NGLY1研究は急速に伸展している。NGLY1は小胞体で正しい構造をとれなかった糖タンパク質の細胞質での分解に関わる酵素であると考えられてきたが、最近、様々なタンパク質の活性化に関わる例が報告され、大きな注目を集めている。NGLY1はアスパラギンから脱糖鎖をすると同時にアスパラギン酸への変換を行う。このアミノ酸配列の”editing”機構がNGLY1の機能やNGLY1欠損症の病態発現に重要である可能性も示されている。本シンポジウムでは、NGLY1の翻訳後修飾分子としての機能や内在性の基質の解析、モデル動物を用いた病態発現のメカニズム解析、病態を左右する調節遺伝子の解析や治療を見据えたバイオマーカー解析など、最新の知見を紹介し、NGLY1の多機能性について議論を交わしたい。
2S07a
時間入り:9月15日(火)14:50-16:50
核内因子ネットワークによる遺伝子制御機構
オーガナイザー:立和名 博昭 ((公財)がん研究会がん研究所)、佐藤 優子 (東京工業大学)
講演者・概要▼
講演者:大屋 恵梨子 (中央大学)、佐藤 優子 (東京工業大学)、藤田 理紗 (東京大学)、三浦 尚 (理化学研究所)、西山 敦哉 (東京大学)、村山 泰斗 (国立遺伝学研究所)、立和名 博昭 ((公財)がん研究会がん研究所)
概 要:細胞の形質は発現する遺伝子により特徴づけられる。そのため細胞は遺伝子を制御する機構を持つが、その全容は明らかとなっていない。遺伝子の本体はDNAであり、転写・複製・DNA修復などのDNAにまつわる生命現象は、従来DNA結合タンパク質を中心に研究がおこなわれてきた。しかし近年の細胞生物学研究の進展にともない、細胞核内の複雑なネットワークによるクロマチンレベルでの制御機構の理解が必要であることが分かってきている。本シンポジウムでは、ヒストン修飾・ヒストンバリアント、非コードRNA、核内構造体による遺伝子機能制御機構を中心に、若手研究者による最新の知見を紹介し、多角的な視点から議論することを目指す。
2S08a
時間入り:9月15日(火)14:50-16:50
データ駆動型科学で切り開く認知症研究
オーガナイザー:飯島 浩一 (国立長寿医療研究センター)、菊地 正隆 (大阪大学)
講演者・概要▼
講演者:飯島 浩一 (国立長寿医療研究センター)、重水 大智 (国立長寿医療研究センター)、八谷 剛史 (岩手医科大学)、菊地 正隆 (大阪大学)、関谷 倫子 (国立長寿医療研究センター)、長谷 武志 (東京医科歯科大学)
概 要:アルツハイマー病や脳血管障害に起因する老人性認知症の制圧には,発症リスクを軽減させる予防法,発症前に介入する先制医療,さらに発症後にも症状の進行を遅らせる治療法を開発する必要がある。その達成には,未知の危険因子,高感度なバイオマーカー,さらに新たな治療薬標的を網羅的に同定していくことが重要になる。しかし,その根幹にある各疾患の発症機序には未だ不明な点が多い。この現状を打破するため,脳病理像や既知のリスク遺伝子に着目した仮説駆動型研究に加えて,患者由来の大規模データから全く新たな仮説を生み出すデータ駆動型研究が注目を集めている。本シンポジウムでは,ゲノミクスや各種オミックス,さらにAIを用いたデータ駆動型研究を推進し,新たな診断法開発,危険因子同定,発症メカニズム解明,治療薬探索に取り組む気鋭の若手研究者に登壇いただき,既存の概念にとらわれない多角的な視点から,次世代の認知症研究を展望する。
2S10a
時間入り:9月15日(火)14:50-16:50
ミトコンドリアでつながる細胞機能
オーガナイザー:石原 孝也 (大阪大学)、新崎 恒平 (東京薬科大学)
講演者・概要▼
講演者:杉浦 歩 (神戸大学)、八木 美佳子 (九州大学)、笠原 敦子 (金沢大学)、長島 駿 (東京薬科大学)、新崎 恒平 (東京薬科大学)、石原 孝也 (大阪大学)
概 要:ミトコンドリアは外膜・内膜の二重膜で構成され独自のDNA(mtDNA)を有する特殊な構造体である。ミトコンドリアがその機能を発揮する為には、分裂と融合が適切に行われる必要がある。ミトコンドリアには細胞死やエネルギー生産の場といったこれまで知られていた機能のみならず、分化・発生、さらにはがんなどの疾患への関与など様々な役割を担っている。更に、近年ミトコンドリアと他のオルガネラとの相互作用にも注目が集まっており、その中でもミトコンドリアと小胞体との接触場(mitochondrial-associated ER membrane; MAM)はミトコンドリアの形態制御やオートファゴソーム形成など極めて重要な役割を担っている。本シンポジウムでは、ミトコンドリアで起こる多様な生命現象を多角的に議論するために、ミトコンドリアをキーワードとして研究を行なっている若手研究者を中心とした講演を企画する。
2S02e
時間入り:9月15日(火)17:00-19:00
シンポジウム「化学で攻める新しい創薬のカタチ」
オーガナイザー:藤川 雄太 (東京薬科大学)、小松 徹 (東京大学)
講演者・概要▼
講演者:植木 亮介 (東京大学)、門之園 哲哉 (東京工業大学)、石川 稔 (東北大学)、中瀬 生彦 (大阪府立大学)、小川 美香子 (北海道大学)、小嶋 良輔 (東京大学)
概 要:現在、創薬のモダリティの多様化が進み、低分子医薬品や抗体といった従来の枠にとどまらない革新的な創薬技術の開発に期待が集まっている。このような中で、生物学的な特異性の高さをベースに化学的な修飾を施すことによって新たな機能性を持った分子をデザイン・創製するという、化学者が得意とするところを活かした創薬方法論の開発が進められており、これまでにない機能性や選択性、薬効を示す新たな薬剤が産み出されつつある。本シンポジウムでは、これらのうちで、核酸医薬、中分子医薬、PROTAC、中性子補足療法(BNCT)、光免疫療法(Photoimmunotherapy)、細胞療法といった最新の創薬モダリティ群に注目し、その最先端技術の開発をおこなっている新進気鋭の研究者による講演をおこない、化学に立脚した新たな創薬のカタチに関する開発の現状と可能性について討論する場としたい。
2S04e
時間入り:9月15日(火)17:00-19:00
シングルセル解析で読み解く間質細胞の多様性
オーガナイザー:大石 由美子 (日本医科大学)、真鍋 一郎 (千葉大学)
講演者・概要▼
講演者:伊藤 美菜子 (慶應義塾大学)、大石 由美子 (日本医科大学)、河野 掌 (理化学研究所)、内藤 尚道 (大阪大学)、佐藤 荘 (大阪大学)、中西 未央 (マクマスター大学)
概 要:組織の間質は、実質細胞の単なるプラットフォームではなく、組織の発生、恒常性、病態を制御・駆動する。間質に存在する多様な細胞は、血管を作り、組織の形を作りあげ、実質細胞を制御し、その機能を維持する。一方で、間質は炎症の場でもある。加齢では線維化を始めとする間質の変化が組織機能障害の鍵となる。シングルセル解析技術は、多様な細胞がダイナミックに相互作用する間質の解析にうってつけであり、間質細胞が極めて多様性に富み、時空間的に多彩なコミュニケーションを繰り広げることを明らかにしつつある。本シンポジウムでは、1細胞・1細胞間相互作用の多様性の観点から、間質がリードする病態の新たな理解を目指した研究をご紹介頂き、新しい間質生物学を議論したい。
2S05e
時間入り:9月15日(火)17:00-19:00
プロテインキナーゼシグナリング研究の新たな挑戦
オーガナイザー:松沢 厚 (東北大学)、梶本 武利 (神戸大学)
講演者・概要▼
講演者:梶本 武利 (神戸大学)、酒井 真志人 (カリフォルニア大学サンディエゴ校)、斎藤 太郎 (首都大学東京(2020年4月から東京都立大学に名称変更予定))、江川 形平 (京都大学 )、松沢 厚 (東北大学)
概 要:プロテインキナーゼ研究の歴史は古く、これまでの国内における世界レベルの先進的研究により、各種プロテインキナーゼの上流および下流シグナルの詳細が次々と明らかにされ、細胞内シグナリング分野の中核を成す研究領域として目覚ましい発展を遂げてきた。しかし、約500種類あるプロテインキナーゼの活性調節機構、細胞内シグナリング全体における位置付け、生理的機能、疾患との関連など、まだまだ明らかにするべき課題が多く残されているのが現状であり、何よりも我々はまだプロテインキナーゼシグナリングを自在にコントロールできるまでには至っていない。そこで本シンポジウムでは、独自のアプローチによってプロテインキナーゼの新たな制御機構や機能を探索し、プロテインキナーゼ研究のブレークスルーの創出を目指して挑戦する次世代の若手研究者による最新の研究成果を紹介したい。本シンポジウムが、プロテインキナーゼ研究の新たな時代を切り拓くきっかけとなることを期待している。
2S06e
時間入り:9月15日(火)17:00-19:00
糖鎖関連酵素の新たな姿
オーガナイザー:木塚 康彦 (岐阜大学)、矢木 宏和 (名古屋市立大学)
講演者・概要▼
講演者:石水 毅 (立命館大学)、藤田 盛久 (江南大学)、中村 彰彦 (分子科学研究所)、伏信 進矢 (東京大学)、矢木 宏和 (名古屋市立大学)、木塚 康彦 (岐阜大学)
概 要:糖鎖の発現プロファイルを規定する主要な因子は糖転移酵素、糖分解酵素である。現在ではそれらの遺伝子のほぼ全てが同定され、ノックアウトマウスなどの解析から糖鎖機能に関する多くの知見が得られてきた。一方、これらの糖鎖関連酵素自体の発現・局在・機能の詳細については、発現レベルが低いことなどから未だ十分には明らかにされていない。特に糖転移酵素については、ゴルジ体への局在や糖転移反応メカニズムの典型的な概念が定着し、異なるはずの個々の酵素の本当の姿が不明なままになっている。さらに、哺乳動物以外の酵素については、特異性や活性などの基本的な情報もまだ十分には得られていない。一方で、最近、内在性の酵素の局在解析や立体構造解析などによって、これらの酵素の局在や機能の新しい一面が明らかになってきた。本シンポジウムでは、様々な分野で異なる技術と生物種を用いてこれらの酵素について解析を行なっている研究者をお呼びし、最近の成果を紹介していただく。
2S07e
時間入り:9月15日(火)17:00-19:00
ゲノム反応中間体としての非B型核酸:その構造と生物学的意義
オーガナイザー:川上 広宣 (山陽小野田市立山口東京理科大学)、正井 久雄 (東京都医学総合研究所)
講演者・概要▼
講演者:川上 広宣 (山陽小野田市立山口東京理科大学)、正井 久雄 (東京都医学総合研究所)、和賀 祥 (日本女子大学)、安川 武宏 (九州大学)、永田 麻梨子 (九州大学)、仁木 宏典 (国立遺伝学研究所)、古郡 麻子 (大阪大学)、伊藤 健太郎 (東京工業大学)
概 要:遺伝情報をコードするDNA二重らせんをゲノムとして構築し、維持継承し、利用する数々の反応においては、グアニン四重鎖・DNA-RNAハイブリッド・Rループ・一本鎖DNAなど非B型の中間体構造が形成される可能性が示唆されている。細胞内のゲノム反応の中間体構造の実証やその形成メカニズム・意義については未解明な点が多く、数理モデリングも含めた新たな実験系の確立が必要となる。中間体構造はゲノムの不安定化や重篤な疾患の原因となりうるため、適時的かつ動的な解消の理解、細胞内外の諸反応との連動、高次機能における役割の解明につながる画期的アプローチも望まれる。また、関与する蛋白質の特徴的な機能・構造も判明しつつあり、中間体構造の形成・解消に関する新たな生物学的意義の解明や共通原理としての体系化も重要となる。本シンポジウムではゲノム反応中間体としての非B型核酸の形成・解消に関する最先端の研究者が最新の話題を提供し、ゲノムの維持・機能発現に関する新しい概念についての議論を共有する場としたい。
2S08e
時間入り:9月15日(火)17:00-19:00
古くて新しいイオウとセレンの生化学:その多様な生理機能
オーガナイザー:木村 英雄 (山陽小野田市立山口東京理科大学)、小笠原 裕樹 (明治薬科大学)
講演者・概要▼
講演者:木村 英雄 (山陽小野田市立山口東京理科大学)、小笠原 裕樹 (明治薬科大学)、広田 喜一 (関西医科大学)、永原 則之 (日本医科大学)、花岡 健二郎 (東京大学)、三原 久明 (立命館大学)、小椋 康光 (千葉大学)
概 要:真核生物が出現した15億年前、地球は硫化水素で覆われており、生命はこれを利用していた。海底噴火口に生息する生命にその名残を見ることができる。硫化水素(H2S)やポリサルファイド(H2Sn)は、神経伝達調節、細胞保護、抗炎症等様々な生理機能を担っている。一方、細胞はイオウと同族で毒性の高いセレンを巧みに利用している。ここでは、H2SやH2Snによる神経伝達調節やグルコース依存性インスリン分泌調節、カルボニルストレスからの細胞保護、そしてH2SやH2Snの生合成酵素3メルカプトピルビン酸イオウ転移酵素とロダネーゼのダブルノックアウトマウスの解析について紹介する。そして生体においてイオウと重要なかかわりを持つセレンについては、そのタンパク間デリバリーとそこに関わるチオレドキシンの役割、セレンのメチル化代謝やセレノシアン酸生合成を紹介する。最後に含硫シグナル分子特異的蛍光プローブや生合成酵素阻害剤の開発について紹介する。
3S01m
時間入り:9月16日(水)9:00-11:00
細胞の特性と多様性を制御する代謝システム: 生理的役割とその破綻による疾患発症
オーガナイザー:田久保 圭誉 (国立国際医療研究センター研究所)、合田 亘人 (早稲田大学)
講演者・概要▼
講演者:遠山 周吾 (慶應義塾大学)、小藤 智史 (東京医科歯科大学 )、反町 典子 (国立国際医療研究センター研究所)、Yoo Sa Kan (理化学研究所)、田久保 圭誉 (国立国際医療研究センター研究所)
概 要:生体恒常性の維持には、各種の細胞が独自性と多様性を発揮して臓器機能を適正に稼働することが重要である。近年の質量分析技術の進歩により、細胞内の代謝システムが細胞の多様性や独自性の獲得・発揮に重要な役割を果たすことが示されて、代謝システムは単にセントラルドグマの末端で使役されるものではなく、細胞の特性や機能発揮の根幹を司ることが明らかになった。一方、これらの代謝システムの破綻は疾患の発症や進展に深く関わることも知られつつある。しかし、脂質膜で区画化されたオルガネラ内の特定の代謝経路や代謝物の変化を、細胞機能の独自性や多様性と直接的に結びつける知見は十分と言えない。本シンポジウムでは、これらの問題を意識しながら細胞内の代謝経路と代謝物に着目して、独自性を持つ多様な細胞の代謝制御を紐解いている最先端の研究者をお招きし、最新の知見を発表・議論する機会としたい。
3S02m
時間入り:9月16日(水)9:00-11:00
遺伝情報を調節するメチル化連動システム
オーガナイザー:深水 昭吉 (筑波大学)、酒井 寿郎 (東北大学/東京大学)
講演者・概要▼
講演者:五十嵐 和彦 (東北大学)、南 敬 (熊本大学)、今野 雅允 (大阪大学)、眞貝 洋一 (理化学研究所)、松村 欣宏 (東京大学)、深水 昭吉 (筑波大学)
概 要:遺伝情報はDNAからRNAに転写されて、mRNAは鋳型とタンパク質の翻訳に利用される。DNAからmRNAだけでなく、tRNA、rRNAをはじめ、miRNAやlncRNAもダイナミックに転写される。DNA、RNAからヒストンを含むタンパク質まで、共通した翻訳後化学修飾はメチル化であり、おもにSAM(S-adenosyl-L-methionine)をメチル基供与体として、多様なメチル基転移酵素によって触媒される。また、そのメチル基を読み取るアダプタータンパク質や、メチル基を除去する脱メチル化反応を触媒する酵素の発見も続き、タンパク質の複合体形成、シグナル伝達、スプライシング、転写や代謝など多彩な生物機能を説明する機序が解明されつつある。そこで本シンポジウムでは、生体の恒常性維持と深く関わるとメチル化反応を連動システムとして捉え、最新の話題を取り上げて議論したい。
3S03m
時間入り:9月16日(水)9:00-11:00
生物発光イメージングの最前線
オーガナイザー:小澤 岳昌 (東京大学)、永井 健治 (大阪大学)
講演者・概要▼
講演者:近江谷 克裕 (産業技術総合研究所)、Ilia Yampolsky (ロシア科学アカデミー)、永井 健治 (大阪大学)、浦野 泰照 (東京大学)、岩野 智 (理化学研究所)、村中 智明 (京都大学)
概 要:バイオイメージングの発展は,生命科学・医学研究の原動力となってきた.生細胞中で生体分子やイオンが観えるインパクトは絶大であり,特に蛍光イメージングは多くの研究者に必須の技術となっている.一方,蛍光観察に不可欠な励起光照射による細胞ダメージや,オプトジェネティクスとの組み合わせによる照射光のクロストークの問題など,技術が革新されるにつれて新たな課題が台頭してきている.このような課題を打開する技術として発光プローブを用いるバイオイメージングが国内外で注目されつつある.シグナルの安定性や基質の必要性など,技術的に難しい点はあるものの,そのポテンシャルは今後のイメージング技術として注目に値する.本シンポジウムでは,生物発光に必須となるルシフェラーゼに関する最新の動向と,発光イメージングに必須のプローブ開発,そして様々な発光イメージングの実践応用をとりあげる.
3S05m
時間入り:9月16日(水)9:00-11:00
TORの制御とその生理的役割
オーガナイザー:野田 健司 (大阪大学)、前田 達哉 (浜松医科大学)
講演者・概要▼
講演者:猪木 健 (ミシガン大学)、岡田 雅人 (大阪大学)、饗場 篤 (東京大学)、笹井 紀明 (奈良先端科学技術大学院大学)、鎌田 芳彰 (基礎生物学研究所・総研大)、前田 達哉 (浜松医科大学)
概 要:1991年にMichael N. HallらによりTORタンパク質(Target of Rapamycin)が発見されて以来、およそ30年が経過した。それ以来、TOR生命科学とも呼ぶべき一大分野が形成され、細胞レベルの基礎からガンや免役、発生など極めて広範な領域で重要な役割を担っていることが明らかにされてきた。アミノ酸や増殖因子により、TORはどのような機構で制御されているのか。また、TORはプロテインキナーゼとしてどのように基質を認識しているのか。さらに、発生や分化などの局面で、どのようにして細胞機能を調節しているのか。これまでの多くの研究にも関わらず、未解決の問題が多く残されているのが現状である。本シンポジウムでは、これらの問題に対して先進的な取り組みを行っている研究者を中心にその研究を紹介していただき、この先のTOR研究の目指すものを模索していきたい。
3S06m
時間入り:9月16日(水)9:00-11:00
生老病死における血管・リンパ管のダイナミクス
オーガナイザー:渡部 徹郎 (東京医科歯科大学)、伊東 史子 (東京薬科大学)
講演者・概要▼
講演者:伊東 史子 (東京薬科大学)、吉松 康裕 (新潟大学)、木戸屋 浩康 (大阪大学)、福原 茂朋 (日本医科大学)、中岡 良和 (国立循環器病研究センター)
概 要:血管とリンパ管は全身に分布し、体液の循環を介して生体の恒常性を維持することで生命の維持に必須の役割を果たしている。「人は血管とともに老いる」という言葉があるが、血管とリンパ管の老化に伴う機能低下は様々な病態を引き起こす。さらに、血管とリンパ管はがんなどの疾患の悪性化においても重要な役割を果たし、本国の死因の半数(がん・心疾患・脳血管疾患)に関与していることから、その形成・維持機構の解明は急務である。血管とリンパ管に関する基礎・応用研究を推進してきたが、近年の分子生物学的手法とイメージング技術の進歩により、血管とリンパ管の生体における動態について大きなパラダイムシフトが置きつつある。本シンポジウムにおいては、国内外の研究者に最先端の成果を紹介してもらうことで、様々なライフステージにおける血管とリンパ管の新たな意義を明らかにすることを目指す。
3S07m
時間入り:9月16日(水)9:00-11:00
生体膜ダイナミクス:細胞レベルの制御機構から個体レベルの生理機能まで
オーガナイザー:川内 健史 (神戸医療産業都市推進機構)、中津 史 (新潟大学)
講演者・概要▼
講演者:川内 健史 (神戸医療産業都市推進機構)、河嵜 麻実 (新潟大学)、大塚 稔久 (山梨大学)、平林 祐介 (東京大学)、黒川 量雄 (理化学研究所)
概 要:細胞内では、細胞膜やオルガネラ膜などの生体膜が互いに輸送小胞や接触部位を介した物質や情報のやり取りを行うことで、細胞の恒常性が維持される。近年オルガネラ接触部位などオルガネラ/小胞ダイナミクスの分子細胞生物学的な研究が大きく発展しつつあるが、このような潮流と並行して、多細胞生物の個体レベルにおいても、小胞を介した液性因子の分泌制御や生体膜ダイナミクスによる細胞接着分子の表面提示量の調節といったオルガネラ/小胞の動的制御が個体の発生や生理機能に重要な役割を果たすことが明らかとなりつつある。そこで本シンポジウムでは、様々な視点からオルガネラおよび小胞の細胞内動態に関する最先端の研究成果を紹介していただくことにより、生体膜ダイナミクスについて分子細胞レベルの制御機構から個体レベルの生理機能までを包括的に議論する場を提供したい。
3S08m
時間入り:9月16日(水)9:00-11:00
酵素には世界と未来を変える力がある-今こそ酵素を見つめ直す2020-
オーガナイザー:沼本 修孝 (東京医科歯科大学)、中村 顕 (学習院大学)
講演者・概要▼
講演者:中村 顕 (学習院大学)、西ヶ谷 有輝 ((株)アグロデザイン・スタジオ、農業・食品産業技術総合研究機構)、沼本 修孝 (東京医科歯科大学)、平野 優 (量子科学技術研究開発機構)、平林 佳 (東京理科大学)、山口 浩輝 (味の素㈱)
概 要:“酵素"研究は、200年近い生化学史の始まりであり、伝統ともいえる。現在の生化学では、種々の研究手法の発展とともに、膜タンパク質、超分子複合体などにフォーカスが当てられることが多い一方、未だに酵素の世界に魅了される研究者は多いはずである。前回の東京五輪が開催された1964年は、日本の研究者によって命名された酵素界を代表するシトクロムP450が世界に広く認められた年でもあり、東京に五輪が帰ってきたこの歴史的な年に、酵素研究の面白さに新たなスポットを当てたいと考えた。本シンポジウムの演者は、古くから酵素を研究する熟練研究者ではなく、これからの酵素研究を担う新進気鋭の若手研究者で構成する。酵素の魅力に惹き付けられた若手研究者により、特に構造生物学の視点から現在と未来の酵素研究を議論したい。
3S09m
時間入り:9月14日(月)17:00-19:00
生物学と化学による糖が付加された脂質の理解と制御に向けて
オーガナイザー:秋山 央子 (理化学研究所)、鈴木 淳 (京都大学)
講演者・概要▼
講演者:秋山 央子 (理化学研究所)、鈴木 淳 (京都大学)、中山 仁志 (順天堂大学)、平井 剛 (九州大学)、アルトラ マルタ (ライデン大学)、ロワリー トッド (アカデミアシニカ)
概 要:バクテリアからヒトまで、糖は単なるエネルギー源として機能するだけでなく、脂質やタンパク質に結合することによりその機能に多様性を持たせている。糖が付加された脂質は、細胞内外を隔てる障壁として機能するだけでなく、細胞外認識、細胞内シグナル伝達のための足場としても機能する。古くから糖脂質の機能や代謝について解析がなされ豊富な知識が蓄積されてきた。一方で、最新の解析技術を適用することで以前は見出されなかった糖脂質の新しい局面も見えてきた。これらの解析を通して我々が糖脂質を正確に理解できているならば、ケミカルツールを用いて糖脂質の機能や代謝を制御することが可能なはずである。またケミカルツールを用いてそれらを検証し理解することもできる。本シンポジウムでは、国内外の若手、成熟した研究者(生物学3名、化学3名)を講演者として迎え、生物・化学の両分野から糖脂質の理解と制御に向けた新しいアプローチを議論する。
3S02a
時間入り:9月16日(水)14:00-16:00
クロマチンポテンシャルの階層縦断的研究
オーガナイザー:胡桃坂 仁志 (東京大学)、木村 宏 (東京工業大学)
共催:新学術領域「遺伝子制御の基盤となるクロマチンポテンシャル」
講演者・概要▼
講演者:木村 宏 (東京工業大学)、胡桃坂 仁志 (東京大学)、前島 一博 (国立遺伝学研究所)、有吉 眞理子 (大阪大学)、山縣 一夫 (近畿大学)、岡田 由紀 (東京大学)、宮本 圭 (近畿大学)
概 要:真核生物の遺伝情報の本体であるゲノムは、細胞核の中でクロマチンと呼ばれるタンパク質とDNAとの複合体として保持されている。近年、クロマチンが遺伝子の発現を、正および負の両面において制御することが示され、このDNA配列に依存しない遺伝子制御機構が「エピジェネティクス」の基盤メカニズムであることが明らかになってきた。本シンポジウムでは、このクロマチンが有する遺伝子制御能力を「クロマチンポテンシャル」と定義し、その機能発現機構の解明を目指した、原子レベルから細胞および個体レベルに至る階層縦断的な生化学研究を紹介する。
3S03a
時間入り:9月16日(水)14:00-16:00
硫黄の化学的理解に立脚したカルコゲン・バイオロジー
オーガナイザー:本橋 ほづみ (東北大学)、赤池 孝章 (東北大学)
講演者・概要▼
講演者:本橋 ほづみ (東北大学)、居原 秀 (大阪府立大学)、中川 秀彦 (名古屋市立大学)、中林 孝和 (東北大学)、増田 真二 (東京工業大学)、斎藤 芳郎 (東北大学)、西田 基宏 (生理学研究所)
概 要:硫黄は長年にわたり地球の生命の歴史を牽引してきた元素である。しかし、酸化還元反応を受けやすいという性質が、正確な定性・定量を困難にしてきた。特に、反応性が高い活性硫黄は、化学物質として古くから記述されていたが、生体における存在の実態とその意義は不明であった。近年、質量分析やラマン分光を用いた新しい測定技術が確立され、生体内に予想以上に大量の活性硫黄が存在することが明らかになった。さらに、活性硫黄の産生・分解にかかわる酵素の同定もすすみ、硫黄代謝循環の全体像が明らかになりつつある。こうした硫黄の化学的・生化学的性質の理解により、これまでの生命原理を支える概念の変革が迫られようとしている。本シンポジウムでは、硫黄の化学的・生化学的性質の理解を支える分析技術開発の最先端と、それを基盤として展開される研究から明らかになる多様な生命現象におけるカルコゲン(第16族元素)の役割を紹介いただく。
3S07a
時間入り:9月16日(水)14:00-16:00
相分離を介した細胞内コンパートメント化と生命機能の制御
オーガナイザー:深谷 雄志 (東京大学)、北川 大樹 (東京大学)
講演者・概要▼
講演者:深谷 雄志 (東京大学)、北川 大樹 (東京大学)、廣瀬 哲郎 (北海道大学)、柳澤 実穂 (東京大学)、Yongdae Shin (Seoul National University)、西奈美 卓 (筑波大学)
概 要:細胞内では、多様なタンパク質や核酸分子が高密度に存在する一方で、生命反応や複合体形成は局所的かつ特異的に起こる。最近、RNAやタンパク質が高度に集積した非膜系構造体の形成を介し、周囲の環境から物理的に隔離された細胞内コンパートメントを形成することが明らかになりつつある。このシステムは特殊な天然変性領域を有するタンパク質やRNA分子による多価性相互作用を介した液-液相分離を基盤とするものであり、生物学分野全般に大きなインパクトを与えている。本シンポジウムでは、核内構造体や中心体、転写制御などを題材として取り上げ、1)生体分子複合体が液-液相分離を介してどのように細胞内コンパートメントを形成するのか?また、2)相分離活性が、多様な生命機能をどのように適切に制御するのかについて議論する。さらに、3)細胞内における液-液相分離や神経変性疾患に代表されるタンパク質凝集の形成原理の理解の現状と今後を展望したい。
3S10a
時間入り:9月16日(水)14:00-16:00
「ディープ・フェノタイプ研究 」:個体機能の状態遷移を理解する
オーガナイザー:八木田 和弘 (京都府立医科大学)、川上 英良 (千葉大学)
講演者・概要▼
講演者:八木田 和弘 (京都府立医科大学)、川上 英良 (千葉大学)、川崎 洋 (慶応義塾大学)、石川 哲朗 (理化学研究所)、中村 渉 (長崎大学)
概 要:個別の予防医療や未病への早期介入などのいわゆる先制医療は、これからの医学・生命科学の最重要課題の一つとなっている。個別予防や未病の制御には個体機能が正常な状態から異常な状態への変化プロセス、つまり「状態遷移」の理解が必須である。しかし、これまで病態に至る過程でもある恒常性破綻や未病といった「状態」を理解するための方法論は確立されていなかった。近年、急速に進歩する機械学習などの解析技術を活用した「ディープ・フェノタイプ研究」は、多様な生理学的・生化学的指標の時系列データ解析によって個体レベルの状態遷移メカニズムに迫る新たな研究方法論である。免疫系や概日リズムなどの個体機能の破綻による病態に着目し、ヒトにおける疾患の予後予測や病態理解のみならず、マウスなどを用いた様々な動物モデル系による恒常性破綻メカニズムの解明など、新たな挑戦的アプローチを紹介しその可能性を議論する場としたい。
ストリーミング配信
1S02m
iPS臨床 X 免疫
オーガナイザー:金子 新 (京都大学)、冨塚 一磨 (東京薬科大学)
講演者・概要▼
講演者:香月 康宏 (鳥取大学)、堀田 秋津 (京都大学)、葛西 義明 (武田薬品工業㈱)、國里 篤志 (キリンホールディングス㈱)、金子 新 (京都大学)
概 要:iPS細胞由来分化細胞の自家移植および同種(他科)移植による臨床応用が始まりました。今後も順調に適応疾患や治療対象の拡大が実現できるのか、注目が集まっています。
今回のシンポジウムはiPS細胞と免疫学をKey wordsに、移植片に対する免疫拒絶反応からの回避など免疫応答を制御する戦略や、iPS細胞から分化誘導したリンパ球へがん特異性を付与し特異的免疫応答を惹起する戦略など、急速に進む遺伝子改変技術・染色体工学技術を利用して免疫学的特性をデザインする試みについて、産業界とアカデミア双方からの演者にご登壇いただきます。
1S05m
リン脂質が制御する多彩な細胞機能
オーガナイザー:青木 淳賢 (東京大学)、中村 由和 (東京理科大学)
講演者・概要▼
講演者:川名 裕己 (東北大学)、河野 望 (東京大学)、水津 太 (北海道大学)、田村 康 (山形大学)、中村 由和 (東京理科大学)
概 要:生体膜には多様性に富むリン脂質が存在している。リン脂質の量や分子種組成は状況に応じて変動し、その乱れは様々な細胞異常を引き起こす。また、各リン脂質は輸送因子の働きにより細胞内で特徴的な分布を示しており、このことがオルガネラの機能維持に重要な役割を果たしている。このような多彩な細胞機能の調節を行うリン脂質を操作する方法の開発も進んでおり、リン脂質を特異的に認識するRNAアプタマーを用いたリン脂質の機能制御により、細胞応答を調節する試みもなされている。本シンポジウムではリン脂質の量、分子種組成、輸送、機能制御などについて多角的に展開されるリン脂質研究の最前線を紹介する。
1S07m
ブレイン・インフラストラクチャー:脳の新たな物流システムの生化学的理解と病態
オーガナイザー:山中 宏二 (名古屋大学)、山田 薫 (東京大学)
講演者・概要▼
講演者:山田 薫 (東京大学)、小峯 起 (名古屋大学)、斉藤 貴志 (名古屋市立大学)、林 悠 (筑波大学)、樋口 真人 (量子科学技術研究開発機構)、富田 泰輔 (東京大学)
概 要:脳の脈管系やグリア細胞などの非神経細胞が一体として機能し、物質の供給、異物・異常の認識から排出までの一連の物質輸送を担う巨大な機能的構造体を形成して神経活動を支えていることが最近明らかになってきた。これらは、脳の「インフラストラクチャー」、すなわち、栄養等を供給する上水道役の脳血管系、代謝産物・老廃物を排出する下水道役のグリアリンパ系、および構成要員であるグリア細胞系等からなる機能的構造体という新概念として捉えられる。さらに、「ブレイン・インフラ」の働きによって脳の自浄作用が作動し、脳内で生じる不要物の蓄積や神経変性を回避できるという新たな発想による研究が展開している。一方、脳内インフラの実体に関して、物質輸送の経路や動力源、異物認識を担う細胞等に関する研究が世界的に競争の激しい分野となりつつある。本シンポジウムでは、「ブレイン・インフラ」という新概念から脳の恒常性維持機構や病態を理解する先端研究を紹介し、活発な議論の場としたい。
1S04a
がん代謝研究の最前線
オーガナイザー:曽我 朋義 (慶應義塾大学先端生命科学研究所)、伊藤 貴浩 (京都大学ウイルス・再生医学研究所)
講演者・概要▼
講演者:伊藤 貴浩 (京都大学)、菊繁 吉謙 (九州大学)、三浦 恭子 (熊本大学)、曽我 朋義 (慶應義塾大学)
概 要:ワールブルグによって発見されたがんの代謝リプログラミングは、がんの大きな特徴の一つとして注目を集め、近年精力的に研究が進められている。その結果、がん細胞は、好気解糖によってATPのみならず、核酸合成、タンパク質合成、脂質合成経路やグルタミン代謝、グルタチオン代謝, メチオニン代謝、One-carbon代謝などの代謝経路を亢進して増殖、転移、浸潤に必要な物質を産生していることが判明した。さらに近年、分岐鎖アミノ酸ががん幹細胞の維持に関与していたり、がん細胞が産生する代謝産物が免疫細胞の分化・活性化を制御していたりすることなど新たな知見が次々と見いだされている。また、メタボロミクスの進歩によって高感度、高速に代謝物質を測定する技術も新たに誕生した。本シンポジウムでは、この分野で興味深い成果を出されているがん代謝研究者をお招きして、最新の研究内容を紹介して頂き、議論したい。
1S05a
グリケーションが心身健康発達に与える影響とその分子メカニズム
オーガナイザー:新井 誠 (公益財団法人 東京都医学総合研究所 精神行動医学研究分野 統合失調症プロジェクト)、永井 竜児 (東海大学農学部バイオサイエンス学科食品生体調節学研究室)
講演者・概要▼
講演者:長谷川 頌 (東京大学)、三五 一憲 (東京都医学総合研究所 )、戸田 雅子 (東北大学)、荒川 翔太郎 (東京慈恵会医科大学)、山中 幹宏 (東海大学)、宮下 光弘 ((公財)東京都医学総合研究所)
概 要:ヒトの個体機能に影響を及ぼす分子基盤の理解は、心身統合的な予防医療や介入法の開発をする礎となり、生活の質の維持と向上につながります。従来、糖化や酸化、炎症を軸とした病態の研究は、糖尿病、肥満、動脈硬化、心血管障害といった身体疾患での研究において着目されてきた経緯がありますが、近年では精神科領域においてもその病態との因果が注目されつつあります。本シンポジウムでは、国内の第一線で活躍する新進気鋭の研究者と意見交流を図り、身体と精神の異分野領域にまたがる相互の視点からグリケーション研究の現状と今後の展望について議論をする場としたいと思います。精神保健福祉や公衆衛生施策への新たな社会貢献につながることが期待されます。
1S07a
神経科学(仮)
オーガナイザー:尾藤 晴彦 (東京大学)
1S09a
脂質生物学からのキャリアデザイン
オーガナイザー:木原 泰行 (サンフォードバーナムプリビス医学研究所)、吉川 圭介 (埼玉医科大学医学部薬理学教室)
講演者・概要▼
講演者:吉川 圭介 (埼玉医科大学)、大戸 貴代 (㈱リピドームラボ)、小笠原 英明 (㈱タンソーバイオサイエンス)、國枝 香南子 (ARTham Therapeutics㈱)、井原 裕一朗 (大塚製薬㈱)、木原 泰行 (サンフォードバーナムプリビス医学研究所)
概 要:脂質は細胞膜を構成し、エネルギー源として蓄えられ、シグナル分子として作用する、生命に欠かせない分子である。本シンポジウムでは、生化学会にて脂質研究に関する発表をし、それらの研究で学位を取得した、創薬を志し生命の真理を追求している博士達(製薬企業の研究者、ベンチャー企業の研究者、起業家、日米アカデミアの研究者)に、脂質研究で築いた礎がどのように現在のキャリア・研究へと影響し発展を遂げているかについて、キャリア選択の決め手から現在の研究内容などに至るまでの経緯などをご紹介いただく予定である。本シンポジウムを通じて、特に学部生・大学院生・ポスドク等の若手研究者に、脂質研究の醍醐味と生化学会から出発した脂質研究者の多彩なキャリアパスについて夢を抱いてもらいたい。
1S03e
異分野連携で切り拓くシグナル伝達と疾患研究の最前線
オーガナイザー:武川 睦寛 (東京大学)、徳永 文稔 (大阪市立大学)
共催:新学術領域「数理解析に基づく生体シグナル伝達システムの統合的理解(数理シグナル)」
講演者・概要▼
講演者:武川 睦寛 (東京大学)、徳永 文稔 (大阪市立大学)、澤崎 達也 (愛媛大学)、間木 重行 (東邦大学)、富岡 征大 (東京大学)、小迫 英尊 (徳島大学)
概 要:生体のシグナル伝達は、生体分子間の複合体形成、タンパク質翻訳後修飾による機能制御、代謝や遺伝子発現の変化など、多数の階層にまたがる複雑な生命応答システムであり、増殖、分化、生存、死などに代表される細胞運命を決定して、生体の恒常性維持に本質的な役割を果たしている。また、その破綻が癌や自己免疫疾患、神経変性疾患などの発症や病態形成にも深く関与する。シグナル伝達ネットワークと生命機能の制御機構、およびその破綻がもたらす疾患発症機構を包括的に理解するには、従来の生化学的手法のみでは困難であり、数理・情報科学、オミクス解析、構造生物学、分子イメージングなど、異分野を統合した学際的研究手法の導入が必要不可欠である。本シンポジウムでは、シグナル伝達システムの制御メカニズムとその破綻がもたらす疾患発症機構に関する最新の知見を紹介するとともに、数理シミュレーションや革新的オミクス解析技術などとの異分野融合を基盤とするシグナル伝達研究の潮流について議論したい。
1S04e
病態の形成・進展、そして改善に関わるマクロファージ ~最新知見を中心に~
オーガナイザー:藤原 章雄 (熊本大学大学院生命科学研究部)、大栗 敬幸 (旭川医科大学医学部)
講演者・概要▼
講演者:瀬川 勝盛 (大阪大学)、菰原 義弘 (熊本大学)、大栗 敬幸 (旭川医科大学)、井上 剛 (東京大学)、西東 洋一 (京都大学)
概 要:マクロファージは体内の老廃物の処理や微生物などに対する生体防御を担い、様々な炎症メディエーターの分泌により炎症反応を惹起すると共に、T細胞への抗原提示を介して免疫応答も誘導することから炎症・免疫反応において重要な役割を担う貪食細胞として知られている。また、マクロファージは個体発生や組織形成に関わると共に、組織修復にも関与することからマクロファージは多彩な機能を有することが明らかとなってきた。つまり、貪食細胞として発見されたマクロファージが様々な疾患や生命現象に関わることが明らかになってきている。そこで、本シンポジウムでは、その多彩な機能を有するマクロファージに注目し、病態の発症や進展に関与するマクロファージの最近の知見やマクロファージをターゲットとした治療戦略に関する知見を新進気鋭の若手研究者にご紹介頂き、マクロファージ研究の現状と今後の展望について参加者の方々と活発に議論したいと思います。
1S06e
神経系におけるオルガネラコミュニケーションとダイナミクス
オーガナイザー:白根 道子 (名古屋市立大学 大学院薬学研究科)、小柴 琢己 (福岡大学 理学部化学科)
講演者・概要▼
講演者:白根 道子 (名古屋市立大学)、小柴 琢己 (福岡大学)、蘇武 佑里子 (スタンフォード大学)、渡邊 征爾 (名古屋大学 )、小山-本田 郁子 (東京大学)、山中 智行 (同志社大学)
概 要:近年オルガネラ間コミュニケーションの重要性が急速に明らかになりつつある。そのオルガネラ同士が接する特殊なマイクロドメインは膜接触部位と呼ばれ、脂質転移、細胞内カルシウムイオン調節、オルガネラ動態制御などに働き、細胞内ホメオスタシスの維持に寄与している。本セッションでは、それらの基盤となるオルガネラバイオロジーや、神経系における役割について、最新の知見を紹介する。特に膜接触部位の新たな機能や機構、エンドソームやミトコンドリアやオートファゴソームのバイオロジー、神経機能や神経疾患との関連などについて議論したい。
1S07e
次世代のグリアバイオロジー~新しい機能から疾患と創薬標的分子ハンティングまで~
オーガナイザー:山内 淳司 (東京薬科大学・生命科学部・分子神経科学研究室 )、加藤 裕教 (京都大学大学院・生命科学研究科・生体システム学分野)
講演者・概要▼
講演者:加藤 裕教 (京都大学)、多胡 憲治 (自治医科大学)、山内 淳司 (東京薬科大学)、林 秀樹 (東京薬科大学)、白川 久志 (京都大学)、荒木 敏之 (国立精神・神経医療研究センター神経研究所))
概 要:グリア細胞は多彩で、中枢神経組織にはアストロサイト、オリゴデンドロサイト、ミクログリアがあり、末梢神経組織にはシュワン細胞などがある。かつて、グリア細胞に関する生化学研究はニューロン研究の影に隠れ、非常に遅れていた。しかし、次世代型の遺伝子解析技術の進歩とともに、ひとつのグリア細胞には、ニューロンより多種類の分子が発現していることが明らかになってきた。そのなかには神経活動を担うために重要と考えられるイオンチャネルやレセプター、代謝およびエピジェネティック関連分子も含まれ、グリア細胞は必ずしもニューロンの補佐役ではないという事実も判明した。また、グリア細胞性疾患には癌に分類されるものばかりではなく多数の疾患が明らかにされつつあり、その多くは難治性のものばかりである。本企画では、グリア細胞の機能に関する最新の生化学研究に焦点をあて、その破綻がどのように疾患を誘導するか概説し、その証拠をもとに、それぞれの疾患に対する新しい創薬標的候補分子を提案したい。
1S08e
コラーゲン研究の新展開:基礎から創薬まで
オーガナイザー:渡辺 秀人 (愛知医科大学 分子医科学研究所)、野水 基義 (東京薬科大学 薬学部 病態生化学)
講演者・概要▼
講演者:石川 善弘 (カリフォルニア大学サンフランシスコ校)、多賀 祐喜 (㈱ニッピ・バイオマトリックス研究所)、辛 英哲 (工学院大学)、増田 亮 (早稲田大学)、米澤 朋子 (岡山大学)、渡邉 敬文 (酪農学園大学)、住吉 秀明 (東海大学)
概 要:細胞の周囲には細胞外マトリックスと呼ばれる特殊な構造が存在し、臓器・組織の形態を維持すると共に細胞挙動を制御している。この構造は線維成分と線維の間隙を埋める非線維成分によって形成されているが、その主役はコラーゲンであり、生体において最も豊富に存在するタンパク質として個体重量の約5%を占めている。コラーゲン分子は(Gly-X-Y)n配列を持つα鎖の三本鎖らせん構造を有する分子と定義される。線維形成型コラーゲンではコラーゲン分子が縦横に会合することによって細線維が形成され、細線維の集合によってコラーゲン線維が形成される。近年のコラーゲン研究は、プロリンの水酸化機構とその意義、コラーゲン分子のMS解析、糖鎖による細線維の制御、コラーゲンの治療への応用、コラーゲン分子設計を基盤とした解析技術の開発等、多面的に展開している。本シンポジウムでは近年飛躍的発展を遂げたコラーゲン研究を紹介して議論する。
2S03m
アルツハイマー病の病態・治療に関わる分子機構の最前線:アップデート
オーガナイザー:羽田 沙緒里 (北海道大学・大学院薬学研究院)、岩田 修永 (長崎大学・大学院医歯薬学総合研究科)
講演者・概要▼
講演者:羽田 沙緒里 (北海道大学)、城谷 圭朗 (長崎大学)、細川 雅人 (東京都医学総合研究所)、矢木 真穂 (自然科学研究機構 生命創成探究センター)
概 要:アルツハイマー病(AD)は、2050年には世界で1億人を超えると試算されている認知症の約70%を占める最大疾患であるが、これまでに効果的な治療法開発は成功していない。この原因の一つとしてADの発症機序が単純ではないことが挙げられる。発症リスクに関わる遺伝子多型や病態関連分子の機能変化、アミロイドβペプチドオリゴマーの多様性、病巣部位の脳内での広がり方を考えても、発症に至る分子機構は極めて多様であり、AD根本治療法開発のためには病態解明が重要となる。本シンポジウムでは、AD病態の多様性を議論すると共に、発症の引き金となる多様な分子機構の解明の取り組みと、我が国で進められている新規治療法開発の可能性を紹介し、AD克服に果たす生化学的取り組みの重要性を共有したい。
2S07m
初期胚の生化学的、遺伝学的、そしてエピジェネティックな解析による全能性の理解
オーガナイザー:塩見 春彦 (慶応義塾大学)、小倉 淳郎 (理化学研究所)
共催:新学術領域「全能性プログラム:デコーディングからデザインへ」
講演者・概要▼
講演者:新富 圭史 (理化学研究所)、井上 梓 (理化学研究所)、岡江 寛明 (東北大学)、石内 崇士 (九州大学)
概 要:命の始まりのゲノム状態である全能性に関する最新の研究を紹介する。特に、受精卵・核移植卵の完全な発生を保証するゲノム塩基配列、エピゲノム、母性因子、核構造、遺伝子発現、胚性因子の 各階層・因子の条件と相互作用を同定し、その時間軸に沿った動態解析をおこなっている若手研究者の最新の研究を紹介する。
2S08m
新たな酸化脂質研究の潮流
オーガナイザー:今井 浩孝 (北里大学薬学部)、内田 浩二 (東京大学大学院農学研究科)
講演者・概要▼
講演者:山田 健一 (九州大学)、内田 浩二 (東京大学)、今井 浩孝 (北里大学)、山田 直也 (自治医科大学)、岸 貴之 (東北大学)
概 要:酸化脂質は構造が多様で微量であること、また代謝変化するために、多くの疾患において酸化脂質の増加は観察されるものの、その機能分子の同定や特異的な機能についてはまだほとんど明らかになっていない。一方で、脂質分子の質量分析による解析技術の進展や脂質ラジカルをトラップするプローブの開発、特異的な酸化脂質による修飾タンパク質構造を認識する抗体など、新しい酸化脂質の分析法の開発や、脂質酸化依存的な細胞死フェロトーシスやリポキシトーシスのような脂質酸化依存的な特異的な細胞死経路の存在、また酸化脂質を特異的に認識する受容体も存在することが明らかになり、酸化脂質がシグナル分子として特異的に機能していることも明らかになってきた。本シンポジウムでは、酸化脂質研究の新たな潮流となるようなユニークな研究成果について紹介したい。
2S10m
小胞体を基軸とした生体の高次生命機能および疾患の制御
オーガナイザー:三宅 雅人 (徳島大学先端酵素学研究所生体機能学分野)、門脇 寿枝 (宮崎大学医学部機能生化学分野)
講演者・概要▼
講演者:池辺 詠美 (国立感染症研究所)、石川 時郎 (京都大学)、門脇 寿枝 (宮崎大学)、齋藤 敦 (広島大学)、椎葉 一心 (東京薬科大学)、三宅 雅人 (徳島大学)
概 要:小胞体は、膜・分泌タンパク質の合成や細胞内カルシウム濃度の調節など様々な機能を司るオルガネラである。タンパク質の品質管理機構など様々な分子機構によってその恒常性を維持する一方で、小胞体はミトコンドリアなど他のオルガネラとの相互作用の中心となり、他のオルガネラの機能を調節することが多く報告されてきている。近年では、これら小胞体を基軸とした分子機構が、従来のオルガネラ機能制御の概念を超えて発生過程における臓器の形成や機能制御、臓器間コミュニケーション、さらには癌などの疾患に深く関与していることが明らかとなりつつある。そこで本シンポジウムでは、小胞体から発信されるシグナルの「組織・臓器レベルでの意義」や「病態の理解と創薬への応用」を目指した新たな分子機構について最前線で研究する若手研究者に発表してもらい、個体レベルでの多様な生理・疾患における小胞体の機能理解について議論を深めたい。
2S03a
三量体G蛋白質-GEF-GAPシグナル:受容体シグナルの時空間的選択性と多様性の生化学
オーガナイザー:土居 雅夫 (京都大学)、清水(小林)拓也 (関西医科大学)
講演者・概要▼
講演者:寿野 良二 (関西医科大学)、加藤 英明 (東京大学)、井上 飛鳥 (東北大学)、土居 雅夫 (京都大学)、鈴木 一博 (大阪大学)
概 要:G蛋白質共役型受容体(GPCR)に端を発する細胞内情報伝達は、受容体に選択的に共役する三量体G蛋白質とその下流の特異的な効果器分子群によって担われ、そのシグナル動態はG蛋白質の活性寿命を調節するGAPやGPCRの細胞内ドメインに相互作用するGPCRキナーゼやβアレスチン等によって高度に制御される。本シンポジウムでは構造生物学によって明らかにされたGPCRのリガンド認識機構、最新のクライオ電顕を用いた三量体G蛋白質活性化機構、機械学習によるGPCRとG蛋白質の選択的相互作用パターンの解読、さらには概日時計の周期を調節するゆったりとした時間単位のGAP調節機構、ケモカイン受容体の細胞内ドメインに会合する新規複合体が関与する長期の免疫応答機構についての研究を紹介する。GPCRおよび三量体G蛋白質シグナルの選択性と時空間的多様性を担保する生化学的基盤についての最新の研究と今後の展望を議論する場としたい。
2S04a
膜タンパク質の構造制御と機能制御
オーガナイザー:高橋 素子 (札幌医科大学)、白土 明子 (札幌医科大学)
講演者・概要▼
講演者:酒井 克也 (金沢大学)、大坪 和明 (熊本大学)、顧 建国 (東北医科薬科大学)、高橋 素子 (札幌医科大学)山下 敦子 (岡山大学)、白土 明子 (札幌医科大学)
概 要:膜タンパク質は細胞内外の物質の輸送や情報伝達といった多細胞生物にとって非常に重要な機能をもっており、しばしば創薬のターゲットにもなっているため、その機能制御のメカニズムを明らかにすることは大きな課題である。しかしながら、可溶型のタンパク質と比較して立体構造の決定が技術的に難しいこともあり、構造あるいは構造変化の制御と機能制御の関係について明らかになっている例は少ない。よって新しい技術の応用、あるいは新しい角度からの検討が工夫されている。
本シンポジウムではトランスポーター、シグナル受容体、接着因子など、特に病態に深く関与する膜タンパク質について、その構造制御・機能制御のメカニズムについて考察する。膜タンパク質の構造変化と活性、細胞外ドメインの翻訳後修飾による機能制御の解析、細胞外ドメインに作用する人工化合物の開発など、様々な取り組みについて考えたい。
2S09a
細菌が放出するナノ粒子の新たな病原性とワクチンとしての可能性
オーガナイザー:泉福 英信 (国立感染症研究所)、中尾 龍馬 (国立感染症研究所)
講演者・概要▼
講演者:泉福 英信 (国立感染症研究所)、中尾 龍馬 (国立感染症研究所)、尾花 望 (筑波大学)、豊福 雅典 (筑波大学)、田代 陽介 (静岡大学)
概 要:細菌が放出するナノ粒子(膜小胞等)は、非感染性(安全性)と構造安定性という性質に加え、LPS、核酸、病原蛋白質など多くの活性因子を含んでいる。ナノ粒子は、細菌の病原性の発揮や組織において免疫応答する際に、多様な効果を誘導していることが明らかとなった。近年このナノ粒子の新たな可能性として、経鼻ワクチンへの応用研究が行われるようになった。多くの病原細菌はヒト粘膜面を介して定着侵入し感染が成立するため、ワクチン開発においては、血中IgGのみならず粘膜面におけるS-IgAを産生させる必要がある。また、様々な病原体の抗原に対して抗体を誘導できる多様性も必要とされる。このナノ粒子には、粘膜面における抗原デリバリーシステムとしての機能、多様抗原のキメラ化に加えコスト削減など幅広い役割が期待されている。ナノ粒子を用いたワクチンの可能性について議論するシンポジウムを企画する。
2S01e
ケモテクノロジーが拓くユビキチンニューフロンティア
オーガナイザー:佐伯 泰 (東京都医学総合研究所)、沖米田 司 (関西学院大学)
共催:新学術領域「ケモテクノロジーが拓くユビキチンニューフロンティア」
講演者・概要▼
講演者:佐伯 泰 (東京都医学総合研究所)、沖米田 司 (関西学院大学)、大竹 史明 (星薬科大学)、山野 晃史 (東京都医学総合研究所)、伊藤 拓水 (東京医科大学)、大岡 伸通 (国立医薬品食品衛生研究所)、及川 大輔 (大阪市立大学)、高橋 宏隆 (愛媛大学)
概 要:ユビキチン・プロテアソーム系は、選択的なタンパク質分解を介して、タンパク質恒常性、遺伝子発現、ストレス応答、シグナル伝達など様々な細胞機能を制御しており、本経路の異常は、神経変性疾患や自己免疫疾患、がんなどの様々な疾病を直接引き起こす。そのため、ユビキチン・プロテアソーム系を標的とした薬剤開発が世界的に進展しており、特にPROTACやサリドマイド誘導体など低分子化合物による選択的タンパク質分解誘導法が新しい創薬モダリティとして注目されている。しかし、ユビキチン修飾の使い分けやプロテアソームの制御機構など重要な未解決課題が残されており、また、ユビキチン創薬のターゲット分子探索も不十分である。本シンポジウムでは、ユビキチンバイオロジー、ユビキチンコード解析、化合物によるタンパク質分解誘導法開発の国内リーダーが一同に会し、将来のユビキチン研究の方向性とユビキチン創薬の可能性について議論する。
2S03e
Gタンパク質共役型受容体の構造機能相関:創薬の新戦略に向けて
オーガナイザー:横山 茂之 (理化学研究所)、奥野 利明 (順天堂大学大学院医学研究科)
講演者・概要▼
講演者:濡木 理 (東京大学)、岩田 想 (京都大学)、堀 哲哉 (理化学研究所)、杉本 幸彦 (熊本大学)、輿水 崇鏡 (自治医科大学)、奥野 利明 (順天堂大学)
概 要:Gタンパク質共役型受容体(GPCR)は最大の創薬標的として知られ、数多くの拮抗薬や作動薬が臨床医学の現場で使用されている。しかしながら、その多くは、受容体の構造情報が得られる以前に開発された薬剤で、多数の化合物のライブラリーを用いた網羅的スクリーニングによって見いだされた。細胞膜を7回貫通する複雑な構造に加え、その高度の柔軟性のために構造解析が困難であったGPCRであるが、近年、X線構造解析やクライオ電子顕微鏡によって原子レベルでの構造情報が得られるようになった。本シンポジウムでは、GPCRの構造機能相関に焦点をあて、GPCRのリガンド認識、Gタンパク質との共役、GPCR同士の多量体形成における構造と機能の相関を討論し、新しいストラテジーによる新規創薬の可能性を探りたい。
2S09e
オルガネラ境界膜を巡る宿主と病原体の攻防
オーガナイザー:森田 英嗣 (弘前大学 農学生命科学部 分子生命科学科)、熊谷 圭悟 (国立感染症研究所 細胞化学部)
講演者・概要▼
講演者:熊谷 圭悟 (国立感染症研究所)、山本 雅裕 (大阪大学)、小川 道永 (国立感染症研究所)、田端 桂介 (ハイデルベルク大学)、齊藤 達哉 (大阪大学)、森田 英嗣 (弘前大学)
概 要:細胞内に寄生する病原体は、増殖するために種々のオルガネラ内に独自の生息域を構築する。一方、宿主細胞は、侵入した病原体の増殖拡大を阻止するために、様々な抗病原体応答を発動する。オルガネラ膜は病原体生息域と宿主を隔てる境界線といえ、そこでは勢力の拡大を狙う病原体と宿主の熾烈な攻防が分子レベルで繰り広げられている。本シンポジウムでは、病原体がオルガネラ膜の機能や構成を改変したり、膜を変形させ独自の構造体を形成する仕組みなどを扱うとともに、病原体の細胞内侵入に伴う膜損傷によって発動する自然免疫や、細胞内侵入した病原体除去に作用する宿主オートファジー機構なども扱う予定である。オルガネラ境界膜を巡る宿主と病原体の攻防の分子機構について解析されている国内外の研究者に最新の研究内容について解説していただく。
2S10e
「核とミトコンドリアのシナジー」から紐解く生老病死の生化学
オーガナイザー:田中 知明 (千葉大学)、井上 聡 (東京都健康長寿医療センター研究所)
講演者・概要▼
講演者:村田 和貴 (千葉大学)、井上 聡 (東京都健康長寿医療センター研究所)、松本 雅記 (新潟大学)、浅原 弘嗣 (東京医科歯科大学)、大島 淳子 (ワシントン大学)、岡崎 康司 (順天堂大学)
概 要:エピゲノム異常やゲノム不安定性など核内事象の生化学は、生老病死を紐解く鍵となる。一方、寿命(lifespan)という観点からは、出芽酵母や線虫、ショウジョウバエなどのモデル生物の解析が盛んになされてきたが、テロメア、DNA損傷、酸化ストレス、サーチュイン、栄養、代謝などの老化シグナルは共通してミトコンドリアシグナルに関わる。事実、約1200種にも及ぶ複雑なタンパク構造体であるミトコンドリアは、核とのシナジーを生み出す中で、老化やがん化シグナル・代謝環境変化に応じて多くの細胞内代謝経路とエネルギー産生を統括する。本シンポジウムでは、「核とミトコンドリアのシナジー」をテーマに、geneticsのみならず、インタラクトーム解析・ロカラザトーム解析・クロマトーム解析・SWATH-MS解析など新たなアプローチを通じて、疾患病態との関わりを切り開いてきた先駆的研究を取り上げる。新しいオミックス技術的視点と核とミトコンドリアのシナジーから紐解く生老病死の生化学について、これから切り開かれゆく新たな可能性について、皆さんと議論を深めたい。
3S04m
生体エネルギー革命とシグナルミメティクス
オーガナイザー:西田 基宏 (九州大学大学院薬学研究院)、三木 裕明 (大阪大学微生物研究所)
講演者・概要▼
講演者:赤池 孝章 (東北大学)、住本 英樹 (九州大学)、潮田 亮 (京都産業大学)、異島 優 (徳島大学)、三木 裕明 (大阪大学)、岩切 泰子 (イエール大学)
概 要:電子の授受(レドックス)は生体エネルギー産生やシグナル変換を担う基本化学反応である。教科書的には、NADH/NADPHなどから供給される電子が酸素に受容されることで、効率よくエネルギー産生や活性酸素シグナル生成が行われると信じられてきた。しかし最近、システインパースルフィドをはじめとする活性イオウの発見とその化学的特性が明らかにされ、全く新しい生命観が見出されつつある。例えば、酸化型活性イオウが電子受容体となり、エネルギー産生(イオウ呼吸)やNADPH酸化酵素群を介するシグナル変換(イオウ代謝)に寄与する可能性が哺乳動物などで明らかにされつつある。本シンポジウムでは、若手・シニアの両世代で活躍する最先端レドックス研究者を招き、活性イオウなどのレドックス感受性生体分子が、酸素や活性酸素ミメティクスとなる斬新な知見を紹介しつつ、レドックス研究のセントラルドグマを再構築する議論を展開したい。
3S10m
TAシステムを介した細菌の休眠と覚醒: 生化学と一細胞解析の融和を目指したアプローチ
オーガナイザー:檜作 洋平 (京都大学 ウイルス・再生医科学研究所)、山口 良弘 (大阪市立大学 理学研究科 生物地球専攻)
講演者・概要▼
講演者:檜作 洋平 (京都大学)、禾 晃和 (横浜市立大学)、山口 良弘 (大阪市立大学)、加藤 文紀 (広島大学)、野田 尚宏 (産業技術総合研究所)、加藤 節 (広島大学)
概 要:細菌は,抗生物質存在下などの厳しいストレス環境においても,集団の一部が生き残ることが知られてきた.これら生残菌の示す薬剤耐性は,変異などによるのみでなく,分裂・増殖しない休眠状態への移行によっても起こると考えられる.このような休眠を介した生残菌 (persister) は,その後条件が整うと再増殖 (覚醒) するため,感染症治療の大きな問題ともなっている.最近の研究から,細菌の有する生育制御因子ともいうべき toxin-antitoxin (TA) system が休眠への移行を促すことが明らかになってきた.本シンポジウムでは,病原菌を含む細菌の休眠誘導と覚醒を司るTA systemの作用機構及び役割の解明や臨床応用へ向けた,生化学・構造生物学的アプローチについての話題を取り上げる.また,細菌の生育状態を識別・制御する上で不可欠な一細胞単離・解析技術についても紹介し,TA systemを介した休眠と覚醒の実体に迫る上での技術革新の可能性を探る.
3S01a
生命現象をオミクス駆動型研究から解き明かす~オミクスを使って得られた最新知見と、測る前に知っておきたい最新技術
オーガナイザー:大澤 毅 (東京大学 先端科学技術研究センター ニュートリオミクス・腫瘍学分野)、島村 徹平 (名古屋大学 大学院医学系研究科 システム生物学分野)
講演者・概要▼
講演者:日野原 邦彦 (名古屋大学)、河岡 槙平 (京都大学)、木暮 泰寛 (国立がん研究センター)、大澤 毅 (東京大学)、白石 友一 (国立がん研究センター)、島村 徹平 (名古屋大学)
概 要:生化学研究にパラダイムシフトを引き起こすためには、異分野で培われた叡智や新たな技術を推進力とした異分野融合研究が必須である。本講演では、データ駆動型生命科学を実践するウェット・ドライの両若手研究者が集い、オミクスを使って得られた最新知見、測る前に知っておきたい最新技術、生命現象や疾患を統合的に理解する新領域研究について紹介する。また、難しく感じられがちなオミクス研究の魅力、最新のトピック、若手研究者の新規参入のきっかけを提供する。
3S04a
生体内イベントに対して攻守に関わる一酸化窒素の新たな側面
オーガナイザー:上原 孝 (岡山大学)、柳 茂 (東京薬科大学)
講演者・概要▼
講演者:上原 孝 (岡山大学)、伊藤 直樹 (東京薬科大学)、中村 智尋 (スクリプス研究所)、香月 博志 (熊本大学)、筒井 正人 (琉球大学)
概 要:一酸化窒素(NO)は血圧調節や記憶形成,あるいは殺菌や細胞死を惹起することが知られている.最近の研究では,NOが特異的に結合し,活性変化をもたらすタンパク質が細胞質だけでなく,ミトコンドリア,小胞体,核など多くのオルガネラに存在し,病態形成防御あるいは惹起に深く関与していることが示唆されている.このようにNOは様々な基質タンパク質に結合・作用することで,生体内イベントを正または負に調節する内在性の攻守因子として働いている.今回企画したシンポジウムは,抗メタボ作用,肺保護作用,パーキンソン病惹起機構,エピジェネティクス調節作用に関して精力的に研究を進めている5名のシンポジストで構成している.生体内分子のNOの特異的作用,とくに生命に対して攻守に渡る作用機構について深く議論を進めたいと考えている.
3S05a
リン脂質の多様性が紡ぐ生命現象
オーガナイザー:佐々木 雄彦 (東京医科歯科大学)、横溝 岳彦 (順天堂大学)
講演者・概要▼
講演者:進藤 英雄 (国立国際医療研究センター)、青木 淳賢 (東京大学)、青柳 良平 (慶應義塾大学)、李 賢哲 (順天堂大学)、佐々木 雄彦 (東京医科歯科大学)
概 要:細胞膜リン脂質は水溶性ヘッドグループの構造でクラス分けされ、それぞれの生化学的な機能が研究されている。膜リン脂質の疎水性尾部は、脂質メディエーターの前駆体である脂肪酸のリザーバーとしての役割をもつとともに、流動性、厚み、彎曲といった膜の物理的特性に影響を与える。特定のリン脂質クラスは脂肪酸構成が異なる分子種の集合であり、細胞膜における分子種の存在比率はクラスによって様々で、また、細胞の種類やオルガネラごとに異なる。さらに病態の発現に伴うリン脂質分子種プロファイルの変化に関する知見も蓄積しつつある。本シンポジウムでは、リピドミクス解析技術を駆使した、ホスホリパーゼA1/2、リゾリン脂質アシル転移酵素、脂肪酸不飽和化酵素等の生化学研究の最新知見を発表いただき、細胞膜リン脂質多様性の生物学的意義について考察を深めたい。
3S06a
多彩な生命現象を制御する血流メカノバイオロジー:分子から個体まで
オーガナイザー:福原 茂朋 (日本医科大学 先端医学研究所 病態解析学部門)、西山 功一 (熊本大学国際先端医学研究機構)
講演者・概要▼
講演者:山本 希美子 (東京大学)、中嶋 洋行 (国立循環器病研究センター)、山城 義人 (筑波大学)、本藏 直樹 (浜松医科大学 / JST さきがけ)、西山 功一 (熊本大学)、弓削 進弥 (日本医科大学)
概 要:血管を流れる血液は、単に酸素や栄養を運ぶキャリアとしての役割だけでなく、血管壁にシェアストレスや伸展張力などの力学刺激を負荷することで、多彩な生命現象を制御している。例えば、血流に起因するシェアストレスは、血管内皮細胞に作用して血管径を拡張し、血圧を制御することがよく知られている。しかしながら、最近の研究から、血流による力学刺激が、機能的な血管網の構築や組織・臓器の形成・修復にも関与することが明らかになった。また、血管に作用する壁伸展刺激が、動脈硬化や動脈瘤などの病態形成と密接に関連することがわかってきている。本シンポジウムでは、血流に起因する力学刺激が関わる多彩な生命現象、さらには血流と疾患(病態)との関連について、多様なアプローチで研究を推進する研究者にご講演いただき、血流が関わる生命現象のメカノバイオロジーについて最新の話題を提供する。
3S08a
ペルオキシソーム病研究の最前線
オーガナイザー:横山 和明 (帝京大学薬学部)、守田 雅志 (富山大学薬学部)
講演者・概要▼
講演者:横山 和明 (帝京大学)、本庄 雅則 (レオロジー機能食品研究所)、高島 茂雄 (岐阜大学)、下澤 伸行 (岐阜大学)、濱 弘太郎 (帝京大学)、守田 雅志 (富山大学)、辻 省次 (東京大学)、今中 常雄 (広島国際大学)
概 要:ペルオキシソームは極長鎖脂肪酸のβ酸化、エーテル型リン脂質の生合成やコレステロールの胆汁酸への変換などの重要な代謝反応を担っている。ペルオキシソーム病は、PEX遺伝子群の変異によるペルオキシソーム形成異常症と、ペルオキシソーム酵素や膜上輸送体遺伝子変異による機能異常症に分類される22種類が知られている。いずれも先天代謝異常症に属し、多くが神経変性を示す。ペルオキシソーム病の中ではABCトランスポーターD1の変異による副腎白質ジストロフィー(ALD)が最も多く、同一遺伝子変異にもかかわらず多様な臨床病型を示す。本シンポジウムではこれらペルオキシソーム病について、臨床の立場からの最新の知見に加え、変異タンパクの機能障害に基づく病態形成機構、ゲノミクスによる病態の多様性を担う遺伝子の同定、リピドミクスによるバイオマーカー探索などの解析から得られたペルオキシソーム病研究の最新の成果を紹介する。
3S09a
糖鎖多様性から老化を読み解く
オーガナイザー:萬谷 博 (東京都健康長寿医療センター)、岡島 徹也 (名古屋大学大学院医学系研究科)
講演者・概要▼
講演者:上住 聡芳 (東京都健康長寿医療センター)、三浦 ゆり (東京都健康長寿医療センター)、花松 久寿 (北海道大学)、錦見 昭彦 (国立長寿医療研究センター研究所)、三上 雅久 (神戸薬科大学)
概 要:超高齢社会において健康長寿の実現が期待されている。“健康的な老化"とは何か?様々な細胞や動物モデルを用いた研究から、個々の細胞の変化や細胞外環境を含む組織の変化、細胞と細胞外環境との相互作用の影響に関する多くの報告がなされ、我々人類は、“老化"を規定する因子の存在に迫りつつある。細胞表面を覆う糖鎖はその老化規定因子になり得るだろうか。糖鎖の構造的かつ機能的多様性は細胞の種類や状態を反映するとともに、加齢や疾患に伴って変化する。近年の糖鎖解析技術の進歩により、糖鎖の構造や組成の超高感度かつ網羅的な解析が可能となり、老化や疾患に関わる糖鎖が多数報告されるようになった。本シンポジウムでは、老化研究と糖鎖研究の融合により明らかになりつつある糖鎖多様性と老化の関係について議論したい。