会長挨拶

2023年2月18日(土)〜19日(日)の2日間、第26回日本病院総合診療医学会を開催させていただきます。私ども獨協医科大学総合診療医学講座は2018年に創設されたまだ若い病院総合診療の部門です。研究では診断戦略学、AI・遠隔医療、コンサルテーション医学、疫学研究などを中心に、また臨床では病棟・外来・救急外来をフィールドに、未分化な診断、急性期内科を中心とした診療・教育・研究を行っています。病院総合診療には様々な形がありますが、施設の大小にかかわらず、総合診療の特異性・専門性・強みの一つである「正確かつ迅速な患者中心の診断」は重要であり、そして元来、診断に真摯に向き合うことは、すべての医療者に等しく求められることであり、それゆえ診断は永遠のテーマともいえると思います。

2015年に米国医学アカデミーから発行された“Improving Diagnosis in Healthcare(IDH)"では初めて診断のエラーに特化したイニシアチブが宣言されるなど、医療の質の向上の要所として診断の質は世界的なフォーカスを集めています。では日本における診断への熱はどうでしょうか?少なくとも数十年前より全国各地で、総合診療医たちが自らの日々の診療の質を高めるべく、持ち寄りの症例をベースに臨床思考の議論の場を教育イベントとして地域単位、病院グループ単位、またはオープンな多施設規模で、平日や休日の夜に寸暇を惜しんで開催しているという現状があり、熱い思考のクロストークが日々繰り広げられています。昨今のオンライン化にともない場所の障壁がなくなり、この熱はいよいよフラット化している印象です。これはIDHイニシアチブとはまた別の軸の、臨床医たちが自らの頭の中を個人技として鍛え、患者ケアに還元したいという各々の純粋で強い願い、渇望、熱情の表れと思います。このようなエネルギーの持続的なsurgeは、少なくとも知る限り日本を置いてほかではあまり見られない現象かもしれません。さらに国内においては、いわゆる診断のエラー分析やその改善策を学問として発展させる当学会の良質な診断ワーキンググループの結成や、診断の技術を体系化・理論化して再現可能な技術や学問体系に昇華させて世界に発信する試みなど、本邦における診断学への熱は世界を牽引するポテンシャルが豊かにあるといえる状況です。病院総合診療の専門性の一つは診断ということもあり、これを柱にする大会は、過去に倣い数回に一度は行われても良いのではないかと感じます。

折しも今年度より病院総合診療専門医制度がスタートし、私自身はその委員会の委員長を務めさせていただいています。その習得項目のトップをこの診断学にあてさせていただいたのは、制度作成メンバー一同が病院総合診療における診断の重要性を改めて示したいという意思の表れともいえると思います。
本学会総会のテーマは「Diagnostic Excellence – 総合診療、これからの診断学」と名付けました。この学術総会を起点に、改めて病院総合診療の世界に診断学への明々とした焔が灯る、世界に向けて狼煙を上げる機会となれば嬉しく思います。

本大会は企画の時点で新型コロナウイルスの蔓延を受けつつも、新春の回復を期待しつつ、現地開催・オンラインのハイブリッド開催とさせていただきます。リアル開催での仲間との再会を喜ぶ熱い抱擁、同じ空気のもとでの歓談、夜の肝胆相照らす雷都・宇都宮での宴なども楽しみにしつつ、オンライン開催の利点の側面も十二分に活用し、思い出に残る、若さとパッションとコンパッション溢れる良い会になればと願っています。皆様、ご参加を一同、心よりお待ち申し上げます。

第26回日本病院総合診療医学会学術総会
会長  志水 太郎
(獨協医科大学 総合診療医学 主任教授)
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