プログラム
日本語
J
E
J
E
E
J
演者:宮田 真人(大阪公立大学)、野村 暢彦(筑波大学)、佐藤 慎太郎(和歌山県立医科大学)、松岡 悠美(大阪大学)
概要:
微生物・感染症研究の領域で、最先端の解析方法やアプローチを用いて目覚ましい研究をされている先生方をお招きしご講演いただく。大阪公立大の宮田先生にはスピロプラズマ遊泳能から示唆される細胞運動の進化的起源について合成細菌を用いて行った解析についてお話しいただく。筑波大の野村先生には最新のイメージング解析技術を駆使した細菌の集団性と社会性についての研究を、和歌山県立医大の佐藤先生にはヒトiPS細胞由来腸管上皮細胞の感染モデル系への応用についてご紹介いただく。また、大阪大の松岡先生には全ゲノム解析・全メチル化解析によって病原細菌の環境適応メカニズムを解析した成績をお話しいただく。いずれもエキサイティングな研究であり、参加者にとって大きな刺激になるものと期待される。最先端手法を用いたサイエンスを楽しんでいただければ幸いである。
J
演者:南澤 究(東北大学)、松浦 善治(大阪大学)、高谷 直樹(筑波大学)、赤池 孝章(東北大学)
概要:
近年、細菌学会関係者が中心となった大型のグループグラントはあまり多くない。本シンポジウムでは、微生物学や感染症学の関連領域でムーンショットや学術変革、新学術領域等、大型のグループ研究プロジェクトを推進されている先生方にご登壇いただき、それぞれのプロジェクトの内容や組織構成、これまでの研究成果等についてご紹介いただくとともに、プロジェクトを立ち上げるに至った経緯やそのための準備等についてお話しいただく。本シンポジウムが、細菌学会関係者が今後大型グラントを目指す際の道標となることを期待する。
J
J
E
演者:水谷 雅希(産業技術総合研究所)、Dendi Krisna Nugraha(大阪大学)、川口 智史(自治医科大学)、小高 優人(東京都立大学、国立感染症研究所)、熊倉 大騎(北海道大学)、高橋 一樹(東京工業大学)、星野 美羽(東京大学)
概要:
細菌学若手コロッセウムは,今後の細菌学の礎を築く若手研究者が切磋琢磨する場を提供することを目的とした学術集会です。若手コロッセウムでは,学会の枠をこえて”微生物”をキーワードとして集まった専門分野の異なる若手研究者が,率直な疑問・意見をぶつけあいます。参加者の研究者としての成長だけでなく,新しいネットワークの構築や日本の細菌学の裾野拡大が期待されます。「第16 回細菌学若手コロッセウム 」は日本細菌学会の助成を受け、2022年8月25-27日に札幌医科大学で開催され,感染,生態,ゲノム,一細胞観察などの分野での最先端のトピックスについて熱い議論が交わされました。このワークショップでは,日本細菌学会会員の皆様へのフィードバックとして,始めに第16 回大会の内容を報告させていただき,続いて世話人ならびに第16回大会で特に優れた発表を行った若手研究者にご自身の研究を紹介していただきます。
J
演者:押海 裕之(熊本大学)、松崎 吾郎(琉球大学)、倉田 祥一朗(東北大学)、野澤 孝志(京都大学)、山崎 晶(大阪大学)
概要:
2020年から始まった新型コロナウイルス感染症がパンデミックとなり、生体防御研究の重要性が益々高まっている。予防・診断・治療に関わる研究のみならず、病原体の起源や変異、工学的な手法を用いた創薬など、様々な視点から新たな治療法を模索する必要がある。本シンポジウムでは、外来性の異物や自己成分の一部を処理し、個体の独立性と恒常性を維持する生体防御機構について細菌・真菌だけでなく、ウイルス、寄生虫等各分野で進められている新たな観点から病原体に対する防御機構のメカニズムについて、様々な分野の研究者から最新の知見について紹介する。
J
演者:春日 郁朗(東京大学)、萩原 大祐(筑波大学)、小椋 義俊(久留米大学)、新 竜一郎(宮崎大学)、西園 晃(大分大学)、浅井 鉄夫(岐阜大学)
概要:
ヒトと動物と、それらを取り巻く生態系は相互に連携しており、ヒトの健康を守るためには動物や生態系の健全性を含めた包括的な取り組みが必要であるという「ワンヘルス」の概念は、近年広く浸透してきている。COVID-19、狂犬病や新型インフルエンザなど、動物からヒトに感染する新興・再興人獣共通感染症は、近年急増している。さらには、畜産・医療分野における薬剤耐性菌の蔓延や、野生動物や家畜・家禽を由来とする食中毒原因微生物による事例の頻発も、依然として社会的な問題となっている。本シンポジウムでは、ワンヘルスに関する基礎研究や実践に関わる研究者にご登壇いただき、それぞれのこれまでの研究成果や取り組みについてご講演いただく。微生物研究者がどのような視点からワンヘルスの実現に関わっていくべきかについて、考える場にしたい。
J
E
演者:崔 龍洙(自治医科大学)、満仲 翔一(岐阜大学)、大塚 裕一(埼玉大学)、内山 淳平(岡山大学)、松尾 美樹(広島大学)、アア・ハエルマン・アザム(国立感染症研究所)
概要:
ファージ研究がますます熱気を帯びてきた。次々と報告される新しいディフェンスシステムや時空間マルチオミクス解析によって明らかになるファージ-宿主間相互作用の詳細、合成生物学の発展など、ファージの基礎研究・応用研究が急速に進んでいる。また、ファージの持つ特有な殺菌機構を利用した細菌感染症治療は、薬剤耐性問題に対する「切り札」として期待されている。欧米ではファージセラピーがいよいよ現実のものになりつつある。
本シンポジウムでは、ファージに関連する研究分野で活躍されている研究者にご登壇いただき、ファージと細菌の攻防戦略、進化系統解析、さらにはファージセラピーへの応用についてお話しいただく。ファージと細菌の絶え間ない戦いから、学べることがあるはずだ。
J
演者:平林 亜希(国立感染症研究所)、池田 治生(次世代天然物化学技術研究組合)、深野 華子(国立感染症研究所)、金 倫基(慶應義塾大学)、植松 智(大阪公立大学)
概要:
コロナ禍を契機に感染症創薬に向けた新規モダリティの実用化や既存モダリティの最適化、既存の創薬シーズの利活用の気運が高まっている。細菌感染症に対する創薬は長く停滞しており、新たなストラテジーによる予防薬・治療薬の研究開発が必要となってきている。細菌感染症を制御するためには、菌側の病原因子や薬剤耐性因子、細菌-細菌間および細菌-宿主間の相互作用などの分子メカニズムを理解し、その知見に立脚した創薬標的の設定が重要となる。本シンポジウムでは現在国際的な問題となっている薬剤耐性菌や抗酸菌(結核菌および非結核性抗酸菌)などによる感染症、腸管細菌叢の機能とそのディスバイオーシスに関連した疾患に関して、革新的な技術や最先端の異分野融合によって研究を展開している研究者にご講演いただき、本学会員の多くを占めるアカデミアの研究者でも関わることのできる新たな細菌感染症創薬に向けた取り組みについて議論したい。
J
演者:左近 直美(大阪健康安全基盤研究所)、工藤 由起子(国立医薬品食品衛生研究所)、伊豫田 淳(国立感染症研究所)、若林 友騎(大阪健康安全基盤研究所)、朝倉 宏(国立医薬品食品衛生研究所)
概要:
我が国の食中毒事例はコロナ禍でやや減少したものの、最近再び増加傾向にある。依然として患者数・発生件数が多い病因物質としてノロウイルス、カンピロバクター、腸管出血性大腸菌が挙げられる。一方、新興・人獣共通感染症起因菌であるエッシェリキア・アルバティーによる集団食中毒事例も散見される。本菌は、細菌学的性状や保有病原因子が下痢原性大腸菌、特に腸管病原性大腸菌や腸管出血性大腸菌と酷似しており、誤同定も多く、本菌による食中毒の実態は十分に明らかとなっていない。近年、エッシェリキア・アルバティーの選択増菌培養法が開発され、食品汚染の実態が明らかとなりつつある。また、黄色ブドウ球菌と思われていた一部が新種のStaphylococcus argenteusであることが明らかとなり、新たな食中毒起因菌として注目を集めている。本シンポジウムではこれら食中毒の原因となる細菌やウイルスを最前線で研究している研究者に、最新の研究成果と今後の課題について発表してもらう予定である。本シンポジウムが、普段あまり触れることのないノロウイルスの最先端の情報を含め、日本細菌学会で研究している若手研究者への情報提供となり、日本食品微生物学会と日本細菌学会のコラボレーションの新たな扉が開かれることを期待する。
J
演者:岸野 重信(京都大学)、須田 一徳(株式会社ヤクルト本社)、善藤 威史(九州大学)、細見 晃司(医薬基盤・健康・栄養研究所)、原田 直樹(大阪公立大学)
概要:
「内なる外」と称される口腔から結腸に至るまでの消化管には、無数の細菌が生息しており、普段摂取する食品中の微生物に加えて、これら微生物群集が我々の健康を左右することが知られている。しかしこれらの働きと健康への影響のメカニズムについてはまだ分からないことも多く、現在世界中で盛んに研究が行われている。
そこで本シンポジウムでは、この分野で基礎から応用まで幅広い研究を進めている日本農芸化学会所属の研究者をお呼びし、ストレスと腸内環境ならびに腸内細菌との関係とプロバイオティクスによる改善、腸内細菌と食習慣の関連を中心に健康との関連も含めた研究成果、バクテリオシンの機能とオーラルケアへの応用、腸内細菌叢を介したアンドロゲンのエネルギー代謝調節、腸内細菌による食事脂質代謝物の開発など、基礎研究ならびに応用への展開例をご紹介いただき、消化管内細菌について異なる観点を持つ本学会所属研究者と議論を進めたい。
J
演者:押谷 仁(東北大学)、城戸 康年(大阪公立大学)、齋藤 玲子(新潟大学)、鈴木 敏彦(東京医科歯科大学)、森 康子(神戸大学)
概要:
国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)による新興・再興感染症研究基盤創生事業(海外拠点研究領域)が感染症流行地あるいは流行が想定される海外10拠点で展開されている。地球規模でCOVID-19など様々な新興・再興感染症が脅威となっている現在、海外拠点で行なわれている感染症についての基礎的研究の重要性が益々高まっていると言える。本シンポジウムでは、フィリピン、コンゴ民主共和国、ミャンマー、ガーナ、インドネシア拠点の各研究開発代表者に、現地の細菌、ウイルス、寄生虫感染症についての最新の研究成果を紹介していただき、今後の拠点をベースにした研究の展望について議論する。
J
演者:杉本 真也(東京慈恵会医科大学)、田岡 東(金沢大学)、竹下 典男(筑波大学)、若本 祐一(東京大学)、佐藤 主税(産業技術総合研究所)
概要:
クライオ電顕、大気圧走査電子顕微鏡、高速AFM、超解像顕微鏡、組織透明化技術、顕微ラマンなどの革新的なバイオイメージング技術の開発とそれらの応用により、「視える」生命現象やその領域が拡大することで、生物学全般において眼から鱗の新知見が続々ともたらされている。細菌学においても、これらのバイオイメージング技術と分子生物学的・細菌学的解析の融合により、観察が困難であった結晶化しにくいタンパク質や複合体の構造、そしてその生理的な環境中での構造動態を観察・解析できるようになった。さらに、細菌叢と宿主の相互作用や細菌―真菌間相互作用、バイオフィルムの形成機構と薬剤耐性、パーシスターなどの複雑な生命現象を1細胞・サブ細胞レベルで理解することが可能になりつつある。本シンポジウムでは、これらの最先端のバイオイメージング技術を駆使して生命現象を理解しようとする研究者を一堂に集め、細菌学研究の新しい潮流を生み出す契機としたい。
J
演者:田端 和仁(東京大学)、末次 正幸(立教大学)、柿澤 茂行(産業技術総合研究所)、木賀 大介(早稲田大学)、柳原 格(大阪母子医療センター)、堀口 安彦(大阪大学)
概要:
長鎖DNAの革新的な合成技術は、合成ゲノム細菌を生み出した。米国ベンター研究所からMycoplasma mycoides subsp. capriをベースとし、ゲノムサイズを約半分に削ったミニマルセル(JCVI-syn3.0)が報告された。JCVI-syn3.0は主要な病原因子遺伝子を持たず、ゲノムサイズは親株の半分程531kb(473遺伝子)にまで削られた。この最小モデル細菌は、細菌の分裂、代謝、回転遊泳運動や、病原性の解析に利用され始めている。一方、合成ゲノム生物利用については安全性などの議論は十分に尽くされていない。本シンポでは、合成ゲノム細菌が人類の幸福の為にのみ使われるよう、本分野を牽引されている方々にご登壇いただき、最新の研究、安全性を担保するための工夫、デュアルユースの抑止のために知っておくべき事柄を広くご講演いただく。また、研究者間で自由に議論するための時間も設ける。
J
演者:市川 夏子(製品評価技術基盤機構)、岩崎 渉(東京大学)、川島 秀一(データサイエンス共同利用基盤施設)、森 宙史(国立遺伝学研究所)、山田 拓司(東京工業大学)
概要:
細菌学のみならず生物学において、配列相同性解析やデータベースなどのバイオインフォマティクス技術はなくてはならない存在となっている。例えば、データベースを利用することで、我々は多岐に渡る情報を短時間で収集できるのみならず、データ間の繋がりについて気付きを得ることができる。また、膨大なゲノム情報を活用することで、微生物の群集構造解析や、微生物の進化、さらには代謝経路の全容解明に繋がることが期待されている。本シンポジウムでは、インフォマティクス技術を駆使して解析ツールの開発研究を進めている研究者に、最新の解析ツールの紹介とその応用について紹介していただくとともに、細菌学におけるバイオインフォマティクスの役割やその可能性を紹介いただくことで、これからの細菌学の展開を議論する場としたい。
J
演者:宮腰 昌利(筑波大学)、森田 鉄兵(慶應義塾大学)、高田 啓(京都産業大学)、石井 英治(大阪大学)、千原 康太郎(ヴュルツブルク大学)、平松 征洋(大阪大学)
概要:
細菌は環境の変化に応答して遺伝子発現を制御する巧妙なシステムを有している。これまで遺伝子発現は主に転写開始の段階で制御されていると理解されてきたが、インプット(情報受容)からアウトプット(性状変化)に到るまで、生体分子の間でどのように情報が伝達されていくのか、その全体像を捉えるには至っていない。実際には転写伸長、転写終結の制御や、mRNAの上で起こる転写後制御、翻訳制御が関与しており、新規制御因子が続々と発見されてきている。本シンポジウムでは、国内外で活躍する若手研究者の最近の研究成果を紹介し、細菌の多様な遺伝子発現制御機構に関して理解を深めるとともに、細菌感染の新しい制御法の可能性について議論したい。
J
演者:港 雄介(藤田医科大学)、平川 秀忠(群馬大学)、荒井 雅吉(大阪大学)、竹村 美紀(塩野義製薬株式会社)、鹿角 契(グローバルヘルス技術振興基金)
概要:
薬剤耐性菌の拡大による細菌感染症の難治化が深刻な問題となっており、新規抗菌薬が切望されている。わが国は、世界トップレベルの創薬化学分野のアカデミア研究室と高い創薬力を持つ製薬企業を複数有しているため、世界でも数少ない抗菌薬を開発することができうる国である。しかし、新規抗菌薬の開発は未だに停滞している。本シンポジウムは、これまで世界の最先端をリードしてきた日本の細菌学者が、抗菌薬開発にどのような貢献ができるのかを議論する。シンポジストには細菌学者、創薬科学者、製薬企業研究者、研究資金提供機関の担当者らを迎え、最新の研究知見やこれまでの抗菌薬開発に向けた様々な取り組み、これから細菌学者に期待する研究分野についてお話しいただく。本シンポジウムが、私たち細菌学者がより積極的に抗菌薬開発に参画するきっかけとなることを期待している。
E
演者:中村 修一(東北大学)、尾鶴 亮(福岡大学)、小幡 史子(鳥取大学)、ローレンス・ウィルソン(ヨーク大学)、ショウン・マクグリン(東京工業大学)、アンドリュー・ウタダ(筑波大学)
概要:
「数字」を使うと,異なる時空間スケールで起こる生物や物質の現象を比較することができます.これは,細菌が生きるミクロな世界でも大いに役立ちます.例えば,ナノスケールで動く分子は,細菌の大きさ程度の範囲であれば1秒足らずで拡散しますが,真核細胞を横切るには数時間かかってしまいます.そのため,真核細胞には能動的な輸送システムが備わっています.このような簡単な定量的考察を通して,私たちは複雑な生体システムの可能性や限界,そして意義を知ることができます.このシンポジウムでは,演者がそれぞれの研究を特徴づける「数字」を使い,力学的特性(速度,力,剛性)や界面特性,時間的特性(化学反応,拡散,シグナル伝達)といった観点で様々な細菌学的現象を議論します.このような定量的アプローチは,細菌の生態系における役割や病原性発揮機構について新たな側面を見出します.さらに,感染症診断における恣意性を減らす,従来の経験的手法にとってかわるようなコンピュータビジョン技術の応用についても紹介します.
J
演者:大石 和徳(富山県衛生研究所)、常 彬(国立感染症研究所)、金谷 潤一(富山県衛生研究所)、山口 雅也(大阪大学)、金城 雄樹(東京慈恵会医科大学)
概要:
小児結合型肺炎球菌ワクチン導入後により、世界レベルでの小児侵襲性肺炎球菌感染症(IPD)は全体の60〜80%が減少し(直接効果)、成人IPDは10〜30%が減少した(間接効果)ことが明らかになった(12th ISPPD, June 2022, Toronto)。一方、非ワクチン血清型によるIPDは全年齢を通して2〜3倍増加したとされている。
本ワークショップでは、侵襲性ポテンシャルの概念、国内の成人IPDの血清型による病型の特徴、加齢の致命率への影響を示し(大石)、in vitro細胞培養系での菌の細胞間移動能から血清型による侵襲性ポテンシャルを解析し(金谷)、細菌学的解析から検査診断の課題を提起する(常)。また、非ワクチン血清型の課題を克服するPspAワクチンの有用性を提示する(金城)。さらに、疫学所見で確認されている加齢と重症化の関係についても基礎的研究から検証する(山口)。
J
演者:菊池 義智(産業総合技術研究所)、中根 大介(電気通信大学)、和田 浩史(立命館大学)、菅 哲朗(電気通信大学)、新竹 純(電気通信大学)
概要:
細菌は水中を自由自在に泳ぎまわることができる。べん毛というらせん繊維構造を根元のモーターが回転させることで推進力を発生させている。これまで何十年もの間、細菌はべん毛繊維を水中にたなびかせてスイスイと動くのだと考えられてきた。ところが、本当はちょっと違った遊泳様式をとるものもいる。カンピロバクターやバークホルデリアなどはべん毛繊維を体に巻き付けて、まるでトンネル掘削機のように進むのである。ドリル戦車運動は病原細菌・共生細菌に広く見られることから、新たな治療法や害虫防除法に向けた基盤的知見を提供することができる。本シンポジウムでは、ドリル戦車の「うごき」と「かたち」から見えてきた新しい細菌の世界について議論する。
J
J
コンビーナ:小椋 義俊(久留米大学)、髙井 伸二(北里大学)
J
演者:新井 暢夫(農業・食品産業技術総合研究機構)、岡村 雅史(帯広畜産大学)、羽田 健(北里大学)、中山 ももこ(農業・食品産業技術総合研究機構)
概要:
サルモネラは、菌体表面(O抗原)と1種類または2種類のべん毛タンパク質(H抗原)の組み合わせにより2,600超の血清型に分類される。一部の血清型はヒトにおける食中毒の原因となるほか、家畜や家きんに消化器症状や敗血症などを引き起こし畜産農家に大きな被害をもたらす。本ワークショップでは、主に獣医領域でサルモネラの研究を推進されている先生方に、家畜や家きんにおけるサルモネラ感染症についてゲノム、病原性、生体防御など様々な観点から講演していただく。
J
演者:田中 香お里(岐阜大学)、矢口 貴志(千葉大学)、大熊 盛也(理化学研究所)、仁木 宏典(国立遺伝学研究所)、川本 祥子(国立遺伝学研究所)
概要:
微生物は、病原性・非病原性を問わず研究・開発の資源として大きな可能性を秘めており、新たな研究成果・イノベーションに繋がる資源となるが、必要な微生物株を自ら分離し利用する事は容易ではなく、研究・開発を進める上での大きなハードルとなる。必要な微生物株がカタログを見て選べ、いつでも入手できる、こういったリソースの整備は研究・開発のインフラとして重要である。また、長年の研究成果として論文等に発表されている微生物株を退職研究者から引き継ぎ利用可能な資源として整備する事も大切である。
本WSでは、一般には収集・整備が難しい病原細菌・病原真核微生物、非病原性の幅広いコレクションの一般微生物、研究や産業を支えるツールとして様々利用されている原核生物リソースに加え、利用者がより効率よく欲しいリソースにアクセスするための情報整備について紹介し、有効活用とこれまでの研究成果を未来に繋げるための資源の保全について考える。
J
J
コンビーナ:東 秀明(北海道大学)、藤永 由佳子(金沢大学)
J
E
演者:渡邉 健太(山口大学)、垣内 力(岡山大学)、中台(鹿毛) 枝里子(大阪公立大学)、Paudel Atmika(北海道大学)、塩崎 一弘(鹿児島大学)
概要:
細菌学において細菌の生体内での動態や、病原性の研究には実験動物を用いた研究が不可欠である。これまで感染症のモデル生物といえばマウスやラットが主体であった。しかしながら、こうした動物実験を用いた研究では、動物福祉の観点から、動物の生命の尊重、苦痛の最小化、使用頭数の最小化などが必須であり、多くの実験を試行錯誤することは困難である。近年、このような倫理的問題を低減するために様々な感染モデルが提唱され、実績が蓄積されつつある。また、文部科学省が行っているナショナルバイオリソースプロジェクトはライフサイエンス研究の基盤となる様々な生物の収集をおこなっており,研究者が簡単にそれらの生物を利用できる。
このような背景から本ワークショップではカイコ、メダカ、ゼブラフィッシュ、ゾウリムシ、線虫、シロイヌナズナなど様々な感染モデルを使用し、感染症の研究を最前線で行っている研究者を紹介したい。
J
後援:日本医真菌学会
演者:樋口 裕次郎(九州大学)、深田 史美(岡山大学)、石井 雅樹(武蔵野大学)、佐藤 光(東北大学)
概要:
真菌は、古くからそのバイオマスそのもの (きのこ) が食されており、その代謝を利用した食品 (清酒、醤油、味噌)や有用物質 (医薬品原体、有機酸、酵素)の生産にも利用されている一方で、ヒトや動物、植物に感染する種もあります。そのため真菌は、農芸化学や生物工学、植物病理学、医真菌学等幅広い領域で研究対象とされています。真菌という共通の研究対象があっても、分野横断的に情報交換し、実験技術を習得する機会は限られているのが現状です。本講演では、各分野で活躍されている研究者に、各分野で醸成された独自の技術とその研究成果を紹介していただき、近くて遠かった真菌研究者間の議論を活性化させる企画としたいと思います。また、若手研究者の減少が懸念されている昨今の状況を踏まえ、研究者としてのキャリアパスについても紹介していただき、若手研究者や学生諸賢の呼び込みに結びつけ、我が国の真菌学研究の未来を総合的に考えます。
J
J
演者:古山 若呼(長崎大学)、渡辺 俊平(岡山理科大学)、下島 昌幸(国立感染症研究所)、安田 二朗(長崎大学)
概要:
国立感染症研究所には“感染症の診断・治療薬の選定”を目的としたBSL4施設があり、感染症法に基づき稼働をしている。しかし、制限された稼働であり、他の主要先進国でのBSL4施設の稼働状況とは異なっている。近年、交通網の発達から、人や物の行き交う速度・地域が飛躍的に拡大し、それに伴い感染症が急速に拡大する事例が見られるようになった。こうした背景から高病原性微生物が原因となる疾患の診断・治療・予防法の開発の必要性は日々高まっている。また、限定的な稼働体制の日本では高病原性微生物の感染症研究に遅れをとることも危惧されている。そこで本シンポジウムでは、国内外の高度封じ込め施設における業務や研究について、実際に従事している、もしくは過去に従事していた研究者に講演して頂き、BSL4施設の経験を細菌学会員に提供を頂き、学会員のBSL4施設での研究について理解を深めたい。
J
演者:安部 公博(国立感染症研究所)、小倉 康平(金沢大学)、鴨志田 剛(京都薬科大学)、竹本 訓彦(国立国際医療研究センター)、三室 仁美(大分大学)、山崎 聖司(大阪大学)
概要:
近年のシーケンス技術の発展は腸内・口腔・皮膚に常在する細菌の構成 (細菌叢)についての研究を加速させ、細菌叢と疾患との関連等について、本学会のワークショップ・シンポジウムでも新たな知見が報告されてきている。それと同時に、平時では感染症に至らない、すなわち非病原性や病原性の低い状態である細菌が、どのようなメカニズムで病原性を現し、感染症を引き起こすのかについても、本技術発展により革新的な知見が近年生み出されている。そこで我々(竹本・小倉)は、細菌のゲノム変化とそれに伴う病原性獲得に焦点を当てたワークショップを開催し、次世代シーケンス技術・オミクス解析等、近年の技術を利用して遂行された基礎的研究についての発表の場を設けることを企画した。本ワークショップにより、高病原化に至るゲノム変化メカニズムに関する研究の重要性の認識が高まり、このような分野の研究がより活発になることを期待する。