会長挨拶

第52回日本免疫学会学術集会会長を務めさせていただきます、千葉大学の中山 俊憲でございます。2024年1月17(水)-19日(金)の3日間にわたり、千葉幕張メッセにて、第52回学術集会を開催させて頂くこととなりました。免疫学ならびに免疫学会の更なる発展に貢献できる機会を与えて頂いた会員の皆様に、厚く御礼申し上げます。

2019年から3年以上続いた重症急性呼吸器症候群コロナウイルス-2(SARS-CoV-2)の世界的な大流行では、感染拡大抑制のために行われた “Social distance”、“Stay home”といった呼びかけのもと行われた“ロックダウン”などの施策により、サイエンス・コミュニティーを含めた世界中の様々な組織でヒトとヒトのつながりが急激に疎になってしまいました。特に日本にその影響は大きく出ているように感じています。一方、mRNAワクチンをはじめとする各種ワクチンの世界的な普及および新規治療薬の開発により、欧米社会はポストコロナへ向けて大きく舵を切り、失われたヒトとヒトのつながりが急速に戻っているように思います。このような状況をふまえ、本学術集会では、“―国際舞台への発信最前線―”というスローガンのもと、コロナ禍で途切れがちになった国際交流を再度活性化させ、研究者同士が密につながることで、日本の免疫学研究がさらなる発展を遂げる契機となることを目ざしております。何はともあれ、将来の日本の免疫学を担う若手や中堅の研究者は、一流の研究者達が国境を越えて形成するコミュニティーに入ることが重要です。

免疫学の研究は常に違った研究領域や革新的なテクノロジーを取り入れることで進化してきました。最近では、メカノセンシング、神経免疫連関、代謝による免疫機能調節、慢性炎症制御などのテーマが話題を集めていますが、シングルセルの解析やAIなどの手法を積極的にとりいれた研究から新たな発見が生まれています。臨床研究では、がん免疫療法に続き、難治性喘息やアトピー性皮膚炎などに対する抗体治療や、アルツハイマー病などの難病への新しい免疫療法の期待も高まっています。こうしためまぐるしい変化の中での次世代治療法の研究開発においては、基礎と臨床、産業界とアカデミア、理学や工学など様々な局面での連携、その全てに於いて国際共同研究が不可欠であり、その一翼を担うことも本学術集会の役割と認識しております。

本学術大会では、国際社会におけるJSIのプレゼンス向上や新たな国際共同研究交流の活性化を目指し、ジェンダーバランス・ダイバーシティー促進を意識し、また学会としてのグローバル戦略の方向性を模索します。

その一環として、免疫学の将来を担う近隣諸国の若手研究者の育成と彼らの将来的な共同研究の環境促進を目的に、竹田 潔教授のご尽力の下、免疫学会開催の直前に、同会場にて、The Federation of Immunological Societies of Asia-Oceania (FIMSA) Advanced Training Courseが開催されます (1月15-16日)。Travel Awardの枠も例年より大幅に拡大する予定で、海外からの若手研究者がより参加しやすい環境を準備しております。

シンポジウムは最近特に注目されている分野や今後の発展を期待されている分野をカバーできるよう準備致しました。魅力的な海外招聘者と、ハイレベルなサイエンスを満喫していただけるよう、プログラム委員会の先生方にご尽力いただきました。また、初めての試みとしては、International Scientific AdvisorをDr. Hiroshi Kiyono (UC San Diego, USA)、Dr. Mitch Kronenberg (LJI, USA)、Dr. Andreas Radbruch(DRFZ, Germany)、 Dr. Alfred Singer (NIH, USA)にお願いし、シンポジウム等にアドバイスを受けることにしました。

成田空港・羽田空港からのアクセスも良好な日本の玄関口である千葉幕張メッセの会場で、大いにサイエンスをエンジョイできる学会を計画しておりますので、多数の演題のご応募と、皆様のご参加を心よりお待ち申し上げます。

第52回日本免疫学会学術集会会長
会長 中山 俊憲
(千葉大学 学長)