プログラム
大会スケジュール
大会スケジュール
日程表
シンポジウム
シンポジウム一覧
シンポジウム概要
<セッションNo.について>
開催日+シンポジウム(S)+会場+時間帯*
(例)1S02m:第1日目・シンポジウム・第2会場・9:00-11:00
*時間帯表示の凡例
シンポジウムが行われる時間枠によって表示が区別されます
m: 9:00-11:00
a: 14:30-16:30 または 3日目のみ13:20-15:20・13:20-17:20
第1日目(9月18日)
1S02m
日 時:9月18日(水)9:00-11:00 会 場:第2会場(503)
栄養環境センシングと制御 (の分子基盤)
オーガナイザー:酒井 寿郎(東北大学 / 東京大学)、島野 仁(筑波大学)
講演者・概要▼
講演者:関谷 元博 (筑波大学)、布浦 拓郎 (海洋研究開発機構)、日野 信次朗 (熊本大学)、松村 欣宏 (東京大学)、村上 誠 (東京大学)
概 要:飢餓、飽食の応答、脂肪細胞の分化や燃焼、がん、炎症など栄養や環境に応じた細胞の適応のメカニズムは、多くの場合細胞外シグナルの下流として解析されてきた。 一方、オミクス解析の展開の中、様々な生理、病態における細胞、組織内の栄養状態や代謝産物の量と質、変化、局在が重要であり、これをセンスする分子やシステムがあきらかになりつつある。エネルギーハブ分子にまつわる生命活動は、結局脂質代謝やアミノ酸代謝を含めて解糖系・TCAサイクル・ETCに繋がっており、生体は、状況、目的に応じてこれをどう活用するかで代謝プログラミングを調節しているようだ。 これらの制御の仕組みや生物学的意義は意義深く示唆に富む。 栄養制御 、脂質メディエーター、肥満エピゲノム海洋微生物など目的や生物種を超えて分子メカニズム解明に活躍されている研究者にお集まりいただいて、メタボライトのセンシングと制御の視点から栄養代謝ホメオスタシスの分子基盤と意義を語っていただく。
1S02a
日 時:9月18日(水)14:30-16:30 会 場:第2会場(503)
代謝による炎症・再生コンティニアムの制御と破綻
オーガナイザー:大石 由美子(日本医科大学)、尾池 雄一(熊本大学)
講演者・概要▼
講演者:田所 優子 (金沢大学)、門松 毅 (熊本大学)、林 晋 一郎 (国立精神・神経医療研究センター神経研究所)、真鍋 一郎 (千葉大学)、山下 政克 (愛媛大学)
概 要:生活習慣病とがんの共通した基盤病態として「代謝異常」、「慢性炎症」が存在する。個々の細胞における代謝(細胞代謝)は、個体の生存に不可欠だが、近年の研究により、細胞代謝が免疫細胞、がん細胞、幹細胞の増殖や機能の活性化をも能動的に制御すること、さらに細胞代謝の変容が、様々な病態形成の直接的な原因になっていることが明らかとなってきた。一方、炎症は、組織傷害後の修復、再生において重要な役割を果たすなど、個体の恒常性維持に重要な生体応答である。近年、個体における病態形成において、代謝の異常が炎症の変調をもたらし、組織の修復、再生を遅延させ、組織の恒常性を破綻させることが明らかとなり、「代謝」「炎症」の連関が注目されている。しかしながら、「代謝」「炎症」「修復・再生」の連関における階層性、相互性は、ほとんど解明されていない。本シンポジウムでは、「代謝」「「炎症・再生コンティニアム」の連関を解き明かし、その破綻がどのようにして病態の形成を導くか、その機序について議論したい。
1S03m
日 時:9月18日(水)9:00-11:00 会 場:第3会場(501)
ファンクショナルプロテオミクスの最前線 ~分子メカニズムの包括的解明から創薬へ~
オーガナイザー:植田 幸嗣((公財)がん研究会)、久保田 一石(第一三共RDノバーレ㈱)
講演者・概要▼
講演者:今見 考志 (京都大学)、足立 淳 (国立研究開発法人 医薬基盤健康栄養研究所)、植田 幸嗣 ((公財)がん研究会)、上原 泰介 (エーザイ㈱)、久保田 一石 (第一三共RDノバーレ㈱)、高田 真吾 (北海道大学)
概 要:近年、質量分析計の著しい性能向上や公的データベースの充実、インフォマティクスの発達などに伴い、プロテオミクス研究は単純に高感度化や網羅性を追求するフェーズを終え、多様な分野と融合しつつ細胞レベルから個体レベルまで動的な生体機能の解明を行うファンクショナルプロテオミクスへと進化を遂げている。 本セッションでは、リン酸化や糖鎖を標的とした翻訳後修飾プロテオミクスや、低分子化合物との相互作用に焦点を当てたケミカルプロテオミクス、新たな機能性マイオカインの発見といった、いずれも新規の機能的分子ネットワークを解明するに留まらず、診断薬・治療薬の研究開発にまで進展している実例をご紹介頂く。 アカデミアのみならず産業界におけるファンクショナルプロテオミクス研究の最前線と展望を知ることにより、プロテオミクスを応用した研究のアイデアがより一層広がり、新しい視点からの基礎生化学的発見や創薬研究が進展することを期待したい。
1S03a
日 時:9月18日(水)14:30-16:30 会 場:第3会場(501)
生化学反応を可視化するクライオ電子顕微鏡
オーガナイザー:吉川 雅英(東京大学)、岩崎 憲治(筑波大学)
講演者・概要▼
講演者:ダネフ・ラドスティン (東京大学)、西澤 知宏 (東京大学)、胡桃坂 仁志 (東京大学)、栗栖 源嗣 (大阪大学)、ジョナサン へドル (ヤギェウォ大学)、大嶋 篤典 (名古屋大学)
概 要:クライオ電子顕微鏡法は、近年、生体分子の近原子分解能の解析を、結晶化をせずに可能にしてきた点で注目されてきている。クライオ電子顕微鏡には、一つ一つの分子のイメージを取得するという特徴がある。この特徴を活かし、不均一な試料からも構造を解くことで、生化学反応過程を可視化する試みを紹介したい。
1S04m
日 時:9月18日(水)9:00-11:00 会 場:第4会場(502)
液体相分離と細胞機能
オーガナイザー:廣瀬 哲郎(北海道大学)、高橋 秀尚(横浜市立大学)
講演者・概要▼
講演者:Qiang Zhou (カリフォルニア大学バークレー)、山口 雄輝 (東京工業大学)、塩見 美喜子 (東京大学)、吉村 成弘 (京都大学)、水野 大介 (九州大学)、高橋 秀尚 (横浜市立大学)、廣瀬 哲郎 (北海道大学)
概 要:近年、RNA顆粒、ヘテロクロマチン、転写装置などの非膜系細胞内構造体の液滴としての性質に注目が集まっている。これらの液滴は、天然変成領域(IDR)タンパク質の局所集合が誘発した液体相分離によって形成される。多くのIDRタンパク質は、核酸結合性で、DNAやRNAを介して集合し、相分離を誘発すると考えられている。こうした相分離構造体は、特異的制御因子の空間的隔離、特異的反応の場、制御ハブの形成といった働きが提案されているが、具体的な生物学的意義については、未だ明らかにされていない。本シンポジウムでは、国内外の第一線研究者の多彩なアプローチによる転写装置、RNA顆粒、核膜孔複合体などの相分離構造体の研究を取り上げ、細胞生物学の新分野開拓の現状と今後を展望したい。
1S04a
日 時:9月18日(水)14:30-16:30 会 場:第4会場(502)
オルガネラ間コミュニケーションの新知見
オーガナイザー:白根 道子(名古屋市立大学)、平林 祐介(東京大学)
講演者・概要▼
講演者:白根 道子 (名古屋市立大学)、平林 祐介 (東京大学)、太田 啓介 (久留米大学)、濱崎 万穂 (大阪大学)、新崎 恒平 (東京薬科大学)
概 要:細胞内のさまざまなオルガネラは、各々のアイデンティティを保持しつつ小胞体ネットワークと相互作用しているが、このオルガネラ間コミュニケーションの重要性が近年急速に明らかになりつつある。オルガネラ同士が接する特殊なマイクロドメインは膜接触部位と呼ばれ、脂質転移、細胞内カルシウムイオン調節、オルガネラ動態制御などの場として働き、細胞内ホメオスタシスの維持に寄与している。本セッションでは、このオルガネラ間コミュニケーションにおける最新の知見を紹介する。特に新たに発見された膜接触部位の形成分子や、新たに報告された膜接触部位の機能や、最新の膜接触部位のイメージング技術などについて議論したい。
1S05m
日 時:9月18日(水)9:00-11:00 会 場:第5会場(301)
オートファジーの選択性と多様性
オーガナイザー:小松 雅明(順天堂大学)、水島 昇(東京大学)
講演者・概要▼
講演者:小松 雅明 (順天堂大学)、吉森 保 (大阪大学)、中戸川 仁 (東京工業大学)、阪井 康能 (京都大学)、株田 智弘 (国立精神・神経医療研究センター)、水島 昇 (東京大学)
概 要:オートファジーは細胞内成分をリソソームにおいて分解する経路の総称である。オートファジーは大きく3つの経路、すなわち新規の膜形成を伴うマクロオートファジー、リソソーム膜が陥入するミクロオートファジー、そしてリソソーム膜を透過することによる膜透過型オートファジーに分かれ、それぞれ異なるシグナル、そして分子機構により制御されている。しかし、リソソーム分解全体を考えると、これらの経路は独立に、あるいは協調して細胞内分解に貢献していると考えられる。さらに、各オートファジーは選択性を有し、時空間的に制御された基質の分解により、遺伝子発現や細胞内代謝の制御、ひいては個体としての健康維持、老化抑制にまで働くと予想される。本シンポジウムでは、各オートファジーの分子機構から生理作用まで紹介するとともに、今後のオートファジー領域の研究展開について討議したい。
1S05a
日 時:9月18日(水)14:30-16:30 会 場:第5会場(301)
化学物質で解き明かす心の仕組み
オーガナイザー:榎本 和生(東京大学)、古屋敷 智之(神戸大学)
共催:文部科学省新学術研究領域 スクラップ&ビルドによる脳機能の動的制御
講演者・概要▼
講演者:榎本 和生 (東京大学)、古屋敷 智之 (神戸大学)、菊水 健史 (麻布大学)、植松 朗 (理化学研究所)、久原 篤 (甲南大学)
概 要:脳のなかで心はどのように生み出されるのか?このような問いの答えを化学物質のレベルに求めることは、ひと昔前には不可能であるかに思えた。しかし、最近10年間の技術的な進歩により、心(情動)と神経ペプチドやモノアミンとの関係が明確となり、さらには、その作動メカニズムが神経ネットワークのレベルで解き明かされようとしている。本シンポジウムでは、5名の講演者に「心(情動)を生み出す分子メカニズム」に関する話題を提供して頂き、さらには領域の今後の方向性について議論したい。
1S06m
日 時:9月18日(水)9:00-11:00 会 場:第6会場(302)
生体内におけるSingularity Elementsとしての生体金属の利用と制御
オーガナイザー:澤井 仁美(兵庫県立大学 )、石森 浩一郎(北海道大学)
講演者・概要▼
講演者:小椋 康光 (千葉大学)、志村 まり (国立国際医療研究センター研究所)、角 大悟 (徳島文理大学)、西藤 有希奈 (京都大学)、原 裕一 (川崎医科大学)、澤井 仁美 (兵庫県立大学)
概 要:生物は、主な構成元素である水素、炭素、酸素、窒素、硫黄とは全く異なる物性を有する金属元素を「生体金属」として利用することで、物質の合成分解やエネルギー変換などの重要な生理機能を発現し、生命を維持していることから、生体金属は生命維持における「Singularity Elements(特異的元素)」と定義できる。このような生体金属を恒常的に生体内に維持するため、生物は種々の制御機構を分子から細胞レベルまで多層的に構築し、逆にその破綻は疾病の要因となる。したがって、生体金属の本質を理解するには、分子レベルから個体、臨床に至る研究が重なるSingular point(特異点)を見据えたアプローチが必要となる。本シンポジウムでは、生化学のみならず医学・薬学・毒性学・放射光科学などの最前線で活躍する若手研究者にご講演いただき、「生体金属科学」に関する新たな研究展開と将来展望について議論したい。
1S06a
日 時:9月18日(水)14:30-16:30 会 場:第6会場(302)
テトラピロール色素が織りなす多様な機能とその生合成系の最前線
オーガナイザー:和田 啓(宮崎大学)、杉島 正一(久留米大学)
講演者・概要▼
講演者:佐藤 秀明 (久留米大学)、杉島 正一 (久留米大学)、和田 啓 (宮崎大学)、塚谷 祐介 (海洋研究開発機構 海洋生命理工学研究開発センター)、原田 二朗 (立命館大学)、成川 礼 (静岡大学)
概 要:「4つのピロール環」という基本骨格分子が織りなす機能の多様性は、非常に幅広く興味深い。たとえば、哺乳類において血液中で酸素を運ぶヘモグロビンにはヘム、植物では光合成で光を利用するタンパク質群にはクロロフィルといったテトラピロール色素が機能している。さらに、脂溶性の抗酸化剤(ビリルビン)、光センサー(ビリン)もテトラピロール骨格をもつ。それぞれの色素は、生合成過程において共役構造や中心金属が付加されることで、機能性が緻密に付加され、巧みに利用されている。 本シンポジウムでは、多段階に亘る生合成過程において、どのようにしてテトラピロール骨格を組み上げ、さらに部位特異的な反応/修飾をコントロールして最終的な機能性を付加するのか?、また様々なテトラピロール色素の機能に関して、最新の話題を新進気鋭の研究者から提供して頂く。
1S07m
日 時:9月18日(水)9:00-11:00 会 場:第7会場(303)
新たなシグナル検出法・アプローチに基づくリン酸化シグナル研究の新展開
オーガナイザー:松沢 厚(東北大学)、梶本 武利(神戸大学)
講演者・概要▼
講演者:土田 芽衣 (東北大学)、中西 祐貴 (京都大学)、楳村 敦詩 (京都府立医科大学)、堤 良平 (東北大学)、梶本 武利 (神戸大学)
概 要:細胞内リン酸化シグナル研究は、これまでの様々な既存の研究によって成熟し、その研究成果は一見、プラトーに達した感がある。しかし実際には、キナーゼやホスファターゼは正確に細胞のどこで、いつ活性化しているのか、また真の基質の特定やその基質と疾患との直接的な関係など、詳細に検討すべき本質的な問題については未解明な点が多く残されているのが現状である。そこで本シンポジウムでは、これらの問題に対して、独自のリン酸化シグナル検出法や既存の研究とは異なる視点からの新たなアプローチによって、キナーゼやホスファターゼの真の基質の同定や、それらの活性化の時間的・空間的制御の具体的な仕組みと意義、実際のシグナル制御の破綻による疾患原因などの解明を目指して挑戦する次世代の若手研究者による最新の研究成果を紹介したい。本シンポジウムがリン酸化シグナルの新たな研究展開へのブレークスルーとなることを期待している。
1S07a
日 時:9月18日(水)14:30-16:30 会 場:第7会場(303)
細胞の生・老・病・死を司るJNKの分子機構と役割
オーガナイザー:五十嵐 道弘(新潟大学)、仁科 博史(東京医科歯科大学)
講演者・概要▼
講演者:仁科 博史 (東京医科歯科大学)、青木 一洋 (基礎生物学研究所)、河嵜 麻実 (新潟大学)、村田 等 (岡山大学)、福住 好恭 (新潟大学)、岡田 雅司 (山形大学)
概 要:MAPKファミリーに属するJNK (c-Jun N-terminus kinase)は、発見当初からアポトーシス誘発性のキナーゼと考えられ、転写因子のリン酸化で細胞死を引き起こすという単純なスキームが信じられてきた。ところが近年、JNKの生化学的な役割はそのような簡単なものでなく、各臓器の細胞で非常に多様であり、その基質の多様性と相俟って、細胞の生理的活動に必須であることが強く示唆されてきた。また病態においても細胞死とは直結しない形で、JNKの活性が関わることが多くのケースで見出されてきた。これらの事象でのJNKの意義はすべて、その古典的な概念からは逸脱しており、細胞の「生・老・病・死」の全事象を包括的にコントロールするJNKの姿を示している。本シンポジウムではJNKの関わる分子事象を新たな角度からとらえる若手を交えた研究者達に講演を依頼し、上流シグナル、細胞内の活性可視化、脳形成への生理的な寄与、さらに病態として神経変性、腎障害、がんにおけるJNKの役割を議論する。
1S08m
日 時:9月18日(水)9:00-11:00 会 場:第8会場(304)
ケミカルツールで切り開く生命科学研究
オーガナイザー:神谷 真子(東京大学)、田端 和仁(東京大学)
共催:文部科学省新学術研究領域 共鳴誘導で革新するバイオイメージング/分子夾雑の生命化学
講演者・概要▼
講演者:清中 茂樹 (京都大学)、萩原 伸也 (理化学研究所)、岩野 智 (理化学研究所)、浅沼 大祐 (東京大学)、田端 和仁 (東京大学)、神谷 真子 (東京大学)
概 要:生命現象の解析や病因の解明などにおいて、「生きている状態の生物試料」における生体分子の挙動や動態を観測・制御することは極めて重要であり、低分子化合物を用いた可視化や機能発現・制御などの化学的手法が果たす役割は益々大きくなってきている。また同時に、その使用法や適用範囲は多様化しており、化学・物理・生物などの異分野間のより強固な連携の必要性が高まっている。本シンポジウムでは、ケミカルバイオロジー・生物物理の分野において、独自のアプローチで生命現象の解明に取り組む新進気鋭の若手研究者が一堂に会し、ケミカルツールを用いた生命科学研究の最先端の技術や成果を紹介するとともに、その将来展望について議論する。
1S08a
日 時:9月18日(水)14:30-16:30 会 場:第8会場(304)
下村脩博士が変えた生命科学の世界
オーガナイザー:近江谷 克裕(産業技術総合研究所)、宮脇 敦史(理化学研究所)
講演者・概要▼
講演者:谷 知己 (ウッズホール海洋生物研究所)、小澤 岳昌(東京大学)、宮脇 敦史(理化学研究所)
概 要:2018年10月19日に逝去された下村脩博士は、オワンクラゲ(Aequorea victoria)から抽出した緑色蛍光タンパク質(GFP)の発見に対する功績が認められ、Dr. ChalfieやDr. Tsienらと共に2008年にノーベル化学賞を受賞された。今日のライフサイエンス研究分野において、GFPは不可欠なツールとして普及し、様々な生命現象の可視化に貢献している。下村博士は、GFPの発見だけでなく生物発光にも多大な功績を残され、現在もその功績や研究に対する姿勢は多くの研究者にミーム(meme)として生き続けている。下村先生のお人柄やご功績を振り返りながら、今後のライフサイエンスの未来を語る場としたい。
1S09m
日 時:9月18日(水)9:00-11:00 会 場:第9会場(315)
産学連携のボトルネック
オーガナイザー:髙子 徹(日本医療研究開発機構)、古矢 修一(岡山大学)
講演者・概要▼
講演者:酒井 敏行 (京都府立医科大学)、國澤 純 (医薬基盤・健康・栄養研究所)、嵯峨山 和美 (岡山大学)、荒森 一朗 (日本医療研究開発機構)、鈴木 忍 (京都大学)、藤江 昭彦 (日本医療研究開発機構)
概 要:医薬品開発の難度があがる中、革新的な医薬品の開発を目指す製薬企業にとってアカデミアの基礎研究で得られた成果(創薬標的や創薬技術)を自社の事業に取り込むことが益々重要となっており、産学連携への期待は大きい。産学連携の枠組みとしては、研究室レベルの連携からアカデミアと企業との包括的な連携、さらに最近ではオープンイノベーションの取組まで様々な形がある。企業にとっては創薬標的や創薬技術など「シーズ」と呼ばれるこれら成果物への早期のアクセスが可能となり、アカデミアにとっては実用化につながるための必要な試験、プロセスを学ぶ機会となる。本シンポジウムでは、産学官それぞれの立場で産学連携に関わってこられた方々に連携の内容を紹介していただくとともに、具体的な成果につなげる際にボトルネックとなっている問題、産学連携の推進を困難としている課題について共有し、その解決策についても議論したい。
1S09a
日 時:9月18日(水)14:30-16:30 会 場:第9会場(315)
次世代ビッグデータ研究の潮流
オーガナイザー:岡田 随象(大阪大学)、岩崎 渉(東京大学)
講演者・概要▼
講演者:岡田 随象 (大阪大学)、白石 友一 (がん研究センター研究所)、岩崎 渉 (東京大学)、秋山 雅人 (九州大学)、川上 英良 (理化学研究所)
概 要:誰かがビッグデータを作る時代から、誰もがビッグデータを使う時代へ。一昔前にはやったビッグデータという言葉、最近は少し聞き慣れてきた感があります。もしかしたらそれは、私達研究者にとって、より身近な存在となったからなのかもしれません。ビッグデータをどのように活用し、自らの研究テーマを加速させる力として使用できるかが、研究成果を決める重要な因子となっています。本シンポジウムでは、データ解析研究の最前線で活躍されている若手研究者に講演をお願いしています。最新のビッグデータを使い倒すとどのような風景が見えてくるのか、次世代ビッグデータ研究の潮流を感じて頂けたら幸いです。
1S10m
日 時:9月18日(水)9:00~11:00 会 場:第10会場(311+312)
広がりゆく糖質科学の世界
オーガナイザー:金川 基(神戸大学)、古川 潤一(北海道大学)
講演者・概要▼
講演者:金川 基 (神戸大学)、Myoung-Goo Kang (University of Texas / Sogang University)、大場 雄介 (北海道大学)、竹内 英之 (名古屋大学)、古川 潤一 (北海道大学)、成松 由規 (コペンハーゲン大学)
概 要:糖鎖は、核酸・タンパク質に次ぐ『第三の生命鎖』、あるいは、『細胞の顔』とも呼ばれるほど、生体における重要性は広く認識されている。核酸やタンパク質は普遍的な技術として解析法や合成法が確立され、その結果として飛躍的に生命科学の解明が進められてきた一方で、糖鎖については、その多様性や複雑な修飾様式、構造・機能解析における技術的困難さなどが研究の障壁として立ちはだかってきた。とはいえ、構造や修飾酵素が明らかになるにつれ、糖鎖の生物学的意義や疾患との関わりも解明され、画期的な研究手法や治療法も生まれている。最近では、糖鎖修飾酵素が全く別の機能を発揮する例や、糖鎖修飾によって本来とは異なる機能を発揮する分子なども同定され、糖質科学の新たな学際的広がりが目に見えてきている。本シンポジウムでは、糖質科学の挑戦によって道が拓かれつつある領域に注目し、網羅的解析法などの技術革新から糖鎖の生化学に基づいた新規治療法など、糖鎖研究を切り口にした生命医科学研究について議論し、糖質科学の世界への入り口は決して狭いものではなく、また、大いなる可能性を秘めていることを知っていただく場としたい。
1S10a
日 時:9月18日(水)14:30-16:30 会 場:第10会場(311+312)
シグナルを制御する糖鎖
オーガナイザー:灘中 里美(神戸薬科大学)、西原 祥子(創価大学)
講演者・概要▼
講演者:山本 一夫 (東京大学)、亀村 和生 (長浜バイオ大学)、水本 秀二 (名城大学)、渡辺 秀人 (愛知医科大学)、灘中 里美 (神戸薬科大学)、西原 祥子 (創価大学)
概 要:細胞表面に提示される糖鎖は、発生段階特異的に、また、組織特異的に発現が制御されており、細胞の置かれている状態を反映して変化する。このため、糖鎖は、癌などの各種疾病のマーカーや胚性幹細胞のマーカーとして用いられてきた。糖鎖の機能解明が進むにつれ、これら細胞表面や細胞内の糖鎖は単なるマーカーではなく、糖鎖自身がシグナルを発信したり、細胞外からのシグナル伝達を時空間特異的に制御していることがわかってきた。本シンポジウムでは、シグナル制御に直結する2種の糖鎖、グリコサミノグリカンとO-GlcNAc修飾を取り上げる。前者は、増殖因子、モルフォゲン、サイトカインの共受容体やシグナル分子として機能し、後者は、細胞内でリン酸化と競合してシグナル伝達を制御する。幹細胞、癌、遺伝性疾患、慢性疾患の各局面で働くこれらの糖鎖の作用メカニズムを議論し、糖鎖が制御するシグナルの現状を明らかにしたい。
1S11m
日 時:9月18日(水)9:00-11:00 会 場:第11会場(313+314)
新しい脂質コミュニケーション
オーガナイザー:山本 圭(徳島大学)、河野 望(東京大学)
講演者・概要▼
講演者:山本 圭 (徳島大学)、河野 望 (東京大学)、廣田 泰 (東京大学)、池田 和貴 (理化学研究所)、大石 由美子 (日本医科大学)、水津 太 (北海道大学)
概 要:脂質は、生体膜の構成成分やエネルギー源であり、細胞や個体の機能維持にとって必要不可欠なものである。リン脂質、脂肪酸、スフィンゴ脂質、糖脂質、中性脂肪などを含めると脂質は数多くの分子種をもち、その多様性は生体機能の恒常性維持に重要な要素である。近年、微量脂質の定量法が飛躍的に向上し、遺伝子欠損マウスの表現型解析から、脂質代謝の破綻は様々な病態との関連が明らかとなってきた。次世代の脂質研究の展開を考えた場合、これまでに蓄積された脂質研究の知見や分析技術を活用し、幅広い疾患において脂質分子の機能に着目した脂質コミュニケーションの解明をおこなうことが重要となる。本シンポジウムでは、新しい脂質機能の発見とその意義について最新の研究成果を紹介し、基礎研究から応用研究に向けた展開を討論したい。
1S11a
日 時:9月18日(水)14:30-16:30 会 場:第11会場(313+314)
コレステロールメタボライト研究の新展開:構造的・機能的多様性に迫る
オーガナイザー:山内 祥生(東京大学)、浦野 泰臣(同志社大学)
講演者・概要▼
講演者:Chang Ta-Yuan (ダートマス大学)、平林 義雄 (理化学研究所)、佐々木 崇 (東京大学)、浦野 泰臣 (同志社大学)、山内 祥生 (東京大学)
概 要:コレステロールは膜機能を制御する必須の脂質である。生体のコレステロール恒常性は厳密に調節されており、その破綻は様々な疾患で認められる。動物細胞においてコレステロールは分解されないが、エステル化や酸化、糖化等の修飾を受け、多様なメタボライトに変換される。これまでコレステロール自身の機能やコレステロール合成等を制御する精巧な分子機構について理解が深められてきた歴史がある一方、コレステロールメタボライトの産生制御や生理的・病理的機能は十分に理解されていない。近年、コレステロールメタボライトがアルツハイマー病やがん、感染、筋機能、代謝疾患などの病態に深く関与することが明らかにされてきている。本シンポジウムでは、多様なコレステロールメタボライト(コレステロールエステルや酸化ステロール、胆汁酸、糖化ステロール等)の多彩な生理機能や疾患との関連について最新の知見を紹介し、コレステロールメタボライトの謎に迫るべく議論を深めたい。
1S12m
日 時:9月18日(水)9:00-11:00 会 場:第12会場(411+412)
生存戦略としての休眠シグナル研究の最先端
オーガナイザー:田久保 圭誉(国立国際医療研究センター研究所)、山口 良文(北海道大学)
講演者・概要▼
講演者:小林 央 (国立国際医療研究センター研究所)、原田 浩 (京都大学)、藤森 俊彦 (基礎生物学研究所)、福山 征光 (東京大学)、山口 良文 (北海道大学)
概 要:生物は持てる機能を常に100%稼働しているわけではなく、周囲の環境に応じて柔軟に稼働率と稼働部位を調整しながら生命を維持している。特に多細胞生物は、細胞・組織・個体の持つ機能を一部低下、すなわち「休眠」させ、外因性・内因性ストレスに対応できる余地を確保することを生存戦略の柱としている。「受動的な節約現象」と認識されていた休眠であるが、近年環境刺激を感知・応答して休眠を制御する能動的な現象であることが明らかになった。休眠の誘導・維持・解除においては“休眠シグナル"とも呼べる分子機構を通じて、積極的な制御が実行されていることが知られるようになっている。本シンポジウムでは細胞レベル(幹細胞、がん細胞)や組織・個体レベル(線虫、マウス初期胚、ハムスター)の休眠研究者による、多彩な休眠現象の特徴と制御機構についての最新の知見を示し、休眠現象ごとの個別性と、各休眠現象に通底する共通性について議論する。
1S12a
日 時:9月18日(水)14:30-16:30 会 場:第12会場(411+412)
時空間オミクスから迫る生命現象の統合的理解と制御
オーガナイザー:島村 徹平(名古屋大学)、大澤 毅(東京大学)
講演者・概要▼
講演者:片岡 圭亮 (国立がんセンター)、新井田 厚司 (東京大学)、木戸屋 浩康 (大阪大学)、島村 徹平 (名古屋大学)、大澤 毅 (東京大学)、日野原 邦彦 (ダナ・ファーバー癌研究所(7月より名古屋大学所属予定))
概 要:生化学研究にパラダイムシフトを引き起こすためには、異分野で培われた叡智や新たな技術を推進力とした異分野融合研究が必須である。本講演では、データ駆動型生命科学を実践するウェット・ドライの両若手研究者が集い、時(発生、体内時計、進化)×空間(臓器、環境)×オミクスを駆使して、生命現象や疾患を俯瞰的に理解し制御するための新領域研究を紹介するとともに、若手研究者の新規参入のきっかけを提供する。
1S13m
日 時:9月18日(水)9:00-11:00 会 場:第13会場(413)
核骨格から考える核ダイナミクスの理解と操作
オーガナイザー:原田 昌彦(東北大学)、宮本 圭(近畿大学)
講演者・概要▼
講演者:グロッセ ロバート (マーバーグ大学)、ベントラ バーバラ (フライバーグ大学)、パーシパル ピアジョージオ (ニューヨーク大学アブダビ校)、小田 春佳 (東京工業大学)、原田 昌彦 (東北大学)、宮本 圭 (近畿大学)
概 要:細胞核の構造やダイナミクスはゲノム・クロマチン機能を制御し、発生・分化や老化・疾病などの高次生命機能に影響を与える。核構造やダイナミクスを制御する因子として、核アクチンやラミンなどの核骨格タンパク質が注目を集めており、これらの機能メカニズムの解析が最近急速に進んでいる。そこで本シンポジウムでは、核骨格タンパク質が核やクロマチンの構造やダイナミクスを制御する分子機構について、国内外の最新の研究を紹介する。また、核骨格タンパク質に結合するペプチドや光遺伝学ツールを利用した核ダイナミクスの操作ついても紹介する。これらの報告を通じ、核骨格タンパク質を起点とした細胞核の設計思想を理解し、高次生命機能への寄与についても論議したい。
1S13a
日 時:9月18日(水)14:30-16:30 会 場:第13会場(413)
新しいゲノムの姿とその維持機構のフレキシビリティ
オーガナイザー:古郡 麻子(大阪大学)、正井 久雄(東京都医学総合研究所)
講演者・概要▼
講演者:古郡 麻子 (大阪大学)、正井 久雄 (東京都医学総合研究所 ゲノム動態プロジェクト)、杉本 のぞみ (九州大学)、川上 広宣 (九州大学(2019年4月~山口東京理科大))、塩見 泰史 (兵庫県立大学 )、片山 勉 (九州大学)
概 要:近年のゲノム科学の発展により、ゲノムDNAは均質なものではなく種々の繰り返し配列やそれらによる特殊な高次構造の形成とその変動、また様々な化学修飾や蛋白質・RNAの結合などによる構造変化によって極めてバラエティに富むことが明らかになってきた。その様な動的な部分構造はゲノム上のランドマークとなりDNA複製や転写などに利用される一方、時としてゲノム脆弱性を導き細胞死や変異を招くリスクを内包する。そうした新しいゲノムの姿が明らかになるにつれ、生物の持つゲノム安定維持機構がこれらの多様性に柔軟に対応し、また巧みに生存に利用する仕組みの理解も深まりつつある。本シンポジウムではそうした多様な姿を持つゲノムを複製し維持継承するメカニズムについて、蛋白質一分子から細胞まで異なる視点で迫る最新の基礎研究を紹介する。がんゲノミクスなどゲノムの破綻が招く疾患研究を始めとした新たな分野との連携の場を提供したい。
1S14m
日 時:9月18日(水)9:00-11:00 会 場:第14会場(414+415)
慢性炎症と免疫のクロストーク ーゲノムから個体までー
オーガナイザー:神吉 康晴(東京大学)、井上 剛(東京大学)
講演者・概要▼
講演者:神吉 康晴 (東京大学)、井上 剛 (東京大学)、Sankar Ghosh (コロンビア大学)、Okusa Mark (ヴァージニア大学)、安部 力 (岐阜大学)
概 要:生体の恒常性維持とその破綻は様々な疾患を引き起こすが、これを理解するためには異分野で培われた技術の融合研究が必須である。例えば、神経疾患、腎疾患、代謝性疾患、血管系疾患などの慢性疾患において、それぞれの臓器の担当細胞のみならず、免疫系細胞との相互作用という視点からの理解が急速に進んでいるが、その複雑なクロストークの全貌解明への挑戦は始まったばかりである。本セッションでは、こうした‘慢性炎症ニッチ'とも呼べる微小環境に、階層性(ゲノム、細胞、組織、個体)と新技術(ゲノム編集、オプトジェネティクス、次世代シークエンサー、シングルセル解析)を武器に取り組む、国内外の各領域の一線で活躍する研究者が集まり、臓器の枠を超えたコミュニティの形成を試みる。臨床研究と基礎研究、ウェット研究とドライ研究のトランスレーションを長年に渡り行ってきた研究者による慢性炎症の俯瞰的研究を紹介すると共に、本領域に参入する新たな若手研究者との議論の場としたい。
1S14a
日 時:9月18日(水)14:30-16:30 会 場:第14会場(414+415)
GPCRシグナル伝達機構解明の新たな潮流
オーガナイザー:井上 飛鳥(東北大学)、志甫谷 渉(東京大学)
講演者・概要▼
講演者:井上 飛鳥 (東北大学)、加藤 英明 (スタンフォード大学)、志甫谷 渉 (東京大学)、寿野 良二 (京都大学)、柳川 正隆 (理化学研究所)
概 要:Gタンパク質共役型受容体(GPCR)はヒトゲノムに約800種類存在し、様々な生理的・病理的現象に関与する。創薬においても最も重要な標的群であり、既存薬の約3分の1がGPCRに作用する。GPCRは複数のエフェクタータンパク質に作用し、細胞応答を制御する。近年、一方の下流シグナルのみを誘導するバイアスリガンドが着目されており、薬効を維持したまま副作用を抑えた創薬戦略が期待されている。これまで下流シグナルを測定することによるアッセイ手法でGPCR機能が解析されていたが、GPCRのシグナル選択性を生み出す分子機構は未だ不明な点が多い。今回のシンポジウムでは新しい技術を用いて、GPCRの複雑な制御機構に取り組む若手研究者の最新の成果を本シンポジウムで紹介する。
1S15m
日 時:9月18日(水)9:00-11:00 会 場:第15会場(416+417)
多様な生物学的階層における生命現象理解のための戦略
オーガナイザー:神谷 厚輝(群馬大学)、三浦 重徳(京都大学)
講演者・概要▼
講演者:神谷 厚輝 (群馬大学)、三浦 重徳 (京都大学)、尾上 弘晃 (慶應義塾大学)、車 兪澈 (東京工業大学)、高橋 康史 (金沢大学)
概 要:近年、工学や生物学分野における技術革新により生体分子、細胞、組織の機能の一部を再現することで生命現象を理解する試みがなされている。生体分子、細胞、組織といった多様な生物学的階層で生じる生命現象の素過程の理解のためには、さらなる再構成技術や計測技術が求められると考える。例えば、マイクロデバイスの利用によって、トップダウン手法により生体組織機能の再現や非侵襲での細胞環境測定の革新的な技術が開発されてきた。また、人工細胞膜リポソームによる真核細胞の細胞膜組成の再現や多段階の酵素反応の再現が可能になってきた。本シンポジウムでは、マイクロデバイスや人工細胞モデル等のアプローチにより、生体分子、細胞、組織における生命現象の理解や測定に向けて研究を行っている様々な分野の研究者の方々をお招きし、最新のご研究について発表していただき、これらの技術の利用によって生命現象理解への新展開について議論したい。
1S15a
日 時:9月18日(水)14:30-16:30 会 場:第15会場(416+417)
多様な生命現象を司る微小管-中心体集合システム
オーガナイザー:北川 大樹(東京大学)、島本 勇太(国立遺伝学研究所)
講演者・概要▼
講演者:杉本 亜砂子 (東北大学)、五島 剛太 (名古屋大学)、佐藤 政充 (早稲田大学)、鳥澤 嵩征 (国立遺伝学研究所)
概 要:微小管はダイナミックに重合・脱重合する細胞骨格であり、単細胞生物から脊椎動物まで高度に保存されている。動物細胞においては、中心体が微小管形成中心として機能し、細胞分裂、細胞内輸送、形態の制御を行うことで、多様な生命現象に重要な役割を果たし、密接に関連している。減数分裂や高等植物においては、中心体非依存的な紡錘体のアッセンブリー機構が知られており、様々な生物種や生理的局面において、多様な微小管集合システムを進化的に発達させることで、柔軟に適応してきたと捉えることができる。このシステムの破綻は、染色体分配異常を起因とする細胞がん化や不妊症など様々な疾患を引き起こすことが知られている。本シンポジウムでは、微小管ー中心体集合システムの多様性と共通性を、様々なモデル系を用いた研究から浮き彫りにする。さらに、染色体動態を制御する紡錘体形成をメカニクスと分子反応ケミストリーの観点から、構造学的にも議論し、理解を深めたい。
1S16m
日 時:9月18日(水)9:00-11:00 会 場:第16会場(418)
「ネオ・セルフ」:T細胞/B細胞を活性化する新しい自己
オーガナイザー:松本 満(徳島大学)、横須賀 忠(東京医科大学)
共催:文部科学省新学術研究領域 ネオ・セルフの生成・機能・構造
講演者・概要▼
講演者:松本 満 (徳島大学)、横須賀 忠 (東京医科大学)、横山 茂之 (理化学研究所)、末永 忠広 (大阪大学)、宇高 恵子 (高知大学)
概 要:新学術領域「ネオ・セルフ」では、自己の組織に対する免疫応答(自己免疫)やアレルギーが発生するメカニズムの解明に取り組んでいる。すなわち、明らかな免疫応答を誘導しないと考えられてきた自己の抗原を「完璧な」セルフとは異なるネオ・セルフと捉えることにより、長らく不明であった自己免疫疾患やアレルギーの病態を説明することが可能である。また、こうした視点を取り入れて、腫瘍細胞に対する免疫応答を効果的に誘導するための基盤作りにも取り組む。本領域の目標を達成するために、構造生物学、イメージング、1細胞解析、ゲノミクス等の先端的な技術を有する研究者が集い、従来のセルフ、ノン・セルフの定義では理解が困難であった免疫認識機構に「ネオ・セルフ」という新たな概念を導入する。本シンポジウムでは「ネオ・セルフ」の実像の解明に取り組む計画班員の成果について議論する。
1S16a
日 時:9月18日(水)14:30~16:30 会 場:第16会場(418)
病原体と宿主が交差するオルガネラ・ゾーン
オーガナイザー:森田 英嗣(弘前大学)、齊藤 達哉(大阪大学)
講演者・概要▼
講演者:森田 英嗣 (弘前大学)、有井 潤 (東京大学)、向井 康治朗 (東北大学)、小柴 琢己 (九州大学)、齋藤 伸一郎 (東京大学)、齊藤 達哉 (大阪大学)
概 要:病原体と宿主のオルガネラの間には密接な関係が存在する。体内に侵入したウイルスなどの病原体を排除する自然免疫応答においては、ミトコンドリアやエンドソーム・リソソームなどの種々のオルガネラに局在する分子群が、病原体の感知からシグナル伝達に至る過程で重要な役割を果たしている。また、ウイルスなどの病原体の複製においても、小胞体や核などのオルガネラが病原体の構成因子発現や粒子形成などに至る過程で重要な役割を果たしている。本シンポジウムでは、オルガネラの観点から病原体の排除や複製のメカニズム解明に取り組んでいる研究者を講師として招き、最新の知見を紹介して頂く。特に、近年注目されつつある、オルガネラに存在する特別な機能を担う区画(ゾーン)に焦点を当て、病原体の排除や複製に関わる新たな分子機構や時空間制御について議論する場としたい。
1S17m
日 時:9月18日(水)9:00-11:00 会 場:第17会場(419)
脳内インフラストラクチャー: 脳細胞社会の恒常性維持機構と物流システムを担う機能的構造体
オーガナイザー:斉藤 貴志(理化学研究所)、村松 里衣子(国立精神・神経医療研究センター)
講演者・概要▼
講演者:山中 宏二 (名古屋大学)、木山 博資 (名古屋大学)、樋口 真人 (量子研機構・放射線医学総合研究所)、小山 隆太 (東京大学)、村松 里衣子 (国立精神・神経医療研究センター)、林 悠(筑波大学)、高鳥 翔 (東京大学)
概 要:近年、グリアリンパ管とグリアネットワークの発見を起点に、「脳内インフラストラクチャー」の概念が構築されはじめている。これらは、脳細胞社会の恒常性維持のための“インフラ"、すなわち、栄養等を供給する上水道役の脳血管系、代謝産物・老廃物を排出する下水道役のグリアリンパ系、および構成要員であるグリア細胞系等からなる機能的構造体という新概念として捉えられる。さらに、「脳内インフラ」の健全性により、脳の自浄作用が作動し、脳内で生じる不要物の蓄積や神経変性を回避できるという研究も展開しつつある。一方、脳内インフラの実体に関しては、物質輸送の経路や動力源、異物認識を担う細胞等に関して不明な点が多い。本シンポジウムでは、「脳内インフラ」という新たな概念から脳の恒常性維持機構を理解する試みを紹介し、今後の展開に向け活発な議論を目指す。
1S17a
日 時:9月18日(水)14:30-16:30 会 場:第17会場(419)
神経機能発現機構の最前線:神経単位の遺伝子発現制御とタンパク質の階層的かつ冗長的機能を探る
オーガナイザー:鈴木 利治(北海道大学)、荒木 陽一(ジョンズホプキンス大学)
講演者・概要▼
講演者:多留 偉功 (北海道大学)、荒木 陽一 (ジョンズホプキンス大学)、齋藤 有紀 (ロックフェラー大学)、佐野 良威 (東京理科大学)
概 要:脳は多種多様な神経細胞の独自ではあるが連携した働きによって機能している。異なるタイプの神経が独自の遺伝子発現制御を行い、生合成されたRNAやタンパク質が正しく時空間的に機能する事が神経細胞による脳高次機能の発現を支えている。個々の細胞群における遺伝子産物の機能や相互作用を解析する新しい手法の開発は、タンパク質の微細局在を解析する手法の発展と共に、神経シナプス等の機能を生化学的に解析するための進歩をもたらした。これら新規菜手法を取り入れた最前線の研究に、伝統的な生化学、分子生物学、細胞生物学的な手法を組み合わせることで、シナプス伝達の制御機構等の神経機能を明らかにする先端的研究を紹介し、その破綻が様々な神経・精神疾患を引き起こす仕組みを考察したい。分子から個体まで様々なレベルで活躍している国内外の若手シンポジストを中心に紹介し、神経機能の解明に果たす生化学的取り組みの重要性を共感したい。
1S18m
日 時:9月18日(水)9:00-11:00 会 場:第18会場(511+512)
光合成と呼吸をプロトン駆動力の視点で理解する
オーガナイザー:久堀 徹(東京工業大学)、魚住 信之(東北大学)
共催:文部科学省新学術研究領域 新光合成:光エネルギー変換システムの再最適化
講演者・概要▼
講演者:鹿内 利治 (京都大学)、魚住 信之 (東北大学)、三芳 秀人 (京都大学)、田中 秀明 (大阪大学)、村田 武士 (千葉大学)、井上 圭一 (東京大学)
概 要:細胞の生存に必要なATPなどの生体エネルギーの源は,生体膜に形成される電気化学エネルギーである.その実体は,1978年にノーベル化学賞を受賞したP. Mitchellが化学浸透説として提唱した生体膜を介したプロトンの電気化学的ポテンシャル差である.これを用いたエネルギー変換反応は,光合成、呼吸など様々なエネルギー獲得に利用されている。本シンポジウムでは,生体膜を介したプロトンの電気化学的ポテンシャル差形成に関わるプロトン輸送タンパク質の構造、プロトン輸送機構、その制御に関する最新の話題を提供する.過剰に蓄積したエネルギーを安全に消去する機構,膜電位成分を司る輸送体の同定と機能,電子伝達系やプロトン輸送を行う様々なタンパク質のプロトン通路の分子構造その分子機構について考察するとともに,未解決の課題について議論を深める.様々なプロトン輸送タンパク質に関して、異なった研究法による解析によって得られる多様な知見に基づいて,光合成と呼吸のプロトン駆動力の本質の解剖を試みる.
1S18a
日 時:9月18日(水)14:30-16:30 会 場:第18会場(511+512)
研究倫理とサイエンスコミュニケーション
オーガナイザー:野口 範子(同志社大学)、渡辺 亮(京都大学)
講演者・概要▼
講演者:石浦 章一 (同志社大学)、榎本 英介 (一般社団法人科学・政策と社会研究室)、須田 桃子 (毎日新聞東京本社)、佐藤 優、渡辺 亮 (京都大学)
概 要:サイエンスコミュニケーションは、科学の専門家が一般の人に科学をわかりやすく伝えるだけではなく、科学リテラシーを社会の隅々まで行き渡らせるために重要な役割を担い、社会の中に科学をきちんと位置づけ、研究倫理の徹底に果たす役割も大きい。科学技術の進歩は著しく、研究資金やポジションの獲得競争が益々厳しくなる中、研究倫理が置き去りにされることが危惧される。サイエンスコミュニケーションが十分機能するためには、それを担う人材を理系文系の枠を超えて教育するシステムを構築する必要がある。本シンポジウムでは、サイエンスコミュニケーター養成を主宰する立場、生命科学の研究現場で研究倫理に向き合う研究者とそれを取材する立場、そして総合知のひとつとしてサイエンスコミュニケーションを捉える立場が会して議論を展開する。
第2日目(9月19日)
2S02m
日 時:9月19日(木)9:00~11:00 会 場:第2会場(503)
がんのバイオマーカー探索と診断法の社会実装
オーガナイザー:本田 一文(国立がん研究センター)、浦野 泰照(東京大学)
講演者・概要▼
講演者:朝長 毅 (国立研究開発法人 医薬基盤・健康・栄養研究所)、落谷 孝広 (国立がん研究センター)、浦野 泰照 (東京大学)、本田 一文 (国立がん研究センター)
概 要:がんの早期発見は、特に難治性がんにおいて、患者の良好な予後を実現する最も重要な要因の一つであり、これを実現する技術開発は焦眉の急である。一方で、多くのがんはその性質に大きなheterogeneityが見られることが知られており、高い感度・特異度でがんを早期に発見するためには新たな有用なバイオマーカーの発見が必須であり、これはがんの精密個別化医療(Precision and Personalized Medicine)実現の観点からも極めて重要である。そこで本シンポジウムでは、最新オミクス技術、画像化技術、情報解析技術を活用して、如何に臨床サンプルから有用なバイオマーカーを発見・策定するかという基礎科学的な側面と、そのバイオマーカーを活用した技術を如何に社会実装して医療技術の具体的な向上を図るかに関する社会的な側面に関して、両者を精力的に行っている国内の代表的な研究者に登壇してもらい、技術開発の具体例を挙げながら活発に議論する。
2S02a
日 時:9月19日(木)14:30-16:30 会 場:第2会場(503)
「ミトコンドリア生化学」が切り開く新たな疾患病態
オーガナイザー:井上 聡(東京都健康長寿医療センター研究所)、田中 知明(千葉大学)
講演者・概要▼
講演者:後藤 典子 (金沢大学)、北見 俊守 (理化学研究所)、岡崎 康司 (順天堂大学)、池田 和博 (埼玉医科大学)、横山 真隆 (千葉大学)
概 要:ミトコンドリアは約1200種にも及ぶタンパクが複雑な構造体を構成し、ダイナミックに変化することで、生体に必要なエネルギーを産み出すと同時に、老化やがん化シグナル・代謝環境変化に応じて多くの細胞内代謝経路を統括する。本シンポジウムでは、「ミトコンドリア生化学」をテーマに、geneticsのみならず、インタラクトーム解析・SWATH-MS解析など新たなアプローチを通じて、疾患病態との関わりを切り開いてきた先駆的研究を取り上げる。ミトコンドリアに関するマルチオミックスや生化学的解析の技術的視点と、がん・老化・代謝性疾患の分子病態の理解の観点から、ミトコンドリアワールドを紐解こうとする研究をご紹介しながら、これからのミトコンドリア研究が切り開く新たな可能性について、皆さんと議論を深めたい。
2S03m
日 時:9月19日(木)9:00-11:00 会 場:第3会場(501)
タンパク質の運命を制御する生体システムと疾病のフロンティア
オーガナイザー:李 映昊(韓国基礎科学支援研究所)、奥村 正樹(東北大学)
講演者・概要▼
講演者:斉尾 智英 (北海道大学)、野村 尚生(北海道大学)、李 映昊 (韓国基礎科学支援研究所)、奥村 正樹 (東北大学)、沖米 田司 (関西学院大学)、蜷川 暁 (京都大学)
概 要:タンパク質の一生はフォールディング、機能発現、凝集形成、分解除去と多様性に富んだドラマである。細胞はタンパク質の一生を支える仕組み、すなわち小胞体ストレス応答、シャペロンによる補助、輸送、オートファジー、分解など複雑であるが精巧な機構を備えている。これらシステムの異常は神経変性疾患等の重篤な疾患と関わっており、タンパク質恒常性維持の理解は創薬の点でも重要な課題である。本シンポジウムでは、タンパク質の一生に焦点を当て、タンパク質科学や構造生物学を中心とした生物物理学、そして細胞生物学と薬学といった様々な分野の演者を交え、タンパク質の運命を制御する生体システムとその破綻から引き起こされる疾病の最前線の研究について、議論する。
2S03a
日 時:9月19日(木)14:30-16:30 会 場:第3会場(501)
分子シャペロンの新機軸
オーガナイザー:伊藤 英晃(秋田大学)、溝端 知宏(鳥取大学)
講演者・概要▼
講演者:溝端 知宏 (鳥取大学)、町田 幸大 (兵庫県立大学)、渡辺 洋平 (甲南大学)、座古 保 (愛媛大学)、伊藤 英晃 (秋田大学)
概 要:分子シャペロンの構造や生理機能に関しては,タンパク質のフォールディングを中心に研究が進められているが,統合的な理解には至っていない。本シンポジウムでは,酸変性に誘発される大腸菌ペリプラズムHdeAの分子シャペロン機能と可逆線維化に関する知見,再構成型ヒト翻訳/フォールディング共役システムを用いたタンパク質凝集解析システムの開発と応用,熱ショックタンパク質104(Hsp104)の細菌相同体であるClpBのシャペロン活性に不可欠なサブユニット間シグナル伝達機構,真核生物プレフォルディンの役割とメカニズムに関する最近の知見,及び哺乳類HSP60の分子シャトルと分子シャペロンしての新生理機能を紹介する。原核生物から哺乳類に至るまで,生命機能の根幹を担う分子シャペロンに関する最新の知見を紹介する。
2S04m
日 時:9月19日(木)9:00-11:00 会 場:第4会場(502)
ミトコンドリア動態とその破綻から読み解く生物の普遍性と多様性
オーガナイザー:岡本 浩二(大阪大学)、小谷野 史香(東京都医学総合研究所)
講演者・概要▼
講演者:小谷野 史香 (東京都医学総合研究所)、小笠原 絵美 (久留米大学)、赤羽 しおり (立教大学)、法月 拓也 (基礎生物学研究所)、竹中 瑞樹 (京都大学)、蒋 輝 (北京生命科学研究所)
概 要:ミトコンドリアは細胞内で多彩な機能を有し、その品質と動態は細胞のみならず個体の恒常性にも直結する。また、ミトコンドリアは独自のゲノムと転写・翻訳のマシナリーを備えもつ性質を特徴とする一方で、その破綻はオルガネラとしての機能不全をもたらす。最近、ミトコンドリアの動態制御の異常によって引き起こされる病態研究も精力的に進められている。さらに、ミトコンドリアの融合・分裂、および他のオルガネラとの連携を司る分子機構は、細胞内環境に応答してダイナミックに制御されていることも明らかになってきた。本シンポジウムでは、酵母、植物、哺乳類モデルを活用した幅広い分野において、若手研究者が取り組む先端的なミトコンドリア研究から見えてきた生物の普遍性と多様性を紹介し、ミトコンドリアの驚くべき実体について理解を深めたい。
2S04a
日 時:9月19日(木)14:30-16:30 会 場:第4会場(502)
細胞の上皮性を決定・維持する多面的な分子機構
オーガナイザー:深見 希代子(東京薬科大学)、月田 早智子(大阪大学)
講演者・概要▼
講演者:藤田 恭之 (北海道大学)、森本 充 (理化学研究所)、南木 康作 (慶應義塾大学)、小西 聡史 (大阪大学)、中村 由和 (東京薬科大学)
概 要:正常な上皮組織の形成には上皮細胞の増殖、分化、接着などが秩序正しく行われることが不可欠であり、その乱れは浸潤癌やアトピー性皮膚炎をはじめとした様々な疾患の発症、悪化と密接に関連する。そのため、上皮細胞の正常な性質(上皮性)の決定、維持機構の詳細な理解はこれらの疾患の予防や克服において重要である。また、上皮組織では組織中に生じた異常細胞が正常な上皮細胞により排除される仕組みが存在しており、この仕組みは正常な上皮組織の維持に加え、癌の抑制や正常な組織発生においても重要な役割を果たしている。本シンポジウムでは、細胞間接着、細胞膜脂質をはじめとした多様な視点から上皮性を理解することを目指すともに、正常な上皮細胞による異常細胞の排除機構、および、分化機構についての最新の知見も取り上げる。
2S05m
日 時:9月19日(木)9:00-11:00 会 場:第5会場(301)
細胞死による細胞膜恒常性維持の破綻
オーガナイザー:中野 裕康(東邦大学)、鈴木 淳(京都大学)
講演者・概要▼
講演者:遠山 祐典 (シンガポール国立大学)、鈴木 淳 (京都大学)、田中 正人 (東京薬科大学)、三浦 正幸 (東京大学)、中野 裕康 (東邦大学)
概 要:細胞死を誘導する様々な刺激は、細胞膜リン脂質の非対称性の破綻、細胞膜リン脂質の過酸化、細胞膜障害性タンパク質の活性化を通して、最終的に細胞膜の恒常性を破綻させる。このメカニズムを明らかにするためには、生理的あるいは病理的な状況において細胞膜の恒常性がどのようにして保たれているのかを理解することが重要である。また死細胞と周辺に存在する生細胞との細胞膜を介した相互作用も組織の恒常性を維持するためには重要であり、ある状況においては死に行く細胞に隣接する正常上皮細胞が死に行く細胞を排除する現象も知られている。
本シンポジウムでは、細胞死がどのようなメカニズムで細胞膜の恒常性を破綻させるのか、また正常上皮細胞がどのようにして死に陥った上皮細胞を排除するのかについての我々の知見を紹介したい。これらの結果をもとにどのようにして細胞膜の恒常性が保たれているかについて討論したい。
2S05a
日 時:9月19日(木)14:30-16:30 会 場:第5会場(301)
日本医学会連合 加盟学会連携フォーラム 神経科学を支えるチャネルの生化学
オーガナイザー:富田 進(イエール大学)、富田 泰輔(東京大学)
共催:日本認知症学会
講演者・概要▼
講演者:富田 進 (イエール大学)、富田 泰輔 (東京大学)、安田 涼平 (マックスプランクフロリダ研究所)、深田 正紀 (生理学研究所)
概 要:脳は、数千億個の神経細胞が機能的に接続された回路を構築してその高次機能を担っている。個々の神経細胞は膜電位を変化させることにより神経細胞上あるいは神経細胞間のシグナル伝達を行い、神経回路の素子として機能している。イオンチャネルは膜電位の変化を神経活動として変換する重要なシグナル分子であり、その局在や活性の動的変化は記憶や学習に寄与している。また、イオンチャネルの異常はてんかんや統合失調症、精神疾患の原因となることが知られており、チャネロパチーと呼ばれている。したがって各チャネルの細胞内局在や発現量の制御機構は、脳機能を担う重要なメカニズムである。これまでのチャネルの研究は、主に電気生理学的手法を用いておこなわれてきたが、チャネルの分子レベルでの生化学的変化については不明な点も多い。本シンポジウムにおいては、神経活動を支えるチャネルおよび関連分子、それらの動的変化、そして疾患発症に関わる「チャネル生化学」の最新の知見を紹介したい。
2S06m
日 時:9月19日(木)9:00-11:00 会 場:第6会場(302)
構造生物学から観た寄生適応の分子戦略
オーガナイザー:野崎 智義(東京大学)、稲岡 ダニエル健(長崎大学)
講演者・概要▼
講演者:志波 智夫 (京都工芸繊維大学)、中谷 義雄 (オタゴ大学)、新谷 泰範 (大阪大学)、北所 健悟 (京都工芸繊維大学)、城戸 康年 (大阪市立大学)、アリフ ヌルカント (東京大学)、稲岡 ダニエル健 (長崎大学)
概 要:寄生を行う生物は食、住、ある時は衣もすべて宿主に依存して生活する。そして、巧みな生物戦略によって宿主のもつ生体防御機構から逃れ、またその特殊な宿主内の環境に適応するための代謝経路を発達させて増殖する。このような環境適応現象の研究は癌や感染症の克服といった重要な課題に加え、基礎生物学の分野に新しい概念を与え、生物間相互作用の観点から生物の進化や多様性の領域において多くの革新的な成果が生まれている。たとえば、酸素が存在するにも関わらず解糖経路のみで癌細胞の生存を可能にする「ワーブルグ効果」やトリパノソーマのミトコンドリアDNAにおける「RNA編集」(RNA editing)は多くの知るところである。本シンポジウムでは特に環境適応に重要な役割を担う中央代謝に注目し、構造生物学的なアプローチから国際的レベルの研究を進めている若手研究者の成果を中心に紹介したい。
2S06a
日 時:9月19日(木)14:30-16:30 会 場:第6会場(302)
マクロファージ研究のカッティングエッジ: メディカルイノベーションへの橋渡しを目指して
オーガナイザー:的崎 尚(神戸大学)、熊ノ郷 淳(大阪大学)
講演者・概要▼
講演者:的崎 尚 (神戸大学)、熊ノ郷 淳 (大阪大学)、華山 力成 (金沢大学)、菅波 孝祥 (名古屋大学)、佐藤 荘 (大阪大学)
概 要:近年、マクロファージの発生メカニズムや機能、さらには疾患への関与という点で次々に新たな知見が得られている。さらに、それらマクロファージの機能制御において、どのような新規分子が関わっているかも明らかにされ、新しい疾患治療薬の標的としても注目を集めている。そこで本シンポジウムでは、これら最近明らかにされつつあるマクロファージの新規機能や制御機構の中から、血液細胞の寿命制御、神経ガイダンス因子によるマクロファージの免疫・代謝制御、エクソソームを介した自己炎症の制御、脂肪組織制御、さらに線維化などに関わる疾患特異的新規マクロファージの発見などを取り上げ、マクロファージ研究の最前線を紹介いただく。
2S07m
日 時:9月19日(木)9:00-11:00 会 場:第7会場(303)
数理・情報科学を活用したシグナル伝達と疾患研究の最前線
オーガナイザー:武川 睦寛(東京大学)、井上 純一郎(東京大学)
共催:文部科学省新学術領域研究 数理解析に基づく生体シグナル伝達システムの統合的理解
講演者・概要▼
講演者:井上 純一郎 (東京大学)、澤崎 達也 (愛媛大学)、鈴木 貴 (大阪大学)、池ノ内 順一 (九州大学)、上野 匡 (東京大学)、渡部 昌 (北海道大学)、武川 睦寛 (東京大学)
概 要:生命活動の根幹を成す生体のシグナル伝達は、多数の分子や要因が関与する複雑な高次非線形反応であり、この多様かつ動的な反応様式こそが生命機能制御の根源的メカニズムであることが明らかにされてきた。昨今の生体分子計測技術(オミクス解析や分子イメージング技術など)の進歩によって、シグナル伝達ネットワークやその時空間動態に関する網羅的かつ詳細なデータを取得することが可能となったが、これら生体応答に関する膨大な情報を統合して細胞や人体をシステムとして理解し、さらに、その制御異常が引き起こす癌や自己免疫疾患などの病因・病態を解明するには、従来の生化学的アプローチのみでは不十分であり、近年特に発展の著しい数理科学や情報科学の解析手法を導入する必要がある。本シンポジウムでは、シグナル伝達システムの制御とその破綻がもたらす疾患発症機構に関する最新の知見を紹介するとともに、実験研究と数理・情報科学による理論研究を融合した新たな生命医科学研究の現状と展望について議論したい。
2S07a
日 時:9月19日(木)14:30-16:30 会 場:第7会場(303)
浸透圧ストレスシグナリングの最前線
オーガナイザー:名黒 功(東京大学 )、舘林 和夫(東京大学)
講演者・概要▼
講演者:舘林 和夫 (東京大学)、高橋 史憲 (理化学研究所)、名黒 功 (東京大学)、吉種 光 (東京大学)、檜山 武史 (岡山大学)
概 要:脂質二重膜で包まれた細胞の内外の溶液の差によって、生物には浸透圧という物理量が常に働いている。浸透圧は乾燥や脱水、イオンなど溶質の濃度変化で容易に変化するため、あらゆる生物はこの浸透圧という原始的で身近な環境情報を感知し応答するシステムを発達させている。しかし、特定の物質的存在では表現されない浸透圧がどのような分子メカニズムで細胞に感知・情報伝達されるかについて未だ多くの謎が残されている。また、脊椎生物では体内局所の浸透圧を手掛かりに免疫細胞が活性化するなど、生物による浸透圧環境の能動的な利用も近年注目され始めている。
本シンポジウムでは、酵母、植物、動物それぞれを題材に、近年明らかになった浸透圧に対する感知と応答のメカニズムを取り上げる。特に、分子レベルから個体の恒常性維持に必要な細胞間の情報伝達に至るまで異種間のメカニズムを議論し、浸透圧環境が引き起こす多彩な生理現象の起源に迫りたい。
2S08m
日 時:9月19日(木)9:00-11:00 会 場:第8会場(304)
メカノバイオロジー研究の新展開 ―“力"による生命現象制御の理解深化に向けて―
オーガナイザー:原 雄二(京都大学)、林 久美子(東北大学)
講演者・概要▼
講演者:林 久美子 (東北大学)、辻田 和也 (神戸大学)、杉村 薫 (京都大学)、福原 茂朋 (日本医科大学)、日比野 浩 (新潟大学)、原 雄二 (京都大学)
概 要:力(ちから)およびその感知機構は、細胞内分子の挙動、細胞分化・増殖などの細胞機能、さらに器官形成や感覚感知などの多様な生理機能に関わることが明らかになりつつある。また力感知に関わる機構の破綻は、難聴や血管疾患、癌の転移をはじめ様々な病態に関与することからも、メカノバイオロジー研究の重要性が示唆されている。一方で、その複雑かつ多様さゆえに、同分野に関する統合的な理解は未だ進んでいない。本シンポジウムでは、生化学をはじめ、生物物理学、細胞生物学、医学を専門とする研究者による最新の話題提供を通じ、メカノバイオロジーを基軸とした、分子・細胞・生体レベルでの生命現象の理解深化を目指す。
2S08a
日 時:9月19日(木)14:30-16:30 会 場:第8会場(304)
イメージングと再構築による生体膜ダイナミクスの理解:変形と融合と輸送と切断
オーガナイザー:井上 尊生(ジョンズホプキンス大学)、末次 志郎(奈良先端科学技術大学院大学)
講演者・概要▼
講演者:伴 匡人(久留米大学)、佐藤 健(東京大学)、三間 穣治(大阪大学)、西村 珠子(奈良先端科学技術大学院大学)、井上 尊生(ジョンズホプキンス大学)
概 要:脂質を主要素とする生体膜は、細胞内外を隔離する静的な防御壁である以上に、様々な生理機能を触媒する動的な場として機能し、その役割は細胞内輸送、細胞遊走、オルガネラ分裂、ウイルス感染など多岐にわたる。しかし、生体膜動態の分子機構の多くは未解明である。その最たる理由は、脂質の持つ特異な化学的性質と、脂質が遺伝子の直接的産物でないことから、従来の生化学、遺伝学での解析が難しいことにある。また、細胞を用いた実験系は生理的環境を反映できる反面、内在性分子の寄与が無視できず、一元的な法則を得ることが難しい。こうした制限を克服する実験系がセルフリーであり、最先端技術の融合が生体膜動態の再構築も可能にした。本シンポジウムでは、再構築系を駆使して生物学的ブレイクスルーを牽引してきた方々に、特に切断、変形、輸送、融合の四つの焦点から最新の知見を共有していただく。再構築系の明快で美しい映像もお楽しみいただきたい。
2S09m
日 時:9月19日(木)9:00-11:00 会 場:第9会場(315)
新たなバイオロジーを開拓するプロテインホスファターゼ研究
オーガナイザー:武田 弘資(長崎大学)、大浜 剛(山口大学)
講演者・概要▼
講演者:神吉 智丈 (新潟大学)、村田 陽二 (神戸大学)、山形 敦史 (東京大学)、渡邊 謙吾 (東京大学)、大浜 剛 (山口大学)、武田 弘資 (長崎大学)
概 要:多彩な生命現象の制御において重要な役割を担うタンパク質リン酸化は、キナーゼとホスファターゼによって精緻に調節されているため、その調節機構の全貌を明らかにするためにはキナーゼ、ホスファターゼの両面からのアプローチが必要である。しかし、キナーゼ側に比べてホスファターゼ側への理解が遅れを取ってきた感は否めない。よってホスファターゼ研究は、既知のリン酸化シグナルのより統合的な理解への重要な一歩である。一方で、例えば定常的にリン酸化されているタンパク質を脱リン酸化で制御するような機構に関しては、ホスファターゼ側からのアプローチがなければ解明することはできない。本シンポジウムでは、そのようなホスファターゼ側からの新たなアプローチのいくつかを取り上げ、キナーゼ研究では見逃されてきたシグナル伝達機構や、それによって制御される新たなバイオロジーについて議論する場を提供したい。
2S09a
日 時:9月19日(木)14:30-16:30 会 場:第9会場(315)
産学連携創薬シンポジウム
オーガナイザー:岸川 勝哉(小野薬品工業㈱・東北大学)、青木 淳賢(東北大学)
講演者・概要▼
講演者:宍戸 貴雄 (塩野義製薬㈱)、松井 順二 (エーザイ㈱)、五十嵐 浩二 (東ソー㈱)、高井 信治 (小野薬品工業㈱)
概 要:創薬開発には生化学的手法が必須です。本産学連携シンポジウムでは、近年、本邦を中心に開発された医薬品開発に関して、現場でリードされた研究者に参集していただき、生化学の立場からお話をいただく予定です。
2S10m
日 時:9月19日(木)9:00-11:00 会 場:第10会場(311+312)
エクソソームの糖質科学
オーガナイザー:舘野 浩章(国立研究開発法人 産業技術総合研究所)、木塚 康彦(岐阜大学)
講演者・概要▼
講演者:鈴木 健一 (岐阜大学)、下田 麻子(京都大学)、瀬尾 尚宏 (三重大学)、花島 慎弥 (大阪大学)、原田 陽一郎 (鹿児島大学)、舘野 浩章 (産業技術総合研究所)
概 要:エクソソームは脂質二重膜につつまれた直径僅か30-200 nmの小胞です。ほぼ全ての細胞から細胞外に分泌され、細胞間コミュニケーションの新たな媒体として、また各種疾患の診断・治療のツールとして注目されています。エクソソームはRNA、脂質、タンパク質のみならず、その最表層は細胞と同様に糖鎖で覆われています。糖鎖はエクソソームの物理化学的性質を制御するとともに、細胞に情報伝達する際の「起点」として機能すると考えられます。しかしエクソソームの糖鎖の実態はほとんど明らかにされていません。本シンポジウムではエクソソームの糖鎖に着目し、分析、構造、合成、イメージング、機能、医療など、生化学を中心とした様々な視点から議論することで、エクソソーム糖鎖の秘めた可能性に迫ります。多様な研究領域の研究者に広く参加頂き、活発な議論を展開することで、エクソソーム研究の新たな突破口を拓くことを目的とします。
2S10a
日 時:9月19日(木)14:30-16:30 会 場:第10会場(311+312)
微生物と宿主の相互作用を担う糖鎖・脂質・レクチンの世界
オーガナイザー:山口 芳樹(理化学研究所)、山本 一夫(東京大学)
講演者・概要▼
講演者:河崎 徳人 (Quadram Institute(英国))、川上 和義 (東北大学)、山崎 晶 (大阪大学)、松本 直樹 (東京大学)、岩渕 和久 (順天堂大学)、安達 禎之 (東京薬科大学)、加藤 紀彦 (京都大学)
概 要:生命科学や医療技術が進んだ現在においても、世界的にみれば感染症は依然として死亡原因の上位を占めています。微生物は人に比べると圧倒的に長い時間をかけて進化しており、人とは無縁に進化を遂げたり、人との共生を選択したり、あるいは人を打ち負かすように進化したりと、戦略は様々です。一方でヒトは微生物と対抗するための高度な免疫システムを備えており、微生物のシグナチャーを認識して異物を排除します。その現場において糖鎖や脂質はその構造多様性・種特異性から"非自己成分"としての目印となっており、多くの場合宿主に由来するレクチン受容体がその認識を担っています。これとは逆に微生物側のレクチン(毒素)が宿主の糖鎖や脂質を認識する場合も存在します。本シンポジウムでは感染と宿主防御あるいは共生における糖鎖・脂質・レクチンの関わりについて、講演者の専門分野の立場から議論を深めることを目的として企画しました。
2S11m
日 時:9月19日(木)9:00-11:00 会 場:第11会場(313+314)
リポクオリティが解き明かす生命現象
オーガナイザー:有田 誠(慶應義塾大学、理化学研究所)、佐々木 雄彦(東京医科歯科大学)
共催:文部科学省新学術研究領域 脂質クオリティが解き明かす生命現象
講演者・概要▼
講演者:有田 誠 (慶應義塾大学/理化学研究所)、田口 友彦 (東北大学)、末次 志郎 (奈良先端科学技術大学院大学)、佐々木 純子 (東京医科歯科大学)、遠藤 裕介 (かずさDNA研究所)
概 要:脂質は生体膜の構成成分やエネルギー源、シグナル伝達分子としての機能をもち、生体内で多彩な役割を担う分子である。これら脂質分子の構造的な特質を「リポクオリティ」と捉え、その多様性が織りなす生命機能や動作原理を理解することは、生命システムの成り立ちや秩序を分子レベルで理解する上で極めて重要である。本シンポジウムでは、多様性に富むリポクオリティを明確に識別し、分析・可視化する技術、生体がリポクオリティの違いを生み出し、これを認識・受容する分子機構、およびリポクオリティ制御による疾患制御の可能性について、最新の知見を紹介したい。
2S11a
日 時:9月19日(木)14:30-16:30 会 場:第11会場(313+314)
リゾリン脂質メディエーター: 産生・輸送と新たな生理機能
オーガナイザー:大日方 英(群馬大学)、可野 邦行(東北大学)
講演者・概要▼
講演者:武富 芳隆 (東京大学)、小林 直木 (摂南大学)、大日方 英 (群馬大学)、柳田 圭介 (国立国際医療研究センター)、可野 邦行 (東北大学)、高倉 伸幸 (大阪大学)
概 要:脂肪酸鎖を通常二本持つリン脂質とは異なり、脂肪酸鎖を一本しか持たないリゾリン脂質の多くは、単なる代謝中間産物ではなく、特異的受容体を介してシグナルメディエーターとして機能することが、近年の研究で明らかになってきた。なかでも、スフィンゴシン1リン酸(S1P)とリゾフォスファチジン酸(LPA)は、血管内皮細胞や平滑筋細胞、血小板、リンパ球など多様な細胞種の機能制御において重要な役割を果たすリゾリン脂質性のメディエーターである。また、近年の質量分析技術の発達により、LPA・S1Pが様々な疾患に関与する可能性も見出されている。本シンポジウムでは、これらリゾリン脂質の産生・輸送制御機構や血管新生における生理病理機能など、リゾリン脂質メディエーターをめぐる最新のトピックについて、若手の研究者を中心にご講演いただく。
2S12m
日 時:9月19日(木)9:00-11:00 会 場:第12会場(411+412)
食品ファイトケミカルによる健康増進の分子メカニズム
オーガナイザー:小林 麻己人(筑波大学)、内田 浩二(東京大学)
講演者・概要▼
講演者:堀尾 嘉幸(札幌医科大学)、富永 真琴 (生理学研究所)、高橋 重成(Harvard Medical School(2019年4月より京都大学))、小林 麻己人(筑波大学)、内田 浩二(東京大学)
概 要:高齢化社会を迎えた我が国では「食」による健康増進や疾患予防が注目され、健康食品ブームがたびたび巷を賑わしている。健康食品の効用の源は、それぞれに含まれるファイトケミカル群が私たちの体の細胞に存在する「標的分子」に直接作用し、これを活性化または抑制することにより抗酸化力増大・ホルモン分泌・DNA損傷防止等を促し、老化や生活習慣病に対する予防力を増進させると考えられているが、分子メカニズムが明快になっている例は少ない。本シンポジウムでは、スルフォラファン・レスベラトロール・カプサイシンといった食品由来のファイトケミカル群の動物個体に対する各種効用と、それぞれが標的とする生体機構の制御メカニズム(Nrf2・SIRT1・TRPV1など)の両面からアプローチした最新の研究成果を紹介し、「食と健康」に関する今後の研究の方向性と応用について討論したい。
2S12a
日 時:9月19日(木)14:30-16:30 会 場:第12会場(411+412)
組織・臓器の構築と制御の統合的理解を目指した細胞ダイバーシティー研究
オーガナイザー:藤田 直也(がん研究会)、越川 直彦(神奈川県立がんセンター)
共催:文部科学省新学術領域研究 細胞社会ダイバーシティーの統合的解明と制御
講演者・概要▼
講演者:岩見 真吾(九州大学)、山崎 聡(東京大学)、樋田 京子(北海道大学)、片山 量平((公財)がん研究会)、小林 徹也(東京大学)、越川 直彦(神奈川県立がんセンター)
概 要:環境変化に耐えうる強靭な生体・臓器は、ダイバーシティーに富む細胞の相互作用により構築・維持されている。そのため、ダイバーシティーの破綻は、がんを含む各種疾患の発症へとつながることが示唆されている。ダイバーシティーに富む細胞間の相互作用は非常に複雑であるため、統合的な解析はこれまで十分になされてこなかった。しかし近年では、シングルセルレベルでのオーミクスデータが安価に取得可能となり、得られたビッグデータの解析手法も大きく進化している。こうした機会を捉えて、組織・臓器内の個々の細胞情報を基にした分類とともに、複雑で変化に富んだ細胞間相互作用を数理モデルとシミュレーションで予測、解明する新たな試みを、多様なバックグラウンドを持った研究者の領域横断的な連携により今こそ進めるべきである。本シンポジウムでは、新学術領域「細胞ダイバース」で進めている研究の最新知見を紹介するとともに、細胞ダイバーシティー研究を通じた生命の根本原理の解明や疾病治療法の開発の可能性について議論したい。
2S13m
日 時:9月19日(木)9:00-11:00 会 場:第13会場(413)
クロマチン構造上で起こる反応の生化学
オーガナイザー:立和名 博昭((公財)がん研究会がん研究所)、小山 昌子(東京大学)
講演者・概要▼
講演者:高橋 達郎(九州大学)、原 昌稔(大阪大学)、高橋 元子((公財)がん研究会)、江原 晴彦(理化学研究所)、佐々木 真理子(東京大学)、立和名 博昭((公財)がん研究会)、小山 昌子(東京大学)
概 要:真核生物のゲノムDNAは、クロマチン構造を形成して細胞の核内に収納されている。そのため、真核生物の複製・転写・修復・染色体の構築および均等分配といったDNA上で起きる反応は、いずれもこのクロマチン構造を基質としている。したがって、クロマチン構造上でこれらの反応機構を解明することは、生命を理解する上で欠かせない重要な課題である。裸のDNAを基質とした場合に比べて、クロマチン構造を基質とした各反応機構の理解は遅れているが、近年の研究により明らかになりつつある。本シンポジウムでは、クロマチン構造上で起こる複製・転写・修復・染色体の構築および分配に関する最新の知見を紹介し、多角的な視点からクロマチン構造上で起こる反応を議論したい。
2S13a
日 時:9月19日(木)14:30-16:30 会 場:第13会場(413)
新しい単純な原理・戦略から古くからの複雑・難解な仕組みを紐解く
オーガナイザー:堀越 正美(東京大学)、栗原 裕基(東京大学)
講演者・概要▼
講演者:木村 暁(国立遺伝学研究所)、中林 悠(東北医科薬科大学)、栗原 裕基(東京大学)、堀越 正美(東京大学)
概 要:単純な基本原理を発見することは、科学者の最大の喜びの一つである。生物学では、生物種の保存・変換は各々「遺伝の法則」・「進化論」が、遺伝情報から物質への変換は「セントラルドグマ」が、単純な基本原理となり、その後の様々な研究を生み出してきたといってよい。こういった基本原理の解明は、多様な生物が示す様々な生化学的・生物学的仕組みの解明を導き、生物学史上、最大量の成果を挙げることを導いた。その一方で、それらの膨大な成果からは、上述の基本原理に匹敵するような新しい基本原理を生み出せないでいる。その状況の中で、生物の示す複雑で多様な現象に潜む基本原理の発見に一歩でも近づこうとしている研究の中から幾つかの研究を紹介できたらと考えた。
2S14m
日 時:9月19日(木)9:00-11:00 会 場:第14会場(414+415)
パーキンソン病の分子病態:責任遺伝子からの新知見
オーガナイザー:伊藤 弦太(東京大学)、桑原 知樹(東京大学)
講演者・概要▼
講演者:伊藤 弦太(東京大学)、桑原 知樹(東京大学)、今居 譲(順天堂大学)、太田 悦朗(北里大学)、長谷川 隆文(東北大学)、松田 憲之(東京都医学総合研究所)
概 要:パーキンソン病(PD)は高齢者に多く発症するきわめて頻度の高い神経変性疾患であり、超高齢社会を迎えた本邦において、その発症メカニズムに基づく治療法の開発は急務となっている。これまで、家族性に発症するPDや若年性パーキンソニズムの原因遺伝子が多数同定されてきたが、それらの遺伝子産物が共通してもたらす分子病態については不明な点が多く、PD発症メカニズムの統合的な理解には至っていない。一方、近年になり、責任遺伝子産物PINK1によるユビキチンリン酸化やLRRK2によるRabリン酸化、それらによるオルガネラ品質管理など、ブレイクスルーとなる発見が相次ぎ、各遺伝子産物の機能解明は大きく進みつつある。そこで本シンポジウムでは、家族性PDの各原因遺伝子産物について最先端の研究に携わる研究者が発表を行い、PDの分子病態における位置づけや治療法開発への展開について議論する。
2S14a
日 時:9月19日(木)14:30-16:30 会 場:第14会場(414+415)
次世代抗体医薬品開発に向けた抗体の高機能化戦略
オーガナイザー:伊東 祐二(鹿児島大学)、加藤 幸成(東北大学)
講演者・概要▼
講演者:香月 康宏(鳥取大学)、加藤 幸成(東北大学)、眞鍋 史乃(理化学研究所)、伊東 祐二(鹿児島大学)、山田 慧(味の素㈱)、中野 了輔(協和発酵キリン㈱)
概 要:抗体医薬品は、その高い治療効果により、医薬品として確固とした地位を築くまでに至っている。しかし、抗体持つ高い標的特異性とエフェクター機能を含めた大きなポテンシャルを考えた時、種々の工夫により、新しい次世代の医薬品への展開が十分に期待される。本シンポジウムでは、次世代医薬品へ向けた研究を加速するため、従来の抗体の作製法を超え、高機能化された抗体を生み出すための研究に焦点を当て、その現状と展望を考えてみたい。具体的には、ヒト抗体をマウスで開発するためのヒト抗体産生マウス、従来のガン特異的抗体の概念の枠を超えたCasMab抗体、さらには抗体の高機能化にとって必要な抗体の部位特異的修飾技術として、糖鎖修飾並びに親和性ペプチドを使った方法、それらの技術を組み合わせることによって達成される抗体薬物複合体と中枢移行性抗体についてお話しいただく予定である。
2S15m
日 時:9月19日(木)9:00-11:00 会 場:第15会場(416+417)
動的修飾による翻訳装置の個別化獲得と生命機能制御
オーガナイザー:稲田 利文(東北大学)、魏 范研(熊本大学)
講演者・概要▼
講演者:稲田 利文(東北大学)、長尾 翌手可(東京大学)、魏 范研(熊本大学)、竹内 理(京都大学)、河原 行郎(大阪大学)、王 丹(京都大学)、田口 英樹(東京工業大学)
概 要:翻訳装置はリボソームを中心とする巨大構造体であり、転写後における遺伝子発現制御の中核を担う。近年、リボソームや翻訳因子にこれまでに知られていない修飾が発見され、環境ストレスなどの生育条件において、翻訳装置の機能がダイナミックに制御される現象が見出されている。またこれら修飾因子の破綻は様々な疾患の原因となることが知られている。本シンポジウムでは、ユビキタスに存在する翻訳装置が修飾によって個性を獲得し、遺伝子発現を時空間的に制御する分子機構について最新の成果を共有し討論を行う。
2S15a
日 時:9月19日(木)14:30-16:30 会 場:第15会場(416+417)
細胞・組織動態解析と数理モデルで解く形態形成の原理
オーガナイザー:麓 勝己(大阪大学)、今村 寿子(九州大学)
講演者・概要▼
講演者:吉田 藍子(北海道大学)、木岡 紀幸(京都大学)、塚本 佳也(大阪大学)、麓 勝己(大阪大学)、今村 寿子(九州大学)、平島 剛志(京都大学)、秋山 正和(北海道大学)
概 要:形態形成は遺伝的にプログラムされた細胞の動態変化が組織レベルのリモデリングを誘導する発生・再生のプロセスである。動態変化には細胞の形や大きさ、動き、硬さなど、様々な物理的要素の変動が含まれる。これまで遺伝子と形態形成との関係性は明らかになってきたが、細胞の動態変化がいかに形態形成を制御するのかについて、私たちは完全に理解できていない。そのためには形態形成に必要な要素を様々なテクニックによって抽出し、それらを適切に実装したモデルを用いて十分性を検証する方法が必要である。本シンポジウムでは、細胞・組織動態の理解と数理モデルへの実装に基づいて形態形成の原理を解くする方法論について議論したい。
2S16m
日 時:9月19日(木)9:00-11:00 会 場:第16会場(418)
免疫システムの能動的抑制機構
オーガナイザー:岡崎 拓(徳島大学)、堀 昌平(東京大学)
講演者・概要▼
講演者:荒瀬 尚(大阪大学)、岡崎 拓(徳島大学)、小野 昌弘(インペリアル・カレッジ・ロンドン)、渋谷 彰(筑波大学)、堀 昌平(東京大学)
概 要:免疫システムは、病原微生物などの異物を免疫担当細胞が認識して活性化し、異物を排除あるいは無力化することにより、生体を異物から防御する役割を担っている。一方、過剰な免疫応答や自己に対する不適切な免疫応答による組織傷害を回避するために、免疫応答を能動的に抑制するシステムが存在することが明らかとなっている。近年、免疫抑制システムを担当する分子および細胞を標的として、免疫応答を人為的に制御することにより癌や自己免疫を治療する方法が大きな関心を集めている。既に、CTLA-4やPD-1といった抑制性免疫補助受容体に対する阻害抗体が、癌細胞に特異的なT細胞を活性化し、T細胞による癌細胞の傷害を促進する薬剤として認可されているとともに、制御性T細胞の機能制御や移植により癌や自己免疫を治療する試みが進められている。本シンポジウムでは、免疫応答を抑制する分子および細胞の機能、およびそれらを標的とした治療法に関して議論し、理解を深めることを目的とする。
2S16a
日 時:9月19日(木)14:30-16:30 会 場:第16会場(418)
病原体の生化学ー基礎感染症学から創薬開発までー
オーガナイザー:見市 文香(佐賀大学)、橋口 隆生(九州大学)
講演者・概要▼
講演者:見市 文香(佐賀大学)、加藤 健太郎(帯広畜産大学)、中川 一路(京都大学)、杉田 征彦(大阪大学)、橋口 隆生(九州大学)
概 要:近年、薬剤耐性病原体や新興再興感染症の出現により、感染症研究は基礎的な病原性の理解から創薬開発まで多岐にわたる研究が展開されている。感染症を引き起こす病原体(ウイルス・細菌・真菌・寄生虫)は、個々の病原体が独自かつ多種多様な戦略により宿主へ侵入、定着、増殖を達成する。これらの感染現象は未解明なことが多いものの、病原体が示す特殊な細胞侵入機構や代謝経路の宿主依存、宿主代謝経路の改変利用など、興味深い戦略が明らかになりつつある。こうした病原体が示す特殊性は、普遍現象では説明できない・汎用技術が適応できない等の解析上不利な点もあるが、特殊な代謝経路や関連酵素、病原体特異的蛋白質を創薬標的として逆手に取ることも出来る。 本シンポジウムでは病原体側の生化学、その戦略を挑戦的な最先端技術を用いて解析・解明・創薬展開されている方々に最新の知見を紹介して頂き、感染症の克服に向けた研究の潮流と展望を議論する。
2S17m
日 時:9月19日(木)9:00-11:00 会 場:第17会場(419)
神経回路網の形成・機能・再生を支えるタンパク質の生化学
オーガナイザー:服部 光治(名古屋市立大学)、坂内 博子(科学技術振興機構)
講演者・概要▼
講演者:桐生 寿美子(名古屋大学)、河野 孝夫(名古屋市立大学)、萩原 明(山梨大学)、坂内 博子(科学技術振興機構)、三國 貴康(新潟大学)、和氣 弘明(神戸大学)
概 要:近年、神経回路網研究ではいくつかの大規模プロジェクトや網羅的解析が進行している。しかしその一方、機能や制御機構が不明の重要タンパク質も多く残されており、それらの解明には個々の研究者のオリジナルな視点とこだわり、生きた神経細胞の中でタンパク質の動態や機能を解析するための新技術が必要とされている。本シンポジウムでは、近年高い業績を上げている女性および若手研究者をお呼びし、神経回路網の形成・機能・再生を支えるタンパク質の生化学研究について講演頂く。神経回路網の形成・再生・維持を担うタンパク質の機能についての最新の知見(桐生、河野、萩原)に加え、神経回路網を支える分子機構にタンパク質の動態から迫るための新技術(坂内、三國)、およびグリア細胞による神経回路網の制御機構(和氣)という幅広い話題を提供することにより、神経回路網の生化学研究の将来について議論を深めたい。
2S17a
日 時:9月19日(木)14:30-16:30 会 場:第17会場(419)
アルギニン残基の修飾と生体機能の多様性
オーガナイザー:深水 昭吉(筑波大学)、藤間 祥子(奈良先端科学技術大学院大学)
講演者・概要▼
講演者:深水 昭吉(筑波大学)、小倉 淳郎(理化学研究所)、黒川 理樹(埼玉医科大学)、中山 啓子(東北大学)、山本 雄広(慶應義塾大学)、藤間 祥子(奈良先端科学技術大学院大学)
概 要:タンパク質の機能は、リン酸化、ユビキチン化、アセチル化、糖鎖付加やメチル化などの翻訳後修飾によって調節されていることが良く知られている。特にヒストンや非ヒストンタンパク質のリジン残基やアルギニン残基を中心としたメチル化は、タンパク質の複合体形成、シグナル伝達、スプラシング、転写や代謝など多様な生物機能に関わり、メチル化酵素の触媒によってタンパク質固有の機能が発揮される。その中でも、アルギニン残基はメチル化とシトルリン化を受け、ユニークなターゲットとして注目される。アルギニン残基の修飾の作用として、細胞を用いた精細な解析に加え、最近では生体機能も解明されつつある。そこで本シンポジウムでは、タンパク質のアルギニン残基の修飾の恒常性と機能について、修飾酵素、基質や構造の側面から最新の話題を取り上げて議論したい。
2S18m
日 時:9月19日(木)9:00-11:00 会 場:第18会場(511+512)
生体エネルギーと電子共役の複雑性制御
オーガナイザー:澤 智裕(熊本大学)、中川 秀彦(名古屋市立大学)
講演者・概要▼
講演者:中川 秀彦(名古屋市立大学)、齊藤 芳郎(東北大学)、三木 裕明(大阪大学)、居原 秀(大阪府立大学)、増田 真二(東京工業大学)、三浦 恭子(熊本大学)
概 要:生体内におけるエネルギー(ATP)生成過程では酸化還元(レドックス)反応を介した電子伝達系が非常に効率よく起こる。電子はいくつかの中間電子伝達体によって順次伝達され、最後に受容体に与えられる。このような電子伝達は、原核細胞では細胞膜で、また真核細胞ではミトコンドリア内膜で行われ、多様な生物種において、多彩な電子受容体の利用などでみられる複雑な制御系を構築している。本シンポジウムでは、ごく最近明らかとなってきた真核生物における活性イオウを媒介した電子伝達系の制御、生体エネルギーの制御が関わる原核生物における環境適応戦略、真核生物における寿命(長寿)の制御や代謝異常やがんなどの疾患への関わり、生体電子計測の新技術について、生体エネルギーと電子共役の複雑性から議論する。
2S18a
日 時:9月19日(木)14:30-16:30 会 場:第18会場(511+512)
レドックスシグナルの生化学的基盤の解明
オーガナイザー:伊東 健(弘前大学)、西田 基宏(自然科学研究機構)
講演者・概要▼
講演者:赤池 孝章(東北大学)、山本 雅之(東北大学)、西田 基宏(自然科学研究機構)、伊東 健(弘前大学)、潮田 亮(京都産業大学)、一村 義信(順天堂大学)
概 要:活性酸素種・活性窒素種や親電子性物質などの反応性分子種は、種々の生体応答のシグナル分子として働き、生命活動に必須の働きをしている。酸化ストレスや還元ストレスはこれらのシグナル伝達を撹乱し、種々の生体分子をレドックス修飾して細胞死などを惹起する。レドックス制御が種々の代謝経路と密接に関連することは、グルタチオンやNADPHなどの抗酸化物質がアミノ酸代謝や糖代謝から合成されること、活性酸素種の産生がミトコンドリア代謝と関連することなどから明らかである。
本シンポジウムでは、Nrf2応答経路、活性硫黄代謝調節、小胞体ストレス応答などのレドックス制御機構に焦点を当てるとともに、オートファジー、ミトコンドリア代謝、栄養飢餓応答を始めとする種々の代謝経路との相互作用について議論する。
第3日目(9月20日)
3S02m
日 時:9月20日(金)9:00-11:00 会 場:第2会場(503)
日本発新バイオ医薬品イノベーションを目指す最先端創薬
オーガナイザー:菅 裕明(東京大学)、髙木 淳一(大阪大学)
講演者・概要▼
講演者:秋吉 一成(京都大学)、髙木 淳一(大阪大学)、黒澤 信幸(富山大学)、玉田 耕治(山口大学)
概 要:本シンポジウムでは、日本発の新しいバイオ医薬品(バイオロジクス)を開発し、イノベーションを起こすことを目指して活躍をされている先生方をお招きし、近年の研究の進歩と将来の展望を議論して頂きます。
3S02a
日 時:9月20日(金)13:20-17:20 会 場:第2会場(503)
疾患の早期診断と治療のための化学、生化学
オーガナイザー:清水 孝雄(国立国際医療研究センター)、小田 吉哉(東京大学)
共催:AMED-CREST「疾患における代謝産物の解析および代謝制御に基づく革新的医療基盤技術の創出」
講演者・概要▼
講演者:Ian A Blair (ペンシルベニア大学 医学大学院)、上杉 志成 (京都大学化学研究所)、加部 泰明 (慶應義塾大学)、ファガラサン・シドニア (理化学研究所)、杉浦 悠毅 (慶應義塾大学)、伊藤 拓水 (東京医科大学)、魏 范研 (熊本大学)
概 要:このシンポジウムは日本生化学会と「疾患代謝」領域(AMED-CREST, JST-PRESTO)の共催によるものです。疾患代謝領域は、(1)患者サンプルを用いて、疾患の診断や予後判定に有用な新たなバイオマーカーを探索する、(2)既存薬や既知化合物の新たな標的分子を見つけ、新たな生物学の発展や薬剤のリポジショニングに役立てる、(3)それらの研究を加速するオミクスを中心とする新たな技術開発を行う、の三つの研究課題からなっています。この領域で顕著な研究成果を挙げている6人の演者を選び、研究の現状や今後の課題について講演と討論をします。また、米国ペンシルベニア大学医学部のIan Blair教授には特別講演を依頼し、質量分析計や分子生物学の技術を用いた、がん・希少疾患等の早期発見に重要なバイオマーカー発見の研究についてお話し頂きます。全体を通して、化学や生化学が、疾患の早期診断や治療法の開発、予後の予測などにどの様に貢献するかを討論する予定です。
3S03m
日 時:9月20日(金)9:00-11:00 会 場:第3会場(501)
グリケーション・食品の褐変反応から見いだされた生体蛋白の変性機構
オーガナイザー:永井 竜児(東海大学)、藤原 章雄(熊本大学)
共催:日本メイラード学会(JMARS)
講演者・概要▼
講演者:山本 靖彦(金沢大学)、稲城 玲子(東京大学)、白河 潤一(東海大学)、有原 圭三(北里大学)、柴田 敏行(三重大学)
概 要:アミノ酸と還元糖との非酵素的な縮合反応から褐色色素が生成します。本反応はメイラード反応、あるいはグリケーション(糖化)と呼ばれ、最終的に終末糖化産物であるAGEs(Advanced Glycation End-products)が生成します。当初、本反応は食品の褐変のみならず、芳香の源や栄養価の変化に関与することから主に食品科学の分野で研究がなされてきました。その後、グリケーションが生体でも進行することが明らかとなり、近年では代謝疾患のみならず、精神疾患や骨疾患との関与も報告されています。しかし、試料中のAGEs定量は困難な場合が多く、食品では褐色の色素は全てAGEsと誤解されたり、生体AGEs含量が正確に評価されていなかったり、依然として検出の問題点も残されています。本シンポジウムでは、AGEsにまつわる生命現象を分子レベルで捉え、ヒトの健康増進目指して研究している新進気鋭の研究者にAGEs研究の現状と今後の展望について紹介頂き、参加者と議論したいと思います。
3S03a
日 時:9月20日(金)13:20-15:20 会 場:第3会場(501)
がん細胞における代謝変動とその機能的役割
オーガナイザー:伊藤 貴浩(ジョージア大学)、平尾 敦(金沢大学)
講演者・概要▼
講演者:Sumin Kang(エモリー大学)、本橋 ほづみ(東北大学)、谷口 浩二(慶應義塾大学)、伊藤 貴浩(ジョージア大学)、平尾 敦(金沢大学)
概 要:近年のオミクス技術の進歩により、脂質、アミノ酸、核酸等の合成・分解を担うさまざまな代謝経路が、がん細胞と正常細胞では異なる挙動を示すことが明らかになってきた。一方で、このような代謝変動はがんの発生や進展の要因なのかあるいは結果なのか、個々の変化が持つ機能的役割については全容が解明されたとは言い難いのが現状である。がん細胞の代謝脆弱性を発見し、その仕組みを理解することは、新しい分子標的療法の開発にも大きく貢献する。本シンポジウムでは、代謝・栄養・環境といった切り口からがん細胞の作動原理の解明にアプローチする研究者をお招きし、最新の知見について議論いただく機会としたい。
3S04m
日 時:9月20日(金)9:00-11:00 会 場:第4会場(502)
細胞内脂質輸送システムの制御とその意義
オーガナイザー:久下 理(九州大学)、花田 賢太郎(国立感染症研究所)
講演者・概要▼
講演者:花田 賢太郎(国立感染症研究所)、申 惠媛(京都大学)、小笠原 史彦(京都大学)、吉村 信一郎(大阪大学)、田村 康(山形大学)、宮田 暖(九州大学)
概 要:膜を構成する多種多様な脂質がオルガネラ間またはオルガネラ内を適切に運ばれることは、生体膜の形成と機能維持に不可欠である。近年、多くの脂質輸送システムが発見され、複数の輸送経路の関与によって各オルガネラの脂質組成が調整されていることも分かり出している。そして、膜間輸送では様々な脂質輸送タンパク質が限られた細胞内亜領域であるオルガネラ膜コンタクト部位で働くこと、膜を横断する脂質輸送はP4-ATPアーゼ、ABC輸送体及びスクランブラーゼ等の複数のタイプに属する膜タンパク質が触媒していることなどが広く認識されてきた。しかしながら、それぞれの脂質輸送システムがどのように機能制御されているのか、また、異なる輸送システムの機能が相互に調整されているのかといった問題はほとんど未解明のままであり、機能阻害剤の開発もあまり進んでいない。本シンポジウムでは、これらの問題へのアプローチ例を話題提供しながら、細胞内脂質輸送システムの制御とその意義の理解を深めたい。
3S04a
日 時:9月20日(金)13:20-15:20 会 場:第4会場(502)
液-液相分離によるタンパク質分解制御
オーガナイザー:野田 展生((公財)微生物化学研究会微生物化学研究所)、佐伯 泰((公財)東京都医学総合研究所)
講演者・概要▼
講演者:野田 展生((公財)微生物化学研究会微生物化学研究所)、佐伯 泰((公財)東京都医学総合研究所)、永井 義隆(大阪大学)、荒木 保弘(大阪大学)、森本 大智(京都大学)、蔭山 俊(新潟大学)
概 要:近年、“液-液相分離"により生じるタンパク質および核酸の液滴が細胞内に普遍的に存在することが明らかとなり、相分離は生体分子の組織化と機能発現のための新しい原理として大きく注目されている。細胞内の主要な分解系であるオートファジーやユビキチン・プロテアソーム系は、異常なタンパク質やオルガネラの分解により細胞内恒常性の維持に寄与しているが、興味深いことに、これらの細胞内分解系のマシーナリー自体が相分離により制御されていることが最近わかってきた。これら新たに見出された液滴は細胞内外の環境やストレスに応じて迅速に生じ、分解のためのシグナルや分解装置そのものを制御する。本シンポジウムでは、液-液相分離がオートファジーやユビキチン-プロテアソーム系のマシーナリーを制御するメカニズム、分解基質としての液滴の性質などに関して主に未発表の最新の知見を紹介するとともに、相分離の視点から分解系全体を再考してみたい。
3S05m
日 時:9月20日(金)9:00-11:00 会 場:第5会場(301)
発生過程の時間制御機構
オーガナイザー:影山 龍一郎(京都大学)、後藤 由季子(東京大学)
共催:文部科学省新学術領域研究領域 脳構築における発生時計と場の連携
講演者・概要▼
講演者:下條 博美(京都大学)、瀬戸 裕介(京都大学)、鈴木 孝幸(名古屋大学)、壷井 将史(東京大学)、Alev Cantas(京都大学)、佐藤 純 (金沢大学)
概 要:どのようにして発生過程は決まったタイミング・順番で自律的に進むのか、どのような分子機構で発生時間が計られているのか、といった発生生物学の永年の疑問に対する明確な答えはまだない。例えば、脳構築過程において神経幹細胞は決まったスケジュールで性質を変えて多様な細胞を生み出すため、タイミングを計る時計をもつと考えられるが、その詳細は不明である。一方で、神経幹細胞に内在する発生時計だけでなく、経時的に変化する細胞外環境(場)からのフィードバックも脳構築過程の進行に重要である。本シンポジウムでは、脳やその他の組織の構築過程における時間制御機構について最新の知見を議論する予定である。
3S05a
日 時:9月20日(金)13:20-15:20 会 場:第5会場(301)
構造・化学・生化学の融合による膜輸送体研究の新潮流
オーガナイザー:永森 收志(奈良県立医科大学)、清中 茂樹(京都大学)
講演者・概要▼
講演者:木村 泰久(京都大学)、小島 憲人(京都大学)、村山 尚(順天堂大学)、Lee Yongchan(マックスプランク研究所)、Wiriyasermkul Pattama(Columbia大学 (現所属 奈良県立医科大学))
概 要:生命は、膜輸送体が脂質二重膜を隔てて作り出す生体分子の不均衡分布により支えられている。我々の体内には500種類以上の膜輸送体が存在しているが、未だその多くの機能が不明であり、既知の分子についてもさらなる研究が必要とされている。生化学は膜輸送体研究の基盤であるが、膜輸送体が必ずしも扱いやすい対象でないため、研究が進んでいないことは認めざるをえない。一方で、近年のX線やクライオ電子顕微鏡による構造解析や計算機によるMDシミュレーション、低分子化合物を用いたケミカルバイオロジー・薬理学的な解析技術は、めざましい発展を見せている。そこで、生化学的手法による定量的な解析に、これらの解析技術を融合させることで膜輸送体研究の新潮流を生み出している新進気鋭の若手研究者を国内外から招き、「膜輸送体学」の更なる進展のために議論する。
3S06m
日 時:9月20日(金)9:00-11:00 会 場:第6会場(302)
フェイトメタボライツ : 細胞運命を決定する代謝産物群
オーガナイザー:曽我 朋義(慶應義塾大学)、本橋 ほづみ(東北大学)
講演者・概要▼
講演者:曽我 朋義(慶應義塾大学)、関根 弘樹(東北大学)、佐谷 秀行(慶應義塾大学)、水沼 正樹(広島大学)
概 要:代謝物は遺伝情報の最終産物であり、生命体維持のための化学反応に利用されたのち、不要であれば捨てられる運命にあると考えられていた。ところが、代謝物が、エピゲノム反応などを介して遺伝子の転写・翻訳を調節することや、環境変化を伝える情報分子、他の細胞や組織で再利用されるリサイクル分子、他の組織の活性化や保護に関わるエフェクター分子などとして機能していることがわかってきた。これらの事実は、栄養、微小環境、腸内細菌叢などの環境の変化や内在的な要因で生じた代謝物が、細胞の分化、がん化、酸化ストレス応答、アレルギー、免疫反応などのあらゆる生理機能・生命現象を制御し、老化や寿命にまで影響を及ぼす可能性を示唆する。我々は、自身のみならず他の細胞や生体の運命決定に深く関与する代謝物群を「フェイトメタボライツ」と定義した。本シンポジウムでは、代謝物が誘導する細胞や組織の表現型の制御機構など最新の知見を紹介する。
3S06a
日 時:9月20日(金)13:20-15:20 会 場:第6会場(302)
伝統と革新の生化学研究
オーガナイザー:白木 琢磨(近畿大学)、井倉 毅(京都大学)
講演者・概要▼
講演者:白木 琢磨(近畿大学)、井倉 毅(京都大学)、金城 正孝(北海道大学)、関口 博史(高輝度光科学研究センター)
概 要:生化学反応を基盤とする生命現象を分子レベルで理解することは、分かり易さを求めるという点では極めて重要であった。しかしながら分子同士の直接相互作用から立てたモデルと、生命活動に見られる複雑な現象には未だ深い溝が横たわっている。ミクロとマクロの間の階層を乗り越える際に見られる情報縮約を読み解く新しい考え方が必要である。古典的反応速度論解析(ミカエリス・メンテン式など)からシステムズバイオロジーに至るまで、基本的には集団の平均値に対するモデル近似を基盤としているため、今後はばらつきや動態、個性などを取り込んだ時空間モデルによる革新的生化学解析により、ミクロとマクロの橋渡しをしていくことが重要である。本シンポジウムでは、生化学の置かれたこの状況に挑戦している演者にその思考のプロセスを紹介して頂く。
3S07m
日 時:9月20日(金)9:00-11:00 会 場:第7会場(303)
嗅覚受容体のバイオロジーと食品開発応用
オーガナイザー:東原 和成(東京大学)、廣田 順二(東京工業大学)
講演者・概要▼
講演者:新村 芳人 (東京大学)、廣田 順二 (東京工業大学)、小出 哲也 (帝京科学大学)、山田 哲也(東京医科歯科大学)、伊地知 千織 (味の素㈱)
概 要:匂いを感知する嗅覚受容体をコードする遺伝子群は1991年に発見された。ゲノムプロジェクトの進展によって、脊椎動物ゲノム最大の遺伝子ファミリーを形成する嗅覚受容体遺伝子の全容が明らかになってきた(新村)。嗅神経細胞が膨大な数の嗅覚受容体遺伝子の発現をどのように制御するのか、その分子機構もわかってきた(廣田)。さらに嗅覚受容体が受容する匂いシグナルがどのように脳に伝わり行動に結びつくかも解析されている(小出)。一方、鼻以外の身体の臓器に発現する嗅覚受容体が複数同定されており、その機能が見えてきている(山田)。また基礎研究だけでなく産業界に目を向けると、食品における美味しさに一番重要な香りの開発へ嗅覚受容体の分子レベルからのアプローチもなされている(伊地知)。本シンポジウムで、嗅覚受容体に関する基礎から応用までの最先端を知ることができる。
3S07a
日 時:9月20日(金)13:20-15:20 会 場:第7会場(303)
遺伝子発現制御を定量的に理解し操作する
オーガナイザー:白髭 克彦(東京大学)、泊 幸秀(東京大学)
講演者・概要▼
講演者:Taekjip Ha (ジョンズ・ポプキンズ大学)、Christian Häring (EMBL)、木村 宏 (東京工業大学)、深谷 雄志 (東京大学)、多田隈 尚史 (大阪大学)、白髭 克彦 (東京大学)、泊 幸秀 (東京大学)
概 要:生命の根幹を担うセントラルドグマは、古典的な転写、翻訳だけではなく、ゲノムのエピジェネティックな制御、RNAやタンパク質の分解・修飾など、様々な過程で緻密な制御を受けている。しかしながら、これまでの生物学においては、それらの制御はあたかも均一に、あるいはON/OFFスイッチのように作用しているかの様に扱われることも多く、そのダイナミクスについての理解は遅れている。本シンポジウムでは、新しい技術を用いることによって遺伝子発現制御を定量的に捉え記述することの重要性に焦点をあて、さらにその理解に基づいて生命現象を操作する可能性について議論したい。
3S08m
日 時:9月20日(金)9:00-11:00 会 場:第8会場(304)
実験自動化の今
オーガナイザー:高橋 恒一(理化学研究所)、神田 元紀(理化学研究所)
講演者・概要▼
講演者:神田 元紀 (理化学研究所)、古澤 力 (東京大学)、石井 純 (神戸大学)、太田 禎生(東京大学)、光山 統泰 (産業技術総合研究所)
概 要:2016年にNature誌に掲載された研究者調査によると、研究者の52%が現在の生命科学に「深刻な再現性の危機が存在する」と答え、70%が他者の実験の再現に失敗したことがあると答えている。再現性は「巨人の肩の上に立つ」科学技術の進歩の根本であり、他者の実験の再現が困難であれば不正行為の誘因ともなりかねない。また無駄な再現実験の必要性は研究現場における労働集約的なワークスタイルの一要因ともなっている。ロボットと情報技術による実験の自動化は、研究現場における飛躍的な生産性の向上の方策として非常に有望であり、再現性の問題に有効な解決策を提示しうる。本シンポジウムでは、自動実験と自動実験計画を実際に活用している新世代の研究者を中心に、その可能性を議論する。
3S08a
日 時:9月20日(金)13:20-15:20 会 場:第8会場(304)
Stress Signaling Modules: ストレスの受容と細胞応答の選択性
オーガナイザー:野口 拓也(東北大学 )、矢野 環(東北大学)
講演者・概要▼
講演者:野口 拓也 (東北大学)、矢野 環 (東北大学)、澤田 泰宏 (国立障害者リハビリテーションセンター研究所)、及川 大輔 (大阪市立大学)
概 要:細胞は常に有形無形の様々なストレスに曝されている。生体の恒常性を維持するためには、各々の細胞がストレスに対して適切な細胞応答を導き出す必要がある。ゆえに、細胞には種々のストレスを正確に感知するストレス受容体が備わっている。さらに、ストレス受容体によって感知された細胞内外のストレス情報は、細胞内情報処理システムや細胞内シグナル伝達系を経て、ストレス応答としての細胞応答に変換される。近年の細胞生物学的研究やモデル動物を用いたアプローチによって、細胞がストレスを受容する仕組みの一端が解明されつつあると共に、ストレス応答の選択性を規定する分子メカニズムも明らかになってきた。本シンポジウムでは、新進気鋭の研究者に、ストレスの受容から細胞応答に至るまでの、合目的でありながらも多様性に富む分子メカニズムの実例を講演いただくことで、細胞に備わるストレス応答システムの分子レベルでの制御について議論を深めたい。
3S09m
日 時:9月20日(金)9:00-11:00 会 場:第9会場(315)
ボーダレスバイオフロー:臓器間ネットワークとそのひずみの統合的生体因子物流学
オーガナイザー:幸谷 愛(東海大学)、片山 義雄(神戸大学)
講演者・概要▼
講演者:片山 義雄 (神戸大学)、佐野 元昭 (慶應義塾大学)、幸谷 愛 (東海大学)、高橋 裕 (神戸大学)、小坂 展慶 (国立がんセンター)、杉山 栄二 (慶應義塾大学)
概 要:これまでのサイエンスでは、生命現象を理解するために、それを担う主たる因子で説明する還 元主義的手法が中心であった。しかし実際には同時に多くの階層の生体因子の流れがあるにも かかわらず、ごく一部の生体因子のみに注目する手段しかなく、統合的理解が進まなかったと も言える。神経伝達物質、サイトカイン、ホルモン、脂質メディエーター、アミノ酸、ミネラ ル、小分子RNA、エクソソームなど各種生体因子はこれまで個別に扱われて来たが、本来、生 体因子物流として一元的に扱われるべきである。本領域では、臓器内・臓器間におけるあらゆ る生体因子物流の相互作用による恒常性維持機構とその破綻による疾患を統合的に捉え理解す る学問「ボーダレスバイオフロー」を展開する。
3S09a
日 時:9月20日(金)13:20-15:20 会 場:第9会場(315)
時計タンパク質の生化学の新展開と挑戦
オーガナイザー:廣田 毅(名古屋大学)、深田 吉孝(東京大学)
講演者・概要▼
講演者:秋山 修志 (分子科学研究所 協奏分子システム研究センター(CIMoS))、大出 晃士 (東京大学)、Partch Carrie (UC Santa Cruz)、深田 吉孝 (東京大学)、廣田 毅 (名古屋大学)
概 要:睡眠・覚醒やホルモン分泌、代謝など、様々な生理機能は概日時計の支配を受けて一日周期のリズムを示す。概日時計はこれらの生理機能を必要な時間帯だけに作動させてエネルギー効率を上げるので、生存に有利に働くと考えられる。逆に、シフトワークや遺伝子変異によって概日時計の機能が障害を受けると、睡眠障害や癌、代謝疾患など様々な疾病につながることが知られている。時計遺伝子の発見により、概日時計の分子メカニズムの理解は大きく進んだ。しかし、転写・翻訳・翻訳後修飾を基本とするフィードバックループがどのようにして一日という長い周期で安定な時を刻むのかという謎の解明に向けては更なる研究が必要である。本シンポジウムでは、この概日時計の本質に迫るアプローチとして、時計タンパク質の生化学を軸に最先端のオミクス解析、ケミカルバイオロジー、構造生物学などを組み合わせた多角的な挑戦について、最新の研究成果を中心に議論したい。
3S10m
日 時:9月20日(金)9:00-11:00 会 場:第10会場(311+312)
共生微生物叢研究の最前線
オーガナイザー:大野 博司(理化学研究所)、豊田 敦( 国立遺伝学研究所)
共催:AMED-CREST「微生物叢と宿主の相互作用・共生の理解と、それに基づく疾患発症のメカニズム解明」
講演者・概要▼
講演者:豊田 敦 (国立遺伝学研究所)、森 宙史 (国立遺伝学研究所)、梶谷 嶺 (東京工業大学)、岡本 章玄 (物質・材料研究機構)、金井 隆典 (慶應義塾大学)
概 要:近年、腸内細菌をはじめとする共生細菌叢が宿主の生理や病理と密接に関係しており、様々な疾患の発症や病態・症状の出現に関与していることが示され、注目されている、欧米では、国家予算の投入による大規模な研究がここ10年ほどで本格化したが、本邦でも2016年度から要約AMED-CREST「微生物叢と宿主の相互作用・共生の理解と、それに基づく疾患発症のメカニズム解明」が発足し、研究の巻き返しを帰している。本シンポジウムでは、AMED-CRESTとの共催により、本邦における共生微生物叢研究の現況を紹介する。
3S10a
日 時:9月20日(金)13:20-15:20 会 場:第10会場(311+312)
挑戦する生活習慣病の生化学 -次世代の治療戦略を目指して-
オーガナイザー:稲城 玲子(東京大学)、山内 敏正(東京大学)
共催:日本腎臓学会、日本糖尿病学会
講演者・概要▼
講演者:久米 真司 (滋賀医科大学)、西山 成 (香川大学)、和田 淳 (岡山大学)、南学 正臣 (東京大学)
概 要:2017年に日本腎臓学会と日本糖尿病学会は、世界的に急増する糖尿病性腎臓病(DKD)への挑戦として、合同でSTOP-DKD宣言を採択した。DKD撲滅を目指し世界規模で様々な基礎・臨床研究が推進されるなか、さらに生化学レベルでのDKD発症進展メカニズムの理解を深めて、次世代の診断・予防・治療開発が発展することが大いに期待されている。DKDは糖・脂質代謝障害が誘因となる慢性腎臓病で、腎機能低下、慢性炎症、腎線維化の進行機序には代謝障害を伴う様々なストレス(酸化ストレス、低酸素、オルガネラストレス)、それらに対する適応機能の破綻などが深く関与している。またDKDにおけるエピゲノム変化は遺伝子発現制御の視点からDKD進展機序の一端を明らかにし、革新的治療戦略の糸口を見いだした。そこで本シンポジウムでは、最新DKD病態生理学を腎臓と代謝の視点から総括し、将来のDKD予防・治療、ひいては健康長寿社会のために必要な課題を論ずる。
3S11m
日 時:9月20日(金)9:00-11:00 会 場:第11会場(313+314)
行動を制御する脳内分子メカニズムとそのダイナミクス
オーガナイザー:清水 貴美子(東京大学)、和多 和宏(北海道大学)
講演者・概要▼
講演者:船戸 弘正 (東邦大学/筑波大学)、上川内 あづさ (名古屋大学)、小早川 令子 (関西医科大学)、和多 和宏 (北海道大学)、清水 貴美子 (東京大学)
概 要:動物の行動は脳内の複雑なメカニズムによって制御されている。近年の新しい手法や目覚ましい技術開発によって、脳の活性化部位・細胞・神経連絡・分子など多くの事象が少しずつ明らかになってきている。しかし、動物の行動の表出には複雑なメカニズムを要するため、未だ謎は深い。生物のあらゆる現象の根源である分子のダイナミクスを知ることは、行動の制御の具体的な理解につながる。本シンポジウムでは、「行動の分子メカニズム」という共通のキーワードのもと、多岐にわたる動物種で様々な行動を対象にした研究者たちが一堂に会し、脳内の分子ダイナミクスと行動をつなぐ最近の研究成果を紹介する。発表の最後には、行動を制御する脳内分子メカニズムに関する今後の研究のあり方や展望についても議論したい。
3S11a
日 時:9月20日(金)13:20-15:20 会 場:第11会場(313+314)
新しいアプローチで病原性細菌に挑戦する
オーガナイザー:寺島 浩行(名古屋大学)、栗原 新(石川県立大学)
講演者・概要▼
講演者:栗原 新 (石川県立大学)、金 倫基 (慶應義塾大学)、安藤 弘樹 (岐阜大学)、北尾 公英 (岐阜大学)、川本 晃大 (大阪大学)、寺島 浩行 (名古屋大学)
概 要:細菌と人間は切っても切れない縁で結ばれている。腸内細菌叢の生理活性は、ヒトの健康に大きな影響を与えている。また、薬剤耐性菌の出現によって細菌感染症が改めて脅威となっている。これまで、我々が細菌と戦う時には、抗生物質で細菌を皆殺しにしていた。しかしながら、この方法論では耐性菌が生じ、いたちごっこを繰り返すことになる。本シンポジウムでは、これまでとは異なる、「細菌の機能・生理活性をコントロールする」方法論の開発を目指す6人の若手研究者が講演する。細菌の病原性分泌装置や運動機能をコントロールすることによって病原性細菌を無害化したり、腸内細菌叢での生理活性をコントロールし病原性細菌の生育を抑えることを目指す研究について紹介する。また、人工ファージを自在にデザインすることで細菌を特異的に殺すことができるファージセラピーの研究についても紹介する。
3S12m
日 時:9月20日(金)9:00-11:00 会 場:第12会場(411+412)
ゴルジ体の機能と構造
オーガナイザー:矢木 宏和(名古屋市立大学)、吉田 秀郎(兵庫県立大学)
講演者・概要▼
講演者:Lucocq John Milton (University of St Andrews)、清水 重臣 (東京医科歯科大学)、中野 明彦 (理化学研究所)、吉田 秀郎 (兵庫県立大学)、立川 正志 (理化学研究所)、甲賀 大輔 (旭川医科大学)、矢木 宏和 (名古屋市立大学)
概 要:ゴルジ体は、従来、シス槽、メディアル槽、トランス槽さらにはトランスゴルジ網にから構成されており、タンパク質や脂質の輸送および翻訳後修飾形成の場として機能していると考えられてきた。しかしながら、最新の光学顕微鏡や電子顕微鏡技術、さらにはコンピューターシミュレーションにより、ゴルジ体の層構造は一様ではなく、異なる機能を担う領域(ゾーン)が形成されていたり、細胞の状態に応じて構造を変化させるといった複雑な構造体であることが明らかになってきている。さらには、ゴルジ体内のストレス応答、ゴルジ体膜を利用したタンパク質分解、タンパク質輸送の詳細なシステムが明らかになり、ゴルジ体の有する新規機能が次々と見出されてきている。本シンポジウムでは、こうしたゴルジ体の新規機能と詳細な構造の最先端の知見を紹介するとともに、ゴルジ体における構造と機能の関連を議論したい。
3S12a
日 時:9月20日(金)13:20-15:20 会 場:第12会場(411+412)
分子状水素による多様な疾患への多機能効果の分子機構
オーガナイザー:太田 成男(順天堂大学)、大澤 郁朗(東京都健康長寿医療センター研究所)
講演者・概要▼
講演者:太田 成男 (順天堂大学)、伊藤 美佳子 (名古屋大学)、市原 正智 (中部大学)、池谷 真澄 (東京都健康長寿医療センター研究所)、大澤 郁朗 (東京都健康長寿医療センター研究所)
概 要:申請者らは、水素ガスの吸引で酸化ストレスが抑制され、脳虚血再灌流障害が緩和されることを2007年に報告した。この論文の引用数は900に上る。水素(H2)の投与法も、水素ガスだけでなく高濃度に水素を溶解した水素水や輸液、点眼剤などの効果が、動物モデルや臨床研究で検討された。その結果、顕著な疾患の予防・治療効果が認められており、分子状水素の効果については、疑いないものになっている。特に脳梗塞や認知症などの治療法が限定されている中枢神経系疾患の改善効果が報告され、心肺停止患者への水素ガスによる先進医療Bが進行中である。水素による抗酸化作用だけでなく、転写因子NFATやNrf2の活性化、ミトコンドリア活性制御、核ゲノムの修飾が報告されるなど、新たな分子機構が明らかとなっている。本シンポジウムでは、多様な疾患抑制効果を示す水素の生体内シグナル伝達制御と遺伝子発現制御を中心に分子レベルでの作用機序に迫る。
3S13m
日 時:9月20日(金)9:00-11:00 会 場:第13会場(413)
代謝アダプテーションのトランスオミクス
オーガナイザー:黒田 真也(東京大学)、平井 優美(理化学研究所)
共催:文部科学省新学術研究領域 代謝アダプテーションのトランスオミクス解析 (代謝統合オミクス)
講演者・概要▼
講演者:Newgard Christopher ( Duke University )、堀越 桃子 (理化学研究所)、黒田 真也 (東京大学)、松田 史生 (大阪大学)、平井 優美 (理化学研究所)
概 要:生命は環境変化に応じてダイナミックに代謝を調整することによってホメオスタシスを維持している。糖尿病を含むメタボリックシンドローム・がん・老化・炎症性疾患などの各種病態や薬剤応答などで見られる特有の代謝状態は、まさに生体による代謝アダプテーションの結果である。代謝アダプテーションは、代謝物のみならずDNA・RNA・タンパク質の階層もまたいで密接に連動するトランスオミックなネットワークの動的リモデリングによって達成されるものである。本シンポジウムでは、代謝ホメオスタシスのトランスオミクス解析に向けたさまざまなアプローチや研究を紹介したい。
3S14m
日 時:9月20日(金)9:00-11:00 会 場:第14会場(414+415)
神経変性疾患発症機構におけるミトコンドリアの役割と、治療に向けた新展開
オーガナイザー:安藤 香奈絵(首都大学東京)、中島 元夫(SBIファーマ㈱)
講演者・概要▼
講演者:安藤 香奈絵 (首都大学東京)、 Lee Kyu-Sun (Metabolism & Neurophysiology Research Group, Korea Research Institute of Bioscience & Biotechnology (KRIBB))、杉江 淳 (新潟大学)、大竹 明 (埼玉医科大学)、尾内 康臣 (浜松医科大学)
概 要:ミトコンドリアは神経細胞の機能に重要な役割を担い、その異常は様々な神経変性疾患の発症機構に関与する。神経細胞では、ミトコンドリアはATP供給を担うだけでなく、シナプスなどサブコンパートメントへの輸送により局所的なシグナリングや神経機能制御に関わる。このシンポジウムでは、分子レベルから臓器レベルまでの様々な角度で、ミトコンドリアと神経変性疾患に関わる最新の知見を紹介する。内容には、シナプスにおけるミトコンドリアの神経伝達やタンパク質恒常性に果たす役割、ミトコンドリアのダイナミクスとカルシウムイオン制御、疾患脳でのミトコンドリア活性と病態のイメージングによる相関解析、ミトコンドリアを標的とした神経変性疾患の新規治療法の検討が含まれる。このシンポジウムを、分野を超えた協働による'bench-to-bedside' 研究のきっかけとしたい。
3S15m
日 時:9月20日(金)9:00-11:00 会 場:第15会場(416+417)
革新的治療法を生み出すセレノプロテイン研究
オーガナイザー:斎藤 芳郎(東北大学)、今井 浩孝(北里大学)
講演者・概要▼
講演者:高山 浩昭 (金沢大学)、佐藤 公雄 (東北大学)、廣澤 瑞子 (東京大学)、皆川 俊介 (東京慈恵会医科大学)、今井 浩孝 (北里大学)
概 要:必須微量元素セレンは、主にセレノシステイン(システインの硫黄がセレンに置き換わったアミノ酸)の形でタンパク質中に取り込まれ、その生理機能を発揮する。これまで、セレンの必須性が分子レベルで明らかにされ、セレノシステインを含むタンパク質(セレノプロテイン)の生理機能における重要性が明らかにされてきた。さらに最近、疾患の分子メカニズム研究の進展により、セレノプロテインが疾患の発症・進展に深く関わっており、重要な治療標的となることも明らかとなってきた。本シンポジウムでは、“セノプロテイン"をキーワードとして、最先端の研究を展開している研究者の方々に講演していただく。本シンポジウムを通じて、セレノプロテインの担う生理機能、ホメオスタシスの維持とその破綻について議論する。特に、レドックス制御と各疾患メカニズムについて考察し、その理解を深化・進展する。
3S16m
日 時:9月20日(金)9:00-11:00 会 場:第16会場(418)
体液酸化傷害DNA断片の配列予測のための戦略
オーガナイザー:丸山 悦子((主)脳と健康の研究所(副)東京工科大学)、鶴岡 誠(東京工科大学)
講演者・概要▼
講演者:鶴岡 誠 (東京工科大学)、谷口 陽祐 (九州大学)、日高 真純 (福岡歯科大学)、田中 雅嗣 (医薬基盤・健康・栄養研究所 )、加藤 大 (産業技術総合研究所)
概 要:認知症を予防するためには、個人レベルで早期に判断できるマーカーの探索および検出法の開発が必須である。神経シナプスに存在するミトコンドリアDNA(mtDNA)は脆弱のため、脳内ストレスで発生する活性酸素によって傷害されやすく、体液に放出される。その配列が分かるとマーカー解析および疾患の機構が解明されるが酸化(8-oxoG)DNAの配列決定法はない。本シンポジウムでは、候補配列の探索法として、8-oxoGを含む塩基配列依存的に相補鎖を形成する人工核酸(Adap)-DNAを蛍光標識してプローブとした、蛍光偏光度測定による配列解析のアイデアを提案する。さらに傷害DNAによる細胞死の機構やヒトmtDNA配列構造の観点から、体液中のmtDNAについて考察する。体液の候補8-oxoG-DNAの微量測定では、最新の半導体ナノテクノロジーであるナノカーボンを用いた電気化学的測定法の適用についても討議し展望を得る。
3S17m
日 時:9月20日(金)9:00-11:00 会 場:第17会場(419)
リバースケミカルジェネティクスによる生命現象の探究と創薬
オーガナイザー:伊藤 昭博(東京薬科大学)、上原 孝(岡山大学)
講演者・概要▼
講演者:伊藤 昭博 (東京薬科大学)、上原 孝 (岡山大学)、田代 悦 (慶應義塾大学)、清宮 啓之 ((公財)がん研究会 )、小松 徹 (東京大学)
概 要:リバースケミカルジェネティクス(逆化学遺伝学)とは、タンパク質などの標的分子と特異的に相互作用する化合物を用いて、標的分子の機能や、標的分子が司る生命現象を研究する学問領域である。遺伝子の点変異を用いて解析するリバースジェネティクスと異なり、リバースケミカルジェネティクスでは化合物を用いることから、標的分子が疾患と関わる場合、用いた化合物を基に創薬研究に発展する可能性がある。本シンポジウムでは、エピジェネティクス、小胞体ストレスに関わる因子や核酸を標的としたリバースケミカルジェネティクス研究について紹介するとともに、使用した化合物を基にした創薬研究への展開について紹介する。さらに、新しいリバースケミカルジェネティクス研究を生み出す可能性を秘める疾患標的分子の網羅的探索法についても紹介し、リバースケミカルジェネティクス研究の有用性と今後の展開について議論したい。
3S18m
日 時:9月20日(金)9:00-11:00 会 場:第18会場(511+512)
ミトコンドリアによる高次生命機能の制御
オーガナイザー:石原 直忠(大阪大学)、柳 茂 (東京薬科大学)
講演者・概要▼
講演者:柳 茂 (東京薬科大学)、有村 慎一 (東京大学)、瀬崎 博美 (Johns Hopkins University)、Howard Jacobs (タンペレ大学)、石原 直忠(大阪大学)
概 要:ミトコンドリアは酸素呼吸によるエネルギー生産のみならず、物質代謝、酸化ストレス発生、細胞死等の細胞応答など、多様な機能を持つ細胞小器官である。ミトコンドリアはその機能と形態をダイナミックに変化させ、細胞分化や応答に伴う細胞機能変化を支えている。これらのミトコンドリアの機能破綻が様々な病態発症や老化に関与している。本シンポジウムでは分化した細胞の中でのミトコンドリアの動的な変化に注目した最先端の研究を集め、組織・個体内でのミトコンドリア制御の多様な視点からの研究成果を議論することで、多様な生理・病態におけるミトコンドリアの機能理解を進めることを目指す。